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どなたか王様の秘書セバスチャンを知りませんか?  作者: 蜜柑缶


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131/136

131 帰還

ブクマありがとうございます!

 ヤンと二人で戦場になる場所を迂回して王都へ向かった。シーラスもカーリの町が襲われる危険が無くなったと聞き王都へ引き上げていたようだ。

 

 城につくなりルーとエリーに涙ながらに迎え入れられ数日はゆっくりと過ごした。ヤンは私を王都へ送り届けるとそのまま戦場へ向かったらしい。ついて行きたがる私には黙っていった。段々と私の扱いを覚えているみたいで少し腹立たしい。

 

 

 

 ラッテンリット騎士団の作戦通り、オスロワスが攻め込んできたが挟み撃ちに合いすごすごと引き上げ今度こそ停戦協定が結ばれる運びとなりそうだ。

 タイラーは再び素晴らしい功績をあげ西地区の大隊長ダーレン、東地区の大隊長パトリックと共に凱旋した時には王都の人々に盛大に讃えられた。

 特に連戦だったタイラーは特別に王から褒美を受けることとなり成果をあげた隊長クラスが集められて授与式が行われる事となった。タイラーとは帰還後事後処理に終われまだ一度も面会していない。ルーが何度かタイラーを呼び出そうとしたが忙しい彼に迷惑はかけられないと止めるように言いつけた。

 

 

 

「ローズマリー様、ご報告がございます」

 

 授与式の前夜、イングバルとシーラスが私の部屋に来ると人払いをされ三人だけとなった。

 

「エドワードのことです」

 

 イングバルは密かに父を調べ上げシーラスは部下に命じ父の行動を逐一報告させていた。派閥の長に私が収まった頃から父の姿を見ることがなかったがそれは過去に自分が行ってきた事の後始末に奔走していたからのようだ。

 

 私が帰ってきたことにより一族が繁栄するであろうと思われたがこれまでのことを私に知られるわけにはいかないと思ったのだろう。新しいやり方で派閥を動かしていく上で過去の汚点を暴露されては一族はおしまいだ。

 

「決定的な証拠があがりました。これでエドワードも終わりとなりましょう。ですからゾルガーを名乗るのはこれからの派閥に悪影響があります」

 

 シーラスが複雑そうな顔をして話を聞いている。彼にとってはゾルガーが没落することが望んだ結果だ。感慨にでもふけっているのだろう。

 

「ですけど派閥の長となる限りわたくしはゾルガーを名乗ると契約しました。これを破ることは出来ません。ゾルガーの名を捨てるなら派閥の長の地位も辞退しなければ」

 

 もし私がゾルガーを名乗らなくなれば父が排除された後好奇の目はフェルナンドやアイダに向かうだろう。派閥の長の地位にはなんの未練も無いけれど弟妹たちが気がかりだ。

 それに、ゾルガーなき後も王家へ忠誠を尽くすよう約束させられている。だからこそイングバルが父を調べて追い詰めていることも王は咎めないのだ。

 今まで黙って話を聞いていたシーラスがおもむろに口を開いた。

 

「ローズマリー様をおいて他に我々の上に立つ者は考えられません。ですからこの際タイラー殿との婚姻を進めるべきです」

 

「何を急に言っているの!」

 

 シーラスの提案にイングバルが頷く。シーラスはゾルガーそのものを憎み私も共に排除しようとしていたのでは無かったのか?

 

「今やタイラーは貴族からも平民からも絶大な支持がある。婚約も皆の知るところでもありますから最善の策でしょう」

 

「だけどわたくしが派閥の長に留まるためにはゾルガーを名乗らなくてはいけないのよ」

 

「ですからタイラーなのですよ。彼を長とし、実権はローズマリー様が握るのです。彼は平民で家名が無い。ローズマリー様が嫁ぐ形で婚姻なさればゾルガーを名乗る必要もなく、勿論彼が長になってもゾルガーを名乗る必要もない。これで長い歴史の中のゾルガーは消えていくでしょうな」

 

 ゾルガーが消える……それは構わない。だけどこのままじゃタイラーに迷惑をかけてしまう。

 

「その案には反対です。タイラーとは必要にかられて婚約したのです。時が来れば解消すると約束しております」

 

 シーラスが鼻で笑い例の微笑みを浮かべた。

 

「貴方が望みさえすればタイラーは応じますよ。あれほどに貴方に近寄る輩を排除しているのですから」

 

 イングバルも頷き話を終わらせる。

 

「では明日の授与式の後、エドワードの断罪が行われますのでそのおつもりで」

 

 父はすでに連行されていて、明日、王の御前で裁かれるらしい。

 

 二人が帰ったあと混乱した頭を何とか整理しようと寝室へ向かいベッドの上で考える。

 

