さぁ、来るがよい!この胸に飛び込んで来いがよい!byボス
ボス登場。中ボスでもラスボスでもありません。
おっさん犬にはラスボスかな?
夜が明けてだいぶ明るくなった頃、工藤さんがやってきた。
「グーテン・モルゲン。アイリス!今日もいい日になりそうよ!」
「キャン!」(おはよう!今日がいい1日になるといいな…)
施設内はいつも適温に保たれているため寒さは感じないが、外はやはり霜が降りるくらいに冷えている。
「キャン!」(人間だった頃より寒さに対して強くなったよな!暑さはダメだけど!毛を刈りたくなるんだよな…)
白い息を吐きながらいつもの散歩コースを歩く。
『グーテン・モルゲン、サヤカ、キモッタマガール!』
『グーテン・モルゲン、レオン!朝から元気ね!』
レオンが散歩しているジョンと挨拶をする。
お互いの匂いを嗅ぎ合い、伏せたジョンの頭に両前足で乗っかる。
ジョンが尻尾を振り回し始めるとすかさずジョンから離れる俺。
ジョンか伏せた状態で動き回る、これが結構早い。
(ジョン、黒いからあの動きされるとアレに見えるって言ったら怒るかな?)
「ウォン!ウォン!」(アハハハハー!アイリスー!)
「キャン!」(ジョン、ちょっと落ち着けって!朝から激しいなー!)
『ジョンも会えて嬉しいのかい!良かったね!またな!サヤカ、キモッタマガール!』
『ええ、また!』
レオンとジョンが離れていった。
俺たちもまた歩き始める。
「あの動きってなんかGに見えるのは私だけかな?」
(やっぱり…こう…あの独特の動きに見えるよなー。うんうん!)
遠い目をした工藤さんに、同じ目をして頷いている俺。
爽やかな朝がちょっと微妙な雰囲気になってしまった。
* * *
朝ごはんを食べて、少し休憩していると工藤さんが訓練の準備をしてやってきた。
「アイリス、頑張ろうね!」
「キャン!」(ほどほどでお願いします!)
気合いの入った工藤さんに連れられて、防音がきいた建物へと向かっていった。
建物へ入ると、プロテクターや片袖という腕の防具をつけたヘンリーとボスがいた。
『よろしくお願いします!』
『そこまで気をわなくていいよ!気楽にね!サヤカ!』
『ボスがいるとね…ちょっと無理かも…』
ヘンリーが工藤さんの肩を叩いて苦笑いしている。
ボスはというと俺の脇を掴んで顔の正面に持っていき、微動だにしないでみつめている。
「キュー…」(イケオジなボスに見つめられても嬉しくないんだか…イケオジでもおっさんはおっさんなので…何したいんだこいつは…)
ちょっと尻尾が内股に入っています。
彫りの深い顔をしたボスが眉間にシワを寄せて見ているので、目をそらしたくても負けたようで悔しいのでひたすらににらめっこしている。
しばらくするとボスが満面の笑顔になり思いっきり抱き締められた。
「ギャウッ!」(ちょ!ちょっと待て!やめろ!)
『こいつはすごいな!逃げずに睨み返してきたぞ!』
(男の肉厚な胸と太い腕に挟まれるより女の柔らかい腕と胸に挟まれたいわ!)
『小さいくせにやるな!今までのやつらと違うのか!ハハハハハッ!』
『ボス…アイリスが逃げないからってそこまですると嫌がりますよ!』
『おっと!すまん!すまん!』
「ガフッ!ギャンギャン!」(男の胸で死にたくない!何すんだこいつ!)
「アイリス、大丈夫?」
『ボス、嬉しいのはわかりましたから。ちょっと抑えてくれますか?』
『サヤカ、すまん!』
よくよく話を聞くとこの厳ついボスは犬が大好きすぎて訓練士になり、このフンデシューレ・シュルツを作ったのはいいが大抵の犬には嫌われているようだった。
厳つい顔にゴツい体、威圧感ありまくりだから、まずもって小型犬には逃げられるらしい。
(わかるわー!それ!下を見下げりる圧迫感もあって尻尾巻いて逃げたくなるわなー!うんうん!)
