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どなたか王様の秘書セバスチャンを知りませんか?  作者: 蜜柑缶


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75 元国境の街 バルク2

 次の朝、宿の一階にある食堂でジルドと朝食を取っていた。宿の中とはいえフードを被り隅の方で静かに食べているとガロがやってきて人が何人か集まったから来てほしいと頼まれた。

 宿の裏にまわると年老いた女性が二人と孤児らしい男の子が三人、女の子が四人集められていた。

 

「どうだい?一応やる気はあると言っていたが……」

 

 二人の女性はミレーヌとナタリーといい、ヘクターに近いくらいの年だがしっかりとしている感じだ。

 

「私はロージーといいます、よろしく。街からしばらく離れると思いますが大丈夫ですか?数日は泊まり込みになります」

 

 ナタリーは大丈夫だといい、ミレーヌは家族の面倒があるから街からは離れられないという。

 孤児達は黙って待っていたが一人の男の子が生意気そうに私を見ていた。

 

「ここを離れるのは良いけど、売り飛ばされるのはゴメンだぜ。ガロさんが大丈夫だからって言ったから来たけど何やればいいんだよ」

 

「あら?話を聞いていなかったの?」

 

 ガロを振り返ると肩をすくめた。

 

 ちゃんと説明してって言ったのに。

 

 その子はマックスといい、十二歳だ。他に男の子はカイル十二歳、ブレア十一歳。

 

「まずは掃除、それから畑仕事よ。掃除だけでもいいわ。畑仕事はずっと遠いところにあるから掃除をしながら行くかどうか考えてくれてもいい。働いている間は三度の食事と寝る場所、働くときの服を支給する。十日に一度、お給料を払うわ」

 

「ご飯食べれる?」

 

「持って帰れる?」

 

 他の孤児から声があがった。

 

「ご飯はお腹いっぱい食べていいけど持って帰るのは駄目。どうして持って帰るの?」

 

 その子はロッティ十歳で弟がいるようだ。女の子は他にキャミー十歳、デラニー八歳、ヘイリー八歳。

 

「弟も連れていらっしゃい。あなたが働きながら面倒を見ればいいわ。出来るでしょ?」

 

「でもレジーはまだ四歳で」

 

「大丈夫よ、皆で交代で見ればいいから。他の子も妹や弟がいるなら連れてきていいわよ」

 

 そう言うともう一人男の子がパッと顔を明るくした。

 

「ミーナも連れてきていいですか?」

 

 するとマックスが口を挟んできた。

 

「カイル、ミーナは駄目だ、病気だから皆にうつる」

 

 そう言われカイルはマックスを睨む。ミーナは八歳らしい。

 

「感染ったりしない、俺はいつも一緒にいるけど感染ってない!」

 

 マックスはそれでも駄目だと繰り返した。

 

「ちょっと待って、ミーナは本当に病気なの?」

 

 カイルは慌てた感じで私を見た。

 

「感染ったりしない。きっと食べ物がないから弱ってるだけだ」

 

 必死に話すカイルを落ち着かそうと向かい合うとしゃがんで目線を合わせた。

 

「大丈夫よ、後で様子を見に行くから先に話を進めましょう。いいわね」

 

 私はひとり一人、名前と年齢を確認し書類に書きとめた。孤児の七人は全員街を離れて良いと言った。ただしカイルはミーナを連れていけるならと付け加えた。

 

 ナタリーとミレーヌにはまず孤児達の世話を頼んだ。宿の裏にある小屋を借りてたらいに湯をはり、男の子と女の子を順番に入れ替え洗って着替えさせた。男の子はズボンにシャツ、女の子はワンピースを揃いで着させ並べた。

 

「あら、髪も切らなきゃね」

 

 今度は髪をキレイにカットし出来上がりだ。

 

 そういえば私もそろそろ切らないとね。

 

 ふと髪が伸びたとタイラーに言われた事を思い出し、ネックレスの石を触っていた。

 

「ポッポ」(タイラーなら昼は会議に明け暮れて夜になったらレーンにロージーの事を追求されているぞ)

 

「え!わ、私は別にタイラーの事なんて……っていうか、私の事ってなに?」

 

「カーリの町の事だ。あの状況じゃどう見ても、魔術師が絡んでいると誰でもわかる。上には誰がやったかわからんと報告したようだがレーンが怪しんでる。町の者が赤毛の魔術師だと証言したからな」

 

 口止めが遅すぎたせいもあるけどどうもシーラスが何か計っていたようだからそのせいかもしれない。しばらくは大人しくしていよう。

 