 長の地位は別に必要無いがシーラスとイングバルがそれを許さない。王からも忠誠を尽くすよう要求されているから城から離れるわけにもいかない。タイラーを巻き込まずに長を続ける方法が無いか何度も考えたが思いつかない。どうすればいいんだろう。

 

 タイラーと結婚……だ、駄目駄目そんなの無理だ。

 だけど、だけど、本当にそうなれば……

 

「ポッポ」(何をひとりで暴れておる)

 

「わぁーー!……パフ、いたの」

 

「ポッポ」(ずっとおるに決まっておる。タイラーと結婚するのか)

 

「いやいやいやいや違うわよ、あれはイングバル様が勝手に」

 

「ポッポ」(別に良いではないか、ロージーはずっとタイラーのことを想っておったのだし)

 

 ギュンと顔が熱くなる。

 

「そ、そんなこと……」

 

 ある、けど。

 

 バッタリとベッドに倒れるとため息をついた。

 

 そんな事を言ってる場合じゃない。明日は父が裁かれゾルガーが終わる日だ。

 

 ネックレスについている石に触れると目を閉じた。

 

 婚約を解消する日だ。

 

 

 

 

 

 

「ほらほらお嬢様、早く起きて下さいな」

 

 浅い眠りしかできず最悪の気分で起き上がった。ルーとエリーがなんだか張り切って仕度を進める。特にルーはいつもより丁寧に私の扱いにくい赤毛の巻げを美しく結い上げた。

 

「本当にお綺麗ですわ」

 

 エリーがため息をもらしながら褒めてくれる。今日のドレスはふんわりお嬢様ドレスで可愛らしく仕上げられ最後にタイラーが借りてくれているレッドダイアモンドのネックレスとイヤリングをつけた。これも今日で最後だ。

 

「緊張なさっているのですか?顔色が優れませんね」

 

 胃の辺りを押さえているとエリーがホットミルクを用意してくれた。

 

「お話は少しうかがっております。エドワード様の事はあまり思い詰めないようになさって下さい。ローズマリー様のせいではありませんわ」

 

 これまで私がどのように扱われてきたかよく知っているルーとエリーにすればやっと私が解放される良いことだと受け止めているようだが実の父が断罪されるのはやはり気が重い。

 

「それに、その後は勝負のときが待っているのですから気合を入れて下さいね」

 

 どうやらシーラスから何やら吹き込まれているらしい。嬉しそうに頷きあう二人には悪いが婚約は解消するつもりだ。派閥のことは後で考えればいい。

 また胃が痛み入れてくれたホットミルクを少しずつ飲んだ。

 

 今日で終わらせるんだ。

 

 

 イングバルが迎えに来るとエスコートされ謁見の間に向かった。

 中へ通されると厳かな雰囲気の中それぞれの位置へ各部所の長が収まっており私も連れられるままに位置についた。イングバルが私の横へつき、シーラスが後ろで控えている。

 

 部屋の中央に敷かれた赤い絨毯を挟んで向かい側にタイラーがいた。

 久しぶりに見た彼はいつもと違い正式な騎士団の礼服を身に着け髪も後ろへ撫で付けられ別人のようだ。

 

 カッコいいなぁ……

 

 思わずじっと見つめていると目があってしまい驚いてそらした。胸がドキドキとし落ち着かない。

 

「静粛に、王のお出ましです」

 

 合図とともにその場の皆が礼を取ると王がゆっくりとした歩みで玉座へ座った。その背後に騎士団長ギデオンと副長ラウリスが静かに立っている。

 

「皆の者、今回のオスロワスとの戦い大儀であった」

 

 王のお言葉を皮切りに今回の戦いでの活躍を讃えられた騎士達が揃い褒美が渡される。それぞれ武勲の応じた褒美を階級の下から順に授けられ、そしていよいよ大隊長の順番がやってきた。

 

「大隊長のパトリック・マッケンジー、ダーレン・ウォーカー、そしてタイラー、前へ」

 

 三人が呼ばれそれぞれに勲章が授与される。

 

「此度の活躍見事であった。ことにタイラーよ、勇者の名に恥じぬ活躍であったと聞いておる」

 

 王の言葉にタイラーが恭しく頭を下げると答えた。

 

「これも全ては陛下が私を導いてくださったおかげです。平民の身ではありますがこれからも国の為、王の為に尽くしたいと思います」

 

「ふむ、其方には昇進の他に特別に望みを叶えると決めておる。後で申すが良い。今からこの場を持って平民であろうと身分に関係なく優秀なものを国の中枢へも取りこむことを宣言しよう、これはタイラーが身を持って証明したことだ、皆に異論はないな?」

 

 王の言葉にすべての者が跪き従うことを表明した。

 

 タイラー達の望みが叶ったのだ。

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