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4.下界大改革とイケメン2人を手玉に取る

あのワンナイトから数週間。

私は再び下界へ降り立っていた。

前回のハッキングで腐敗貴族は失脚したものの、街の流通はストップし、相変わらず経済はボロボロ。現世の「不景気な地方都市」を見ているようでイライラした私は、チート能力『異世界ネットショッピング』の応用を思いつき、街の中央広場に、巨大な魔力スクリーンを設置した。

「これより、超高速魔力通販『ママゾーン』を開設します!」

私のチート能力を中継し、現世の便利グッズや美味しい保存食、安くて頑丈な衣服を、街の住人が魔石(お金)と引き換えにタッチ一つで購入できるシステムだ。

さらに、画面の端には口コミが書ける「掲示板(SNS)」機能も搭載した。

「おい、この『電子レンジ』って魔道具、冷えたパンが一瞬でふかふかになるぞ!」

「この『ヒートテック』って肌着、薄いのに信じられないくらい温かいわ!」

掲示板は爆発的にバズり、口コミを見た人々で街は大大盛況。さらに私は、ブラックな働き方をしていた街の職人たちに「週休2日制」と「定時退社」の概念をSNSで叩き込んだ。「お母さん、これなら毎日定時に帰れるよ!」と涙ぐむ若者を見て、現世の自分を少し思い出し、裏でニヤリと鼻を鳴らした。



街が活気を取り戻した頃、私の通話石(魔力スマホ)が激しく震えた。

画面に表示されたのは、前回の情熱的な夜の相手——若き若爵であり騎士団長のエドワードだ。


「……もしもし?」


『ア、アンナ!? 本当に君なのか! 探した、ずっと探していたんだ!』


いつもは冷徹で、部下からも恐れられる最強の騎士団長が、電話越しに今にも泣きそうな声をあげている。


『あの日、目が覚めたら君がいなくて……私は何か、君に失礼なことをしただろうか? 嫌われたのかと毎日夜も眠れず、仕事も手につかないんだ……!』


現世の男なら「重っ!」と切り捨てるところだが、これほどの美形にここまで必死に乞われるのは、正直に言って気分が良い。


「エドワード、落ち着いて。言ったでしょう? 私が会いたい時に連絡するって。今、中央広場のカフェにいるわよ」


『すぐに行く!! 1分、いや30秒で向かう!』


数分後、息を切らせて現れたエドワードは、周囲の目が集まる広場にもかかわらず、私の前に跪いて手を取った。


「もう二度と、私の前から消えないでくれ……」


潤んだ瞳で見上げてくる姿は、完全に飼い主を見つけた大型犬だ。


「ふふ、いい子ね。じゃあ、今夜はたっぷり甘えさせてあげる」


私の領域(引きこもりハウス)には絶対に入れないけれど、下界の高級ホテルで、彼が健気に尽くしてくる夜を思う存分に楽しんだ。


翌朝、彼が幸せそうに眠っている間に、私はまた「じゃあね」とだけ手紙を残して、さっさとホテルを後にしたけれど。



エドワードとの大人の関係をキープしつつ、通販システムの魔力メンテナンスのために、私は街の魔導図書館を訪れた。そこで出会ったのが、この街の若き天才魔導士、10歳以上年下のレオンだった。彼は、私が持ち込んだ現代のデジタル技術(UIやサーバー構造)が理解できず、悔しそうに眉をひせていた。


「な、何なんだこの数式は……! 悔しいが、僕の魔法理論を遥かに超越している。……おい、あんた何者だ? どうせどこかの高名な学者の受け売りだろう!」


生意気な口を叩く年下のツンデレ。

現世の反抗期の我が子を思い出して一瞬イラッとしたが、決定的な違いがあった。

彼は、顔がめちゃくちゃに可愛い。

そして、私のチート解説を聞くうちに、どんどん顔を真っ赤に染めていくのだ。


「そこは『コピペ』すればいいのよ、レオンちゃん」


「れ、レオンちゃんって呼ぶな! ……でも、なるほど、その術式の組み方は……あんた、本当にただ者じゃないな……」


上から目線だった彼が、私の圧倒的な知識チートの前に、次第に憧れと、それ以上の熱い視線を向けてくるようになる。


「……なぁ。今夜、僕の研究室で、もっと詳しくその……『ネット』について教えてくれないか? 二人きりで」


不器用な誘い文句に、私はクスッと笑った。


「いいわよ。でも、私は教えるのが厳しいわよ?」


その夜は、研究室の奥のプライベートルームで、昼間の生意気さが嘘のように、私の指示に従う初心うぶな彼をたっぷりと可愛がってあげた。


もちろん、彼にも「深追いは禁止」という大人のルールを叩き込んで。


数日後。

我が家の無敵の結界に戻り、私はお気に入りのスウェットに着替えて、念じるだけで出てきた贅沢なカニチャーハンを頬張っていた。


スマホ(通話石)には、

『アンナ、次はいつ会える? 寂しくて死にそうだ(エドワード)』

『この前の術式の続き、早く教えに来い。……待ってるから(レオン)』

というメッセージが並んでいる。


画面を閉じて、私はパソコンを起動し、オンラインゲームのヘッドセットを装着した。


「あ、ネトゲの皆さんお疲れ様ですー! 今日も朝までレイドボス周回行きましょう!」


『おかえりアンナさん! 待ってたよー!』


下界を気まぐれに救い、SNSで社会を変革し、イケメンたちを手のひらで転がして極上の癒やしを得る。そして、飽きたら1人で完璧な引きこもりライフに戻る。


「私の人生、今が一番、青春してるわ」


かつての絶望は、遥か彼方の夢の跡。私は今日も、誰にも邪魔されない無敵の城で、自分のためだけの時間を、これ以上ないほど贅沢に貪り尽くしている。

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