「ロージーさん、終わりました」

 

 ミレーヌとナタリーには孤児たちに宿の食堂で食事をさせてもらうよう頼み、ガロに屋敷へ行く馬車を用意してもらう間にカイルを連れてミーナの様子を見に行くことにした。

 ジルドは取引所に精算に行っているのでパフと二人でカイルについていった。

 

 私の肩に乗るパフをカイルが不思議そうに見ている。

 

「お友達なの、パフっていうのよ」

 

「ミーナは鳥が好きなんです。だからきっとパフを見たら喜ぶと思います」

 

 カイルとミーナは数ヶ月前に母親を無くしたらしくそれ以来孤児達が集まる所で過ごしているらしい。

 

 ガロの宿から狭い路地を抜け商店の裏通りを進んだ。据えた匂いがするドブが溢れた脇に建つボロボロの小屋の中にカイルが入っていく。

 

「うっ……」

 

 中は更に匂いがキツく暗い部屋に数人の孤児が横たわっていた。

 

 そのうちのひとりにカイルは近寄ると声をかけた。

 

「ミーナ、大丈夫か?」

 

 ミーナは眠っていたのかボンヤリとした目をあけるとカイルを見て微笑んだ。汚れて手足はやせ細り目に生気がない。

 

「お帰り、お仕事出来た?」

 

「あぁ、出来そうだ。ほら、服ももらったんだ」

 

 着替えて清潔な服をミーナに見せた。

 

「ほんとだ、汚さないようにしなきゃね」

 

 カイルは振り返って私を見た。私は首を横にふる。

 

「カイル、ミーナはみんなと一緒には連れて行けないわ」

 

「どうしてですか!オレが面倒を見ますからお願いします」

 

 焦って泣きそうな声を出す。

 

「ミーナは病気よ、お医者様みせなきゃだめよ。そこを退いてちょうだい」

 

 カイルを押し退けてミーナを抱き上げた。八才というが小さく軽いミーナは驚いて私を見た。

 

「ミーナ、私はロージーよ。この子はパフというの。今からお医者様のところに行きましょうね」

 

 ミーナがパフに気を取られている間に外へ出ると急いで来た道を戻った。

 

 ガロの宿の裏へまわりナタリーと一緒にさっきみんなを洗った小屋へ入るとミーナをキレイに洗い着替えさせた。

 そのまま医者へ向かうと診察してもらう。ミーナはやはりただの栄養失調ではなくそれにともなう病気を抱えていた。流石に医者がすぐに来れない屋敷へは連れていけない。

 

 宿へミーナを連れて帰り宿の裏へカイルを呼んだ。他の孤児達も食事を終えて集まってきた。ロッティは弟ハルクを連れてきていた。

 

「カイル、やっぱりミーナは連れていけない」

 

 私がそう言うと、マックスが「ほらな」と言った。

 

「そんな……ミーナはなんの病気なんですか?治らないんですか?」

 

 ポロポロと涙をこぼしカイルはミーナの手を握る。

 

「大丈夫よ、治るわ。でも薬が必要なの。薬を買うにはお金が必要よ。だからあなたは働かなければいけない、わかるわね」

 

「はい……だけどミーナをひとりにして行けない」

 

「ミーナはミレーヌに面倒を見てもらうわ。かまわないかしら?それなら家で仕事が出来るから家族の面倒も見れるでしょう?」

 

 ミレーヌは二つ返事で承知した。家にはミーナより小さい孫がいてその面倒を見なければいけなかったらしい。「孫が増えたようなものです」そう言って引き受けてくれた。

 

 もちろん治療費、生活費は私が立て替える。

 

「カイル、薬代はとても高いわよ。頑張れる?」

 

 カイルはミーナを見て微笑み、私を振り返ると力強く頷いた。

 

「もちろんです。ミーナは大事な妹なんです、一生かかっても払います。ありがとうございます」

 

 そう言って頭を下げた。

 

 マックスがそれを真剣な顔をしてみていた。

 

 

 

 ガロが馬車に荷物を乗せ戻ってきた。そこへ子供達とナタリーを乗せ屋敷へ向かわせた。

 

「はぁ……ルーが目を回しそうね」

 

 まさか子どもがこんなに沢山来るとは思っていないだろう。ガロに事情を話すように言っておいたが大丈夫だろうか。

 

「ポッポ」(私も見張っててやる。屋敷をあらせばヘクターが怒り狂うからな)

 

 躾も厳しそうだ。みんな頑張れ!

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