5.国王とのワンナイト、贅沢子育てと趣味の時間
通販サイト『ママゾーン』が下界の経済を完全に支配した頃、私の元に金縁の豪華な招待状が届いた。
差出人は、この国の最高権力者である国王陛下。
王宮の最上階、夜景が一望できる謁見の間で待っていたのは、白髪混じりのロマンスグレーの髪に、大人の色気をこれでもかと纏った覇気のある美男子——国王アウグスト(50歳)だった。
「君が噂のアンナか。我が国を裏から大改革した救世主が、これほど美しく聡明な女性だったとはな」
彼は贅沢なワインを注ぎながら、私を極上のレディとして扱った。若者にはない、包容力と圧倒的な経済力、そして心の余裕。
「陛下、私は縛られるのが大嫌いなのです。ただ、面白いことが好きなだけで」
「ははは! 気に入った。私を恐れない女は久しぶりだ。どうだ、今夜は国の政を忘れ、私と『大人の取引』をしないか?」
その夜は、王宮の最高級ベッドで、王としてのプライドを脱ぎ捨てた彼と、とろけるような甘く贅沢な夜を過ごした。翌朝、私は彼の愛剣に勝手に「攻撃力10倍」の魔力をチート付与し、「これ、昨夜のお礼ね」と書き置きを残して、夜明け前に王宮を後にした。国王すらも、私の気まぐれなワンナイトのコレクションの一人に過ぎない。
ちなみに、天才魔導士レオンとは「ワンナイトの手前」で綺麗に線を引いた。彼は相変わらず顔を真っ赤にして私の知識を求めてくるが、私にとっては「たまに生意気な口を叩くのを愛でる、可愛い観賞用のペット」のような存在。
「アンナ! この前のシステム、僕なりに改良したんだ。……ほら、褒めてくれよ」
頭を撫でてやると、嬉しそうに、でもツンとした態度を取るレオン。手を出さないからこそ、この絶妙に美味しい距離感をずっと楽しんでいる。
そんな中、大型犬のように健気に私を待ち続けていた騎士団長エドワードの情熱に、少しだけ応えてあげることにした。
彼との間に新しい命を授かったのだ。
今回は、現世の時のような「孤独なワンオペ」の地獄とは180度違う。
エドワードの広大な公爵邸には、国中から集められた一流の使用人、乳母、そして最高峰の家庭教師がズラリと控えている。
「アンナ、君はただ横になって、笑っていてくれればいい。育児の泥臭い仕事はすべて私と使用人たちがやる」
エドワードは私の足を洗わんばかりに尽くし、夜泣きの対応もすべて彼が買って出た。おかげで私は、赤ちゃんを「ただただ可愛いところだけ愛でる」という、現世では絶対に不可能だった贅沢な子育てを謳歌できた。
そして何より、エドワードは私の「自由」を完璧に尊重してくれた。私は週の半分、公爵邸を離れて、あの無敵の「引きこもりハウス」に帰る生活(ハイブリッド婚)を続けている。
結界の我が家には、今やチート能力で創造した最高級のアトリエが完成していた。
誰にも邪魔されない静寂の中、私は趣味の油絵の筆を走らせ、彫刻刀で大理石を削り、版画のインクの匂いに浸る。
さらに、魔力を込めたオリジナルのアクセサリー作りにも没頭した。
私が作る「身につけるだけで絶対防御が発動するダイヤの指輪」や「魅力を高めるパールのネックレス」は、下界の貴族たちが家を売ってでも欲しがる伝説の国宝級アイテムになっていた。
夕方、ひとしきり創作活動を楽しんだ私は、スウェットに着替えてオンラインゲームを開く。
「あ、ネトゲの皆さんお疲れ様ですー! 今日も朝までダンジョン行きましょう!」
『おかえりアンナさん! 待ってたよ!』
夜、通話石(魔力スマホ)を見ると、
『アンナ、君がいないベッドは広すぎる。寂しいけれど、君の創作活動を応援しているよ。愛している(エドワード)』
『君にまた会いたくて新しいワインを仕込んだ。(アウグスト)』
『……次いつアトリエに行っていい?(レオン)』
と、通知が鳴り止まない。私はそれをフッと笑ってスルーし、ゲームのコントローラーを握りしめた。最高の環境での贅沢な子育て。気が向いた時だけ愛してくれる極上の男たち。そして、誰にも邪魔されない、私だけのアートとゲームの時間。45歳、私の第二の人生は、あらゆる「美味しいところ」だけを凝縮した、無敵のパラダイスとして完成したのだった。




