↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どなたか王様の秘書セバスチャンを知りませんか?  作者: 蜜柑缶


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/136

55 野宿1

「ローズマリー様!!」

 

 フードを被っていても正面から見られては知り合いならバレてしまうのか。気をつけよう。

 

 駆け寄ってきたのはミデガライトの使者レックスとトーマスだった。どおりで聞き覚えがある声だと思った。

 

 あまりの勢いで近づくトーマスにジルドが素早く間に入ってくれた。

 

「ちょっと待て、あんた何者だ?」

 

 腰の剣に手を添えトーマスを睨みつける。

 

「お前こそ何だ!この方を一体どうするつもりだ!」

 

「あんたには関係ないだろ」

 

 何故いきなり喧嘩腰なの?

 

 呆気に取られているとレックスがトーマスの後ろからニッコリと笑って話しかけてきた。

 

「ご無事で何より、どこかへ向かう途中ですか?」

 

「そうなんです。この方はジルドといって一緒に旅をするんです」

 

 話を聞いてトーマスがこちらを向いた。

 

「一緒に旅って……護衛が一人では危険です。我々と共に行きましょう。安全にミデガライトへご案内いたしますよ」

 

「この方は護衛では無くて商人です。取引の為に一緒に旅をするんです。それにミデガライトには参りません」

 

 納得のいかない様子のトーマスを見て私はジルドの袖を引いた。

 

「ありがとう、でも大丈夫だから、少し向こうで話をしてくるわ」

 

 肩に乗ったパフに触れながらそう言うとジルドは渋々承知した。

 

 

 

 パフと一緒にレックスとトーマスの三人で少し離れたリュリュを繋いである所に来た。

 レックスは冷静に私の行動について、心配だが王都を離れた事は良かったのでは無いかと言ってくれた。

 

「あのままではいつまで経っても誰かに利用されるばかりでしたでしょうね」

 

 父の言いなりに生きてタイラー達に利用されかけ、結果、父からもタイラーからも離れた。

 

「あの男から離れたのは正解ですよ」

 

 トーマスはタイラーが私を利用した事が許せないようだが結局それは彼らの思うようにはいかなかった。けどタイラーはまだ私の秘密を守ってくれているようだ。もし彼が私の事を父に話していればとっくに連れ戻されているに違いない。

 

「タイラーはトーマス様が思うほどわたくしにとって悪い人では無かったですよ。父から解放されるキッカケになりましたから。あのままではこの先も流されて言いなりだったでしょう……ずっと、離れなければと思っていたのです」

 

 パフには父から離れて生きろと言われていた。だけど出来なかった。

 ずっと言われた事だけを守って生きてきたのに突然自由になれと言われて戸惑った、怖かったのだ。

 

「攫われて王都から連れ出され町や村をほんの少し見ただけですけど知らない事が多かった。タイラーと婚約して父から離れ少しずつ色々な事を知っていければと思いましたが私が側にいれば彼に迷惑がかかると知り城を出たのです」

 

「では離れたのは奴の為だと言うのですか!?」

 

 トーマスが驚いてガックリと項垂れた。

 

「そういう事になりますね」

 

 レックスが微笑みトーマスの肩をガッシリと掴んだ。

 

「そういう事だそうだ。もう諦めろ。無事が確認できて良かったじゃないか」

 

「うるさい、だがムカつくから奴にこの事は知らせない。精々心配しているがいい」

 

 トーマスが苦々しく言った。

 

「心配……ですか?」

 

 ちょっと意外な感じがして驚いてしまった。

 

「えぇ、勇者タイラーはあなたを心配して毎日イライラしてますよ。思うように探しに行けないのが余計にそうさせるんでしょうね。オスロワスが妙な動きをしていますから、毎日大変そうでした。我々も帰国して対策を建てなければいけません。ですから西には近づかない方がいい」

 

 最後は真剣な顔をしてレックスは助言してくれ、項垂れたままのトーマスを連れ自分達の野営地へ引き上げて行った。

 

 勝手に城を離れた私を怒っているのかと思っていたがタイラーが心配とはね……

 

 ふと何かが頭の中によぎったが、余計な事を考えるのは止めにして側にいたリュリュを少し可愛がると気持ちを落ち着けてジルドの所へ戻った。

 

「何だったんだ?」

 

 まだムッとしながらジルドが肉串に食いついていた。

 

「ちょっとした知り合いよ」

 

「その割に感情的だったな」

 

