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どなたか王様の秘書セバスチャンを知りませんか?  作者: 蜜柑缶


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128/136

128 逆襲1

 頭の上からはぁとため息が聞こえ手を掴まれると皆から少しはなれたところへ連れて行かれた。タイラーはまだ機嫌が悪い顔をしている。

 

「何故言うことを聞かないんだ。魔術も使い過ぎだし、危険だから下がってろって言ったのがわからないのか?」

 

「ごめん、なさい。一旦は下がったの、だけど凄い音がして」

 

 地響きがし、パフが消え、タイラーが巻き込まれたかも知れないと思った時の怖かった気持ちを思い出し泣きそうになった。

 

「だからってロージーまで危険な目にあったらどうする気だったんだ。戦場では何が起こるか分からない、だから言うことを聞けないやつは邪魔でしかない」

 

 キツく咎められ俯き何も言えなくなってしまった。タイラーが言っていることが正しいのは分かるけど彼が心配でじっとしていられなかった。

 

「あの、大隊長」

 

 涙を堪えているとザッカリーが声をかけてきた。

 

「せっかくですからローズマリー様に作戦にご協力願うのは駄目でしょうか?」

 

 タイラー達はがけ崩れに飲み込まれる寸前にこちら側へ入り込んだ。敵はラッテンリット騎士団が巻き込まれた者達を救助して身動き取れない間に別の作戦を実行するだろうと踏んでそれを探ろうとしているらしい。

 

「駄目だ、ロージーは疲れてる。休ませないと魔術も無くなるし倒れかねん」

 

「ですがローズマリー様のお力を借りれば騎士達を危険な目にあわさなくて済みます」

 

 タイラーがムッとしてザッカリーを睨む。

 

「騎士の代わりをロージーにさせるつもりか!」

 

 ザッカリーはそれを冷静に受け止め首を横に振る。

 

「違いますよ、ローズマリー様は鳩を使って情報を探ることが出来るとお聞きしています。半身半疑でしたが大隊長についていた鳩を見て確信を得ました。その鳩であれば敵に近づくのが容易いでしょう」

 

 さっきタイラーとずっと一緒にいたパフがひとり消えてしまった事を思い出し辛くなって胸を押えた。

 

「ポッポ」(ロージー、私はここにいる)

 

 肩に止まっていたパフが私を慰めようとふわりと手元に来てくれた。ぎゅっと抱きしめて喪失感を埋めた。それを見たザッカリーがふむと頷く。

 

「あぁ、やはりまだいるのですね。先程がけ崩れに巻き込まれそうな騎士を庇って消えてしまって心配していたのですがいくらでも出せるのですね。でしたらソレに敵陣へ向かわせて頂いて」

 

「違います」

 

 あまりにパフのことを雑に扱われ悲しくなってしまう。簡単にいくらでも出しているわけじゃない。パフは私の大切な……

 

「そんな言い方はよせ。パフはロージーの大切な、と、友達なんだ」

 

 タイラーがなんだか恥ずかしそうにちょっと頬を染めて言った。

 

「は?友達、ですか」

 

 ザッカリーが驚いた顔で私とタイラーを見ている。

 

「そうだ、それにあんまりロージーを悲しませると痛い目に合うぞ」

 

 タイラーの声に合わせたようにザッカリーの頭に小石がビシッと当たった。

 

「イテッ!!えぇ!?」

 

 ザッカリーは驚いて私を見る。でも私じゃないよ、パフがやったんだもん。

 

「ほらな、こいつはロージーと同等の魔術が使える。なめると殺られるぞ」

 

 慌ててザッカリーが私とパフに頭を下げた。パフを使いっ走りにしようとしたことを詫たあと鳩ならば敵も油断して警戒することなく何をするのか探れるだろうから協力願えないかと申し入れられた。

 

「ポッポ」(ロージーがよいなら私はかまわん。どうせもう探っておるしな)

 

 心の広いパフが既に自分が勝手にやっていることを、もったいぶった態度で集めた情報をタイラーに知らせるように言ってきた。

 

 敵はここで騎士達を足止めし、王都近くへ一気に攻め込む気でいるようだ。いくらかは囮(おとり)でここにも騎士を配備しているが本体はもっと南から侵入しているようだ。

 

「だったら我々も直にでも王都へ戻るべきです」

 

 ザッカリーが勢い込んでそう言ったがタイラーはそれを制した。

 

