キモッタマガール爆誕!
アイリスがやらかします!
楽しんでいただけると嬉しいです。
*ブックマークありがとうございます!
また一気に増えて作者は小躍りしております!
銃声がした後、お嬢の足元辺りに何か飛んで来た。
「キャッ!な、何?」
「グゥゥッ!」(どこから!)
近くで鳴り響いた銃声にお嬢は驚き、座り込んでしまった。
お嬢の前に移動し、周りを警戒する。
(くそっ!)
銃声がした方向を見ると瓦礫の間から動くものが見えた。
お嬢を見て一瞬迷ったが、瓦礫の山へと向かって走っていく。
再び銃声が鳴り響く。
「キャー!アイリス!」
腰丈ほどのフェンスを足を引っかけて飛び越して、瓦礫の中に突っ込んでいく。
「危ない!」
「すごいっ!」
お嬢と工藤さんの声が聞こえたが無視して行く。
『おい!凄いぞ!この子!』
低い声が聞こえたが、何を言っているのかわからない。
瓦礫の山を登ると怪しい男を見つけた。
「グルルルルッ!」
『おっ!やるかっ!』
銃を構える男。
身を低くして飛びかかれるように構える俺。
男が引き金を引こうと指を動かした瞬間俺は真横に飛び、着地した後すぐ男に飛びかかる。
左腕に噛みついたが、プロテクターみたいな硬いものを着けているようで歯が入った感じがしなかった。
(チッ!)
放さない俺を見て、男は苦笑いをして右手をあげて動かなくなった。
そのまま口を放さずにいると、お嬢たちがフェンス内に入ってくる。
『サヤカ!そろそろ、このちびっこ止めさせてくれよ!』
「アイリスちゃん、放して!その人うちのトレーナーだから!ごめんなさい!テストをしたのよ!」
「綾香ちゃん、アイリスちゃんを止めてあげて!」
「えっ?えっ?お母様?」
「アイリスちゃんを止めさせて!」
「えっ!ア、アイリス!やめなさい!」
お嬢の声が近くで聞こえて、我に返ると外国人男性が困った顔で俺を見ていた。
「アイリス!」
お嬢にもう一度呼ばれて、慌てて口を放す。
着地した後、男を見据えながらお嬢の元までバックしていく。
「ヴゥ゛ゥ゛ゥ゛ゥ゛…」(何かイラつく…)
『おっ!まだ警戒しているよ!すごいな!』
『レオン!テストは終わったんだから、挑発しないの!』
男が俺を指差しながら、工藤さんに笑いかけている様子に釈然としないがテストという言葉が聞こえたのでやめてみた。
「アイリス、大丈夫よ。落ち着いて。」
お嬢に抱きしめられ、撫でられるとささくれた気持ちが落ち着いてくる。
お嬢の誘拐未遂事件がトラウマになっているようだ。
それまで黙っていた親父様が額に青筋たてて近寄ってくる。
「工藤さん。事前に聞いていた内容とずいぶん違いましたが?どうなっているのですか?」
「すいません!同僚トレーナーのレオンが悪のりさしてしまって!本当に申し訳ありません!」
厳つい顔を更に歪めて仁王像そっくりになっている親父様が工藤さんに詰め寄り、工藤さんは青くなった顔で謝っている。
「アイリスちゃんの動き凄かったものですから、トレーナーの性でつい…やってしまったようで…申し訳ありません!」
「お互いにケガがなかったから良かったですが、心臓に悪いですよ。」
「キャン!」(親父様の仁王像ばりの顔の方が心臓に悪いと俺は思うなー!)
