怒涛に日が過ぎて
訓練内容や訓練施設名などはフィクションです。
実際に行われているものではありません。
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フンデシューレ・シュルツに来てからというと、朝起きて散歩して朝ごはん食べる。少し休憩したら午前中の訓練をしてお昼休憩をする。午後はドッグランで遊ぶか午前中とは別の訓練をする。それが終わると散歩して晩ごはんを食べて就寝するという1日の流れができた。
訓練はというと服従訓練からやり始めた。
俺を繋ぐリード(綱)を持っている人に合わせて歩くことをしないといけないのだが、普段からマイペースに歩いていたので意識して合わせることが難しかった。
朝夕の散歩でも人に合わせて歩くようにするので3日くらいすると無意識でも人に合わせて歩けるようになった。
訓練指導してくれる工藤さんは誉め上手で、失敗するときつめに怒られるが上手くやれるとこれでもかというぐらいに誉めくれる。
誉められて伸びるタイプの俺には合っているトレーナーだと思った。
フンデシューレ・シュルツのボスであるルーカス・シュルツには一度会うことがあった。
工藤さんに抱かれた俺の目を覗きこみニヤッと笑うと頭を軽く叩いて、『面白いなこいつ!』と俺がわからないドイツ語で言って去っていった。
工藤さんは俺と顔を見合わせて?を頭に咲かせて首を傾けていた。
「ボスには何が見えたのだろう…」
「キャン!」(ああいう慧眼を持つ人って独特で慣れんわー!前世でのお得意先にいた大手社長みたいで苦手だな。)
心の奥まで見透かされるようなあの視線には背筋に冷や汗が流れる。
しばらくは会いたくない人物だった。
「ジッツ、プラッツ」
訓練のコマンドはドイツ語で行われるので声符の単語は覚えることができた。
工藤さんがドイツ語と日本語を繰り返し言ってくれたので意味がわかるようになった。
身ぶり手振りでの視符もわかりやすかった。
工藤さんの細やかな心配りには頭が下がる思いである。
始めはひたすら基礎の停座、伏臥、待て、招呼などのコマンドを言われて動いた。
工藤さんが近くにいても遠くにいても言われたら動くことを徹底的に教えられる。
俺からすると意味がわかれば楽にできることだったのだが、工藤さんには驚かれてすごく賢い子と思われただけですんだ。
* * *
「ゲーェ!、ブリング!」
障害物を飛び越えて、離れた所にあるボールを咥えてまた障害物を飛び越えて工藤さんにボールを持っていく。
「ギープ!」
工藤さんの前方手前の足元に座り、コマンドがあってからボールを放す。
「グート!お利口さんだね!アイリス!」
工藤さんに顔を両手で挟まれてもみくちゃにされながら誉められる。
工藤さんの笑顔を見るとお嬢に誉められたようにも感じて更に嬉しくなる。
服従訓練をやり始めて5ヵ月になると今やったような障害物飛越と物品持来もできるようになった。
遠隔という工藤さんからのコマンドのもと前進して離れていき言われた方向に曲がり停止したり座ったり伏せたりと遠くにいてもコマンド通りにできるようにもなった。
「キューウ!」(いろいろとできるようになったけど、まだやらなくてはならないことがあるんだろうなー!)
今日の訓練が終わり、夕方の散歩をするまでの間のんびりと過ごしていた。
走り回ったので疲れたせいか眠くなってきた。
「クワーッ!」(あくびが出るぜ!どうしようかな?)
まだ時間があるし、何をしようか悩んでいるとあのイケメンなレオンとその同僚でマッチョで厳ついヘンリーも一緒に部屋に入ってきた。
『ヘィ!アイリス!俺たちと遊ばないかい!』
『俺たちの犬とだろ!』
『そうとも言うけどな!』
「キャン!」(おっ!お誘いがきた!)
