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どなたか王様の秘書セバスチャンを知りませんか?  作者: 蜜柑缶


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28 小都市サジェロネ7

 困っているのは確かだしここでパフに魔術を使わせるより穏便に済む気がする。パフは手加減が苦手で攻撃に関しては極力控えめにと言い聞かせてある、特に人が相手の場合は。

 だけどあの顔がどうにもムカつく。

 

「どうする?助けて欲しければこれからは言う事を聞きますって言えよ」

 

 ニヤニヤとして私が困っているのを楽しんでいるようだ。助けて欲しいがムカつくし負ける気がして嫌で仕方がない。

 

「お前なんだ?向こう行ってろ」

 

 タイラーの側の男が彼を睨みつけた。

 

「あぁ、気にしないで。続けろよ」

 

 彼がおどけて後ろに数歩下がると男は邪魔はしてこないと思ったのかまたこっちへ近寄ってきた。

 

「クークー!」(ロージー早く許可を出せ!)

 

「だけど……」

 

 私がまだ躊躇しているとパフが近くの一人の男を突いた。

 

「うわぁ!何だコイツ!クソ!」

 

 そいつがパフを追い払っている間にもう一人が私を壁に押しつけ胸ぐらを掴んだ。

 

「金は?」

 

 グッと首を絞められ持ち上げられる。

 

「無……い……」

 

 嘘をつくなと、体をまさぐられ髪も乱れた。

 

「おい、いい加減助けてって言えよ」

 

 タイラーが焦ったような声を出しているが私にはそんな余裕は無い。足をバタつかせ抵抗するが更に締め上げられ声が出せない。

 その時急に私の中の魔力が勝手に揺らめくと体がカッと熱くなった。

 

「ポッポ」(その手を離せ!愚かな人間!!)

 

 パフからなんとも言えない圧が吹き出し男達がビクリとするとへたり込んだ。私の首を絞めていた男の手も離れ土色の顔をすると自分の胸を掴んで倒れ込んだ。

 

「パフ……駄目……」

 

 私もその場に膝をつき咳き込みながらなんとか息をしてパフを止める。

 

「行くぞ!」

 

 急に抱き上げられその場から急いで離れて行く。

 

「タ、タイ‥ラー……」

 

「話さなくていい。じっとしてろ」

 

 タイラーは辺りを伺いながら足を進め貧困街を抜けた建物の陰に入ると立ち止まり後ろを確認してホッと息を吐いた。

 

 私もやっと息が出来るようになり落ち着いてくると自分がタイラーの胸元にしがみついている事に気がついた。

 

「あ、あの。降ろしてください」

 

 まだふらつくがそんな事言ってられない。壁を背になんとか立つ。

 

「ここまで運んでくれたお礼は言っておきます。ありがとうございました」

 

「そんな事よりアレはなんだ?」

 

 アレか……アレね。

 

「威圧ですわ。パフがキレてしまったのですね」

 

「ですね、じゃないだろ!あの鳩威圧まで使えるのか!信じられん。それに何だかこの魔力……」

 

 するとやっとパフが飛んできて私の肩に止まった。

 

「ポッポ」(大丈夫かロージー)

 

 ふんわり温かい光りに包まれ痛かった首の傷はすっかり治った。

 

「ありがとう。もう大丈夫よ。それよりあの男達どうなったの?」

 

「ポッポ」(知らぬ、だが生きておるだろ)

 

 私がパフと話しているとタイラーがイライラしながら割り込んできた。

 

「何故オレに助けを乞わなかったんだ」

 

「あなたには助けられたく無い」

 

 ムッとして睨みつけた。

 

「死ぬところだったのにか?平民に助けられたくないってことか?」

 

「違う。平民じゃ無くてあなたに助けられたく無いだけ」

 

「つまらんプライドか」

 

 また馬鹿にしたように笑う。

 

「違うわ。あなたは私に対して態度がおかしいからよ」

 

「は?どういう事だ?」

 

「私のこと何も知らないと馬鹿にしておいて、何を言ってもキチンと向き合いすらしないのに言う事を聞けという。これじゃあなたとあなたが嫌う父が入れ替わってるだけだわ」

 