いつもは即効で逃げられる小型犬に見つめられて、すごく嬉しかったらしい。
で、抱き締められたっということだった。
「キュー…」(俺も逃げれば良かった…)
『さて、気合いも入ったし訓練するか!』
気合いの入ったボスに、横を通っていたチワワが泣き叫んで走り去っていった。
(ああいう、可愛い反応は無理かもしれないな…)
* * *
『遊びでバーを咥えさせているんだよな?』
『はい、引っ張り合いをすることはよくやっています。』
バーっていうのは麻の荒い生地を使った棒状のオモチャで噛みごたえがよくて引っ張り合いは楽しいのだ。
『じゃあ片袖で遊ばしてみるかな。ヘンリーちょっと貸せ!』
ヘンリーが着けていた片袖を受けとるとボスが俺の前で軽く振ってみせた。
『ほれっ!ほれっ!どうだ!』
目の前で振られている片袖に食いつきたくてウズウズしたが、ボスにいいようにされるのもシャクで我慢していたが、体は正直で頭を下げてお尻は上げたまま尻尾を旋回させている。
「キャン!キャン!」(くっそー!絶妙な動きをさせるなー!)
『ハハハハハッ!ほらっ!来てみろ!』
厳つい顔と相まってなぜかボスがラスボスに見えるのは何故なんだろ?
「アイリス、ゲーェ!」
工藤さんの掛け声で片袖に向かって行ってしまった。
片袖に食らいついて全身を使って引く。
放さないように食いしばると喉からうなり声が出た。
『そうだ!そうだ!いいぞ!サヤカ、リード引っ張れ!』
胴輪につけられたリードが引かれて、引っ張りやすくなる。
「アイリス、グート!そうそう!」
『よし!』
ボスが片袖を放す。
転けかけたが片袖を取れた嬉しさでハイテンションになり、片袖を引きずりながら工藤さんの元へ向かう。
「アイリス、グート!頑張ったね!」
工藤さんに誉められ、体を撫でられたら更に嬉しくなり片袖を振り回してしまった。
「アイリス、ギープ!」
片袖を工藤さんに掴まれて命令されました。
我にかえった俺は素直に口を放す。
「アイリス、グート!」
工藤さんが片袖をボスに渡す。
ボスは片袖を受け取るとヘンリーに渡した。
『小さいのにいい引きをするな!よし!ヘンリーやってみてくれ!』
『了解です!ヘイ、アイリス!来いよ!』
片袖を腕につけたヘンリーが俺の目の前で腕を振っている。
やり足りなかった俺はすかさず片袖に食らいつく。
『おっ、いい噛みするな!』
ヘンリーは俺に合わせて中腰で対応してくれていたが、急に立ち上がった。
咥えたままの俺は片袖にぶら下がる形になったが、前後の足を片袖につけて顎を引く。
『ボス!振り回しますか!』
『いや!ちょっと待て。サヤカ、リードを引っ張れ!』
リードに引っ張れた俺は再び宙ぶらりんになった。
意地になり、放れないように更に食いしばる。
ボスが工藤さんに目配せする。
「アイリス、ゲーェ!ゲーェ!」
工藤さんに引っ張れて口を放すはめになった。
着地をして、再びヘンリーに向かっていく。
「アイリス、ヴァルト!」
工藤さんにリードを引っ張れてつんのめる。
行けないもどかしさにイラついていく。
「ギャン!ギャン!」(行かせろ!噛ませろ!)
ヘンリーもおちょくるように、ギリギリ近くまで来ては片袖を振り回す。
飛びかかろうとすると離れていく。
もどかしさがMAXになった頃、ようやくヘンリーが片袖を近づけた。
すかさず咥える俺。
『よーし!いいぞ!そうだ!』
しばらく引っ張り合いをしたら、ヘンリーが片袖を放した。
『よし、今日はこれでやめだ!』
取れた嬉しさではしゃいていたら、ボスが一言行って部屋を出て行った。
『ありがとうございました!ヘンリーもありがとう。』
『俺も楽しかったよ!でもいつもと違って軽いから感覚がおかしかったよ!ハハハッ!』
片袖を振り回していたら、工藤さんにまた止められて片袖を放すはめになった。
片袖をヘンリーが持っていき、名残惜し思いをして午前の訓練が終わった。
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