工藤さん以外のトレーナーにも慣れて、あちらからドッグランへのお誘いがくるようになった。
ドッグランと言っているが敷地内の駄々広い広場で遊ぶのだ。
ここフンデシューレ・シュルツには常時50頭から70頭の犬がいるが、トレーナーは20名ほどいるらしい。
トレーナーひとり辺り2・3頭を担当して
1頭辺りの訓練時間を十分に取れるようになっている。
訓練だけではないが、他にいる犬たちとの交流もできるように時間があるのだ。
レオンとヘンリーみたいに時間があるトレーナーが他のトレーナーが担当している犬を連れ出したりすることもある。
レオンたちに連れられてドッグランに行くと、レオン担当でラブラドールレトリバーのジョンとヘンリー担当のジャーマンシェパードドッグのハンスがいた。
「キャン!」(よっ!久しぶりだな!)
「ウォン!」(遊ぼうよ!)
「ガァウッ!」(負けないぞ!)
時間が合えばよく遊んでいる連中だ。
お調子者のジョンに負けん気の強いハンスとはよくボール遊びをする。
こいつらは初めこいつらの頭ぐらいの大きさしかない俺をおちょくったり、嘗めてかかってきたので少しお灸をすえてやったら変になつかれてしまったのだ。
ここフンデシューレ・シュルツにいるトレーナーたちは、英語はしゃべれるが皆ドイツ語をしゃべっているため俺には何を言っているのかわからない。
てっきり外国の犬はそこの国の言葉で話すのかと思っていたため、ここにいる犬たちとは会話ができることがわかって驚いたものだ。
まあ、あいつらは俺より年齢は年上だったが精神年齢は俺の方が遥かに高かったのも予想外だった。
「キャン!」(お灸はよく活きたよな!)
「?」(おきゅうって何?おいしいもの?)
「フンッ!」(ジョンはしらないのか!バカだな!)
「キャン!キャン!」(初めて会ったときにお前らに喰らわせただろ!鼻に!あれのことだよ!)
「キャン!」(あれ!あれがおきゅうなの?あれはいたいよね!おれキライ!)
「ガゥッ!」(あれは俺もキライ!)
ああ、突っかかってきた2頭に血はでないように歯は食い込ませないように調整して俺は鼻先を噛んでひねってやったんだ何回もな!
小回りきく体だから俺の方があいつらをおちょくってやった。
それから生意気なことはしなくなって、楽しく遊べるようになったよ。
『キモッタマガールはすごいな!』
『ジョンとハンスが負けるとは思わなかったよ!』
その時ケンカを止めに入ったレオンとヘンリーは感心した様子のだった。
レオンにまたキモッタマガールって言われたので称号というか愛称なのだろうとわかったが言わないで欲しかったが、レオンのおかげ?で他のトレーナーからよく言われるようになったよ…すれ違い様とかにね挨拶みたいに…。
工藤さんも苦笑いしていたから、日本人にしたら変な愛称なのだろうな…。
1時間半ほどボール遊びや走り回っていたが工藤さんが迎えに来てくれて解散となった。
『レオン、ヘンリーありがとう。またね!』
『『またな!』』
「アイリス、楽しかった?」
「キャン!」(楽しかったよ!あいつらをおちょくるのは!)
「やっぱりジャックラッセルテリア似だからかな?ボール追いかけるのが楽しそうだものね!」
勘違いさせたが、ボール遊びはストレス発散もできて楽しいものだ。
全力で走ってボールをキャッチできたときの達成感は何とも言えない。
狩猟犬の本能なのだろう、ボールを投げられると取りに行きたくてたまらなくなるのだからちょっと困ったものだ。
散歩を終えて、部屋に戻ると工藤さんが用意してくれた晩ごはんを食べる。
食べ終わると工藤さんが照明を暗くして出ていく。
「おやすみ、アイリス!明日は襲撃訓練をボスが見てくれるようだから頑張ろうね!しっかり寝るんだよ!」
薄暗くなった部屋で固まる俺。
(えっ、あのボスが訓練見るって!何か起きるだろ!それは!)
工藤さんの一言で明日が不安になって、なかなか寝付けれなかった。
(明日が来なければいいのにな…)
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