レオンと紹介された男がお嬢に近づいてきた。
レオンが爽やかなイケメンスマイルでお嬢に話しかける。
『君がこの子の飼い主かい?』
『はい、そうです。』
『この子凄いね!こういう子って日本語で何て言ったかな?えっと…そうそう!キモッタマガール!この子キモッタマガールだね!』
『キモッタマガール?』
『あれ?違ってた?度胸のある子のことをそう言わなかった?』
『いえ…度胸があるという意味でなら肝っ玉がすわるといいますが…』
『合っているじゃないか!えっと…アイリスだっけ?今日から君はキモッタマガールだ!』
「キュー…」(よくわからないけどダジャレぽく聞こえるのは俺の気のせいですかね…)
ちなみにレオンとお嬢の会話を理解できているママ上様は変なツボに入ったのか肩を震わせて笑いを堪えていた。
* * *
「本当に申し訳ありませんでした。」
工藤さんがまだ青ざめた顔で謝っている。
「私の方こそ、問い詰めてしまい申し訳ない。」
「いえ、これから預かる子なのにケガをさせてしまうところだったのです。私達の悪いのです。西城寺さんの言い分は正論ですから謝る必要はありません。」
工藤さんと親父様がお互いに頭を下げ合っていて収拾がつかなくなっていた。
「あなた、工藤さん。もういいのではないですか?お互いが悪かったで一度終わりませんか?話を進めましょう。」
「ああ、すまない薫。工藤さん続きをお願いします。」
「奥様ありがとうございます。では、先ほどのアイリスちゃんの様子を見る限り私は護衛犬としての役割ははたせれると思います。ただ犯人に向かっていくのを我慢させなくてはならないので、それは今後の訓練次第かと思います。」
「やはり犯人に向かっていくのは護衛犬としてダメなのですね。」
「基本的に護衛対象から離れてはいけません。犯人が近づいて護衛対象に危害がある場合は反撃してもいいですが、それ以外は護衛対象を危険から離さなくてはいけません。」
「なるほど、確かに犯人を追いかけるのは警察犬の役割ですものね。」
「はい、そうです。犯人が1人だけである可能性は低いと考えないといけません。訓練では犯人の撃退もしますが、それは念のためにという感じですね。」
(なるほど。お嬢から離れてはダメなの…か…いろいろと間違っていたな…。)
工藤さんの話を聞いて自分が間違った認識をしていたことに愕然としたが、これから勉強するためにここに来たのだから自分のためお嬢のために頑張ろうと思った。
「キャン!」(気合い入れないとな!)
「クスッ!アイリスはわかったのかしら?」
「アイリスちゃんはお利口さんだと思いますね。どこまで理解できるか訓練でわかっていきますよ。楽しみです。」
「アイリスは工藤さんが担当ですか?それなら嬉しいです!」
お嬢が工藤さんに天使の微笑みで話しかけた。
「ウッ!かわ…い…。ウウン!はい、ボスから担当を打診されています。アイリスちゃんを見てから決めるつもりでしたので、今はアイリスちゃんと一緒に頑張りたいと思っていましす。よろしくお願いします。」
(あっ、お嬢に落ちたな、あれ!まぁ、正面からあの笑顔を見たら仕方がないよな!落ちない方が珍しいし!)
頬が赤くなった工藤さんを見て、また1人お嬢の信奉者が増えたことを悟った。
「よろしくお願いいたしますわ!」
「キャン!」(よろしく!)
「私達も日本人の工藤さんが担当で安心しました。お転婆なアイリスですが、よろしくお願いいたします。」
途中でハプニングがあったが、無事に訓練の契約がかわされてアイリスの護衛犬になるための武者修行が始まった。
* * *
お嬢たちが帰っていった。
車に乗り込んだお嬢が工藤さんに抱かれた俺を見て涙ぐんでいたのが、悲しかったが早く訓練を終えて日本に戻ろうと決意を固めた。
「アイリスちゃん。いえ、アイリス。今日から頑張りましょうね!」
「キャン!」(おう!早く護衛犬になってやる!)
「本当に返事をするんね!賢いな!今から寝る場所に案内するからね。」
お嬢たちが案内されていた建物があった一角より更に奥にある建物に入っていく工藤さん。
入口の扉を開けて中に入っていくと、広い廊下の両サイドにたくさんの扉が並んでいた。
扉のガラス越しに中を見ると3畳ほどの広さの部屋に犬が1頭ずつ入っているようだった。
(個室かよ!すげーな!)
大型犬でもゆったりできるスペースで手前にクッションや毛布が敷いてあり奥にトイレスペースがある。オモチャも散らばっていたりして、家の部屋を少し狭くして犬用にした感じだった。
配置が少し違っていたりしたがどの部屋にも1頭の犬がいて皆大人しくしていた。
「フフフッ!目がこぼれそうになっているよ、アイリス!びっくりしているのかな?ここが君の部屋だよ。」
一般的な訓練施設を知らないがここまで犬に対して用意している所はないのではないかと思った。
工藤さんに連れられて部屋に入ると見慣れたクッションとトイレが置いてあった。
床に下ろされて、部屋の中を探索するとやはり屋敷で使っていた物が置いてあるようだった。
「気づいたかな?お家にあった物を用意してもらったのだよ。安心してここに居れるようにと思って持ってきてもらったのよ!アイリスは愛されているね!」
「キャン!」(お嬢!俺頑張るから!)
少し目を潤ませて、心の中では感動して号泣しているおっさん犬だった。
読んでいただき、ありがとうございました。




