表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/7

2.ネットとゲームと美味しいご飯

異世界での生活が始まって数日。


私の家は、神様の粋な計らい(と私の妄想)によって、とんでもない進化を遂げていた。

まず、食事。

キッチンに向かって「今日は、外側がカリカリで中がジューシーな最高級の唐揚げと、炊きたての白米」と念じる。すると、お気に入りの皿の上に、揚げたて湯気ハツラツの唐揚げが、完璧な盛り付けでポンッと現れた。油の片付けも、生ゴミの処理も一切なし。

現世で毎日「今日の献立どうしよう」「早く片付けなきゃ」と頭を悩ませていたのが嘘のようだ。


「はぁ……ビールに合いすぎる……!」


自分のためだけに用意された、完璧な味。誰の好き嫌いも気にしなくていい食卓が、こんなに美味しいなんて。


お腹が満たされたら、リビングの巨大なソファへ。

壁一面のスクリーンに向かって念じると、現世の映画、アニメ、ドラマ、小説に漫画まで、あらゆるエンタメが無限にスクロールされる。

サブスクの月額料金なんて概念はない。もちろん、お金の心配は一生不要だ。さらに、神様は「元・現代人」の私に最高のチートをくれた。


『異世界ネットショッピング』

画面をタップすれば、現世の高級コスメ、ふわふわのパジャマ、欲しかったマッサージ器が、結界の入り口に一瞬で届く。

「これ、現世だと高くて諦めたやつだ……」

値段を見ずに「カートに入れる」を押す快感。これまでの節約生活のご褒美だと思って、遠慮なく買い漁った。そして何より素晴らしいのが、パソコンとゲーム機だ。ここのネット回線は、異世界魔力駆動の超高速。ラグ(遅延)はゼロ。

たまに、ほんの少しだけ「誰かの声が聞きたいな」と思ったら、オンラインゲームを起動する。ボイスチャットを繋げば、画面の向こうには世界中のプレイヤーがいる。でも、お互いに素性も年齢も知らない。

「あ、そこの敵、私が引きつけますね!」

「助かります! ナイスプレイ!」

ただそれだけの、目的を同じくした、利害関係のないライトな繋がり。


ここでは私は「反抗期の子供の母親」でも「疲れた45歳」でもない。ただの、一人の頼れるゲーマーだ。


「じゃ、私そろそろ落ちますね。お疲れ様でしたー」人恋しさが満たされたら、自分のタイミングでさっとログアウト。引き止める人もいなければ、明日会った時の気まずさもない。パートナーがいなくて寂しいなんて、ゲームのチャット欄が賑やかなお陰で、1ミリも思い出す暇がなかった。


夜。現世から取り寄せたシルクのパジャマを着て、ふかふかのベッドに入る。スマホの画面には、もちろん子供からのキツいLINEも、職場からの緊急連絡も入っていない。「自由って、こういうことかぁ……」誰にも縛られず、お金に困らず、好きな時に美味しいものを食べ、好きなだけゲームをして寝る。かつて絶望だと思っていた私の人生は、この異世界の片隅で、間違いなく「世界一贅沢な大人の夏休み」を迎えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