「こっちにも少しは隊を残して奴らが侵入していた道を断っておきたい。でなきゃまた使われると大変だからな」

 

 タイラーはパフに頼んで後方のダーレンに作戦を知らせ王都へ警戒するように連絡してもらった。

 パフの調べによればここにいる敵はダーレン達を含めればこちらが数で上回っているがあちらにはまだ魔物が大量にいるという。

 

 ひとまずこの洞窟で休息を取り次の攻撃に備える事になった。

 

「ロージーは少し寝てろ」

 

 タイラーが自分のマントを私に投げてよこした。

 受け取ったマントを持ち隅の方に行くとパフが洞窟の壁をくり抜き小さい部屋を作ってくれそこに地面より少し高い寝床を作ってくれた。これで外からは見えにくい。マントに頭から包まり体を丸めて目を閉じた。

 

 タイラーはまだ怒ってる。早く眠って魔力を回復して役に立てなきゃこのままじゃ嫌われちゃう。

 

 体は疲れているのだから眠いはずなのに眠ろうとすればするほど眠れない。

 

 だんだんと泣きたくなってきた……

 

 するとこの小さな部屋に誰かが入ってきた気配がしマントから顔を出すとタイラーが私をのぞきこんでいた。驚いて起き上がるとそのまま座る。

 

「なに?」

 

 慌てて涙を拭うと彼はため息をついた。

 

「さっきはキツく言い過ぎた、だけど謝らんぞ。勝手に危険なとこへ来るのは駄目だ」

 

 私の頬にまだ残る涙を指で優しく拭ってくれる。

 

「わかってる、私がいけなかったの」

 

 少し優しくされまた涙がこみあげる。するとタイラーがぎゅっと目を閉じ何秒か思案したのち諦めたようにため息をつくと抱き寄せられた。

 

「タ、タイラー……」

 

 ちょっと驚いたが私も手を彼の背に回すと抱きしめた。何も言わず彼の体温を感じていると気が緩みホッと息を吐く。

 

「すまん」

 

 タイラーが謝った。

 

「何故謝るの?」

 

 さっきは謝らないって言ったのに。

 

「ロージーは……シーラスが好きなんだろ。なのにこんな事、オレがまだ婚約してるってみんなに言ってるから受け入れてくれるんだろ?」

 

 私は慌てて体を離すとタイラーは気まずそうに視線をそらした。

 

「私が好きなのはシーラス様じゃないわ!」

 

 そう言うと今度はタイラーが慌てた。

 

「えぇ?だけど一緒に住んでるってパフが」

 

 パフは一体何を言ったの?

 

「一緒になんか住んでない。屋敷に泊まったこともないのに」

 

 ヘクターも嫌がるし私も嫌だ。

 

「そうなのか!?なんだよ、オレはてっきりロージーにはもう決まった相手がいるのかと」

 

 タイラーがホッとしたように笑顔を見せた。

 

「決まった相手はいない……けど……」

 

 もしかしてこれはタイラーに私の気持ちを伝えるべきなの?これはチャンスなの?二人きりだし、今なら言える気が……

 

「ゴホンッ、大隊長よろしいですか?」

 

 ザッカリーの声にビクリとしタイラーが直ぐに部屋を出ていった。

 途端に力が抜けバタリと横になった。

 

 もう、何なのこれ……でもタイラーが笑ってた。

 

 彼の笑顔に安心するとそのまま落ちるように眠りについた。

 

 

 

 

 

 何時間か眠っただろうか。

 騒ぐ声を聞き目を覚ました。スッキリと起きることができ魔力も満ちていることがわかる。私が目覚めた事をパフが知らせたのかタイラーが顔を出した。

 

「ロージーいけるか?少し手伝ってくれ」

 

 小さな部屋を出るとそこにさっきまでいなかったヤンがいて嫌な顔をされた。

 

「のんびりお昼寝かよ。オレはまたタイラーに殴られそうになってたのに」

 

 すかさず苦情を言われる。

 

「ごめんなさい」

 

「謝ってもまたするからな。ローズマリー様の言うことはきかない」

 

 プイッと顔を背けられ呆気に取られているとヤンを後ろから殴る人がいた。

 

「男のくせにネチネチしないの!ローズマリー様、ご無事で良かったです」

 

 ミランダがヤンを乱暴に脇へ避けると私を抱きしめた。

 

「イテーな!オレだって抱きしめていいなら我儘も許すぞ!」

 

 ヤンの言葉に今度はタイラーが殴っていた。

 

 

 

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