「とっても優しい方なの。私を心配してくださっていたのよ、黙って出てきちゃったから」

 

 そう言って私もまた肉を食べだした。

 黙々と食べているとジルドが遠慮がちに尋ねてきた。

 

「こ、恋人だったのか?」

 

「ゴホッ……恋人!?違うわよ!仕事上の知り合いよ。恋人なんていないわっ」

 

 変な事を言われて喉をつまらせそうになる。

 

「じゃあ好きだったとか?」

 

 ふとタイラーが浮かんでしまう。

 

「違うって!そんな人……いないって前にも言ったじゃない」

 

 ジルドはちょっと焦る私をじっと見た。

 

「ふ〜ん」

 

 そう言って手にした串を平らげると馬車の荷台へ向かった。

 

「ポッポ」(ミデガライトでも良かったのではないか?)

 

 私の手から肉を突きながらパフが言う。

 

「まだ外国は行きたくないし、この国でやりたい事が見つかりそうだから」

 

「ポッポ」(孤児の事か?)

 

「それも含めて、お父様を……ゾルガーを憎む人が平民や貴族にはけっこう多そうだし。私もゾルガーとしての責任がある気がする」

 

「ポッポ」(もうゾルガーではないぞ)

 

「でもゾルガーの血が流れてる。ゾルガーとして生きてきた過去がある」

 

 こういう気持ちも支配されて生きて来た結果なんだろうか。

 

 

 

 考え込んでいるとジルドが声をかけてきた。

 

「えぇ〜っと、シャワーは無いんだけど……」

 

 彼は天幕で仕切った簡易的な浴場を作ってくれ中にはタライが置いてあった。

 

「これで使える?」

 

 ちょっと照れながらそれを見せてくれた。

 

「十分よ、ありがとう。キレイにしたかったの」

 

 馬車の旅は意外と疲れるしホコリまみれになる。フードを被っているとはいえ髪を洗いたかったのだ。

 

「今、お湯沸かすから」

 

 ジルドが鍋に水を入れようとした。

 

「あ、大丈夫。パフに用意してもらうから」

 

 そう言うと早速パフがタライになみなみと水を張りすぐに湯気が立ちのぼった。

 

「スゲー……後でオレも頼むわ」

 

 簡易的浴場に着替えを持ち込み服を脱ぐとタライに浸かり体を洗った。いい湯かげんだ。パフが私に背を向け囲いの上に止まり外を見張っている。

 

「そんなに見てなくても覗いたりしない」

 

 外からジルドの声が微かに聞こえた。

 

 髪を洗い終わり服を着てタライの湯を捨てた。次はジルドの番だが湯を入れなくてはいけない。

 

「私も出来るようにならなくちゃね」

 

 タライを見つめ少しずつ魔力を注ぐように調節しながら水を張る。けっこう上手くいって、次にそれを湯にする為に火の魔術で温める……が、なかなか調節が難しい。

 水は出すだけだからまだ簡単だが火はあんまり高温だと水が蒸発してしまう。

 

 きゅっと魔力を絞って細く細く……これでいいか。

 

 タライから湯気がのぼるのを確認して髪をタオルで隠し外へ出た。

 

「どうぞ、使って」

 

 ジルドが喜んで中へ入って行った。

 

 さぁ、髪を乾かさなきゃ。

 

 タオルを外そうとした時、叫ぶ声が聞こえた。

 

「アッッチ!パフ!ヤケドさせる気か!熱すぎだ!」

 

 パフが私をひと睨みした後、ゆらっと魔力を使った感じがし、簡易浴場にザバッと水しぶきがあがり更に悲鳴は続いた。

 

「冷てえ!!力加減馬鹿なんじゃないか!」

 

 ジルド、ごめんなさい。

 

「ポッポ」(私が無能のようだ)

 

 パフもごめんなさい。

 

 ジルドがなんとか簡易浴場を使っている間に髪を乾かそうと馬車の陰に隠れ、風と火を駆使して自分のまわりに温風を起こす。緩めでないと髪がゴワゴワになるので慎重に慎重を重ね丁度いい感じに出来た。

 

「ポッポ」(やれば出来るではないか)

 

「今話しかけないで、失敗したら大変な事になるんだから」

 

 私の髪は赤毛で巻毛、丁寧に扱わないとすぐに絡んでしまう。上手く乾いて何とか櫛で梳いてまとめた。軽く一つに結って丸めフードを被った。

 寝る時はおろしたいけど今はまだ駄目だ。ジルドがいる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。