 父から逃れてもまた誰かの言いなりなら今までと同じだ。それなら彼の言う事聞く意味は無い。

 タイラーはポカンとしてたが私はパフを連れてその場から立ち去ろうとした。

 

「あー待て、わかった。オレが悪かったよ。やり方を変えるから戻って来い」

 

 一瞬立ち止まったが振り返らずそのまま歩き続けた。

 

「チッ、戻って来てくれ(・・・・)。対等ならこれでいいだろ」

 

 立ち止まり振り返った。

 

「今回はあなたに非があると思うんだけど」

 

「悪かったよ」

 

 口ではそう言っても顔は不満そうだが今回は仕方ないか。

 

 彼の側に戻った。

 

「それで、どうするの?」

 

「これからは出来るだけわかるように話をする。だが何も知らないお前に、」

 

「ロージーよ、お前って言わないで」

 

「……ロージーに急に言葉だけで言っても分からない事もあるからその時は我慢してくれ。話が進まないと困る」

 

 何も知らないのは確かだからそこは応じた。

 

「それから念の為、あまり多くは話せない。オレがしくじった時に巻き込みたくないから」

 

「私を?」

 

「仲間を。おま……ロージーは貴族だから通常そく切り捨てられる事はないだろう。狂暴な鳩もいるし」

 

「鳩じゃなくてパフね、私に貴族の通常が適応されるか疑問だけどそれでいいわ。じゃあ、街を案内して」

 

「はぁ?」

 

 やっぱり目に見える護衛がいる方が余計な事に巻き込まれにくいだろう。

 身長も私よりずっと高くガッシリした体格で剣を腰に差してる彼がいれば貧困街も回れそうだ。

 タイラーは面倒くさげに顔を歪ませたがすぐに諦めたようだ。

 

「わかった、だが一旦休憩だ。髪もボサボサだし、まだ震えがおさまってないだろ。こっちへ行こう」

 

 髪!忘れてた。

 

 彼が指摘した通りボサボサになった髪を手でなんとか直した。

 タイラーについて行くと貧困街から抜けた所の店先にある簡易的なテーブルで待つように言われて座ると途端に力が抜けた。

 堪えていた震えが止まらず、さっき男に触られた感触が蘇って肌が泡立つ。

 

 気持ち悪い……

 

 俯きながら腕をさすっているとタイラーが温かいカップを持って戻って来た。

 

「ほら飲めよ、落ち着くぞ」

 

 カップからは甘いココアの香りがして、両手でそれを受け取り一口飲むと口の中に広がる甘さと温かさでじんわりと気持ちが緩む気がした。半分位飲んだ頃やっと落ち着いたが今度は泣きたくなってしまい困った。

 鼻をグスッと鳴らすと隣に座るタイラーがコチラを見ずにハンカチを渡してくれた。

 

「……ありがとう」

 

「いや、今回はオレが悪かったよ。……ちょっとムキになってた。貴族のお嬢様なんて話すのは初めてだったし、思い込みがあった」

 

「あなたにも知らない事があるって事なのね」

 

 カップの残りを飲みほすと泣きたい気持ちもおさまり立ち上がって店を後にした。

 

「まだ時間はあるわよね。もう少し見て回りたいんだけど」

 

 タイラーが先に立ち再び貧困街へ向かった。

 さっきとは違う場所に連れて行かれ、そこは数件の商店が並ぶ通りだった。清潔感は無いものの人通りは多く皆忙しそうに行き来している。

 

「ここは活気があるのね」

 

「店があるから人が集まる。だが前に来た時より物は少ないな」

 

 店先にはチラホラ空いた棚が目立っている。ここがいつもなら物が沢山置かれていたという事だろう。

 

「魔王や戦争のせいなんでしょう?」

 

「始まりはそこだが違う理由も加わってる」

 

「王都に物資が集中してるって事?」

 

「知ってたのか」

 

「ミデガライトの使者から聞いたの」

 

 タイラーは一瞬感心しかけたがなるほどと頷いた。

 

「外からの情報って事か。思った通り内側の貴族は酷いな」

 

「だけど国王様はキチンと対処なさってたわ。資料を取り寄せて検討を始めていらしたし」

 

「どこまで本当の実情が上がってるかわからんが期待しよう」

 

 全く期待してる風でもなくタイラーが言った。

 

 

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