これって犬の武者修行ですか?
護衛犬になるための第一歩を踏み出したおっさん犬です。
武者修行はじまりはじまり!
サラッと行って帰ってくる予定です。
*ドイツでの犬の訓練内容や施設などはフィクションです。
実際の訓練内容は知らないのでこんな感じかなっと思って書いています。
「キャン!」(帰って来たぜ日本!ただいま、お嬢!)
「アイリス!会いたかったわ!」
ゲージから出されてお嬢からの熱烈な抱擁を受ける俺は世界一幸せな犬だろう。
今日、俺は1年10ヵ月のドイツでの護衛犬訓練から帰って来ました!
シャバの空気はうまいぜ!
この1年10ヵ月は涙なくして話せないほど大変だった。
俺がドイツで何故か『キモッタマガール』と呼ばれたか、かいつまんで話するけど聞く?
えっ!聞くの?いいの?本当に?じゃあ…あれは護衛犬になると決まった3ヵ月後の10月からになる。
* * *
親父様より護衛犬になれと言われてからいろいろ忙しくなった。
行き先はドイツと決まり、日本の出国手続きやドイツの入国手続きの為に狂犬病ワクチン接種やマイクロチップの装着をした。
マイクロチップの装着あれは痛かった!
マイクロチップを入れる針って人からみたら爪楊枝くらいの太さだろうが犬の俺からしたら鉛筆くらいに見えるんだぜ!あれ!
それをブスッじゃなくてザクッて感じで入れられた時はチビりそうだった…。
ちなみにもらしてないぞ!本当にもらしてないからな!
すべての手続きが終わって、秋晴れした10月初めにドイツへ飛行機で向かった。
空港から2時間車で移動した自然豊かな郊外にある訓練センターにやって来た。
「やはりドイツは寒いですわ!」
見送りに来てくれたお嬢は厚手のケープを着ているが、センターに来た興奮による熱さのせいか気温の低さによってか頬が赤くなっている。
「綾香ちゃん、移動するわよ。こっちへいらっしゃい。」
「はい、お母様。今行きます。」
訓練センターは簡単に言って、すごく広い敷地に真新しい建物が立ち並んだ所だった。
瓦礫がつまれ特殊な訓練をするらしき所には柵をしてあるがあとは何処にでも行けるようになっていた。
「すごい広いですわ!どこまでセンターの敷地なのかしら?あそこは何をする場所なのかしら?」
「綾香、施設を案内してもらえるから落ち着きなさい。」
「はい…ごめんなさい。お父様。」
珍しくはしゃいでいたお嬢に親父様やママ上様が微笑ましく思っていたが、少し周りを見ていないようだったので注意している。
そこへ黒髪をポニーテールにした日本人女性がやって来た。
「はじめまして、フンデシューレ・シュルツのトレーナーで工藤さやかと申します。西城寺さんでよろしかったでしょうか?」
「はい。はじめまして、西城寺源次郎です。妻の薫と娘の綾香、愛犬のアイリスです。今日からよろしくお願いします。」
「妻の薫です。」
「娘の綾香です。この子がアイリスですわ。」
「キャン!」(よろしく!)
「フフフッ!よろしくお願いします。では案内します。付いてきてください。」
工藤さんに付いていき一番手前の建物に入っていく。
受付らしいカウンターには恰幅のいいおばさんがいた。
『ヘイ!サヤカ!日本からのお客さんかい?』
『ええ、所長に日本人だから案内よろしくって頼まれたのよ!』
『あんたもここへ来て3年だし、いい経験だよ!頑張りな!』
『そうね!頑張るわ!』
おばさんと工藤さんがドイツ語でしゃべっているが何言っているかわからんわ!
お嬢!口!口が開いてるぞ!
「工藤さんってドイツ語話せれるのですね!素晴らしいですわ!どうやって覚えたのですか?今習っているのですが、なかなか上手くいかなくて…。コツを教えて欲しいです!」
「綾香ちゃん…。」
「すっ、すいません!私ったら…。」
「フフフッ!案内終わってからでもいいなら、お話しましょうか?」
「本当ですか!」
お嬢は満面の笑顔になり、スキップする勢いで喜んでいる。
久しぶりに見た天使の微笑みに俺を含めた皆が微笑ましくお嬢を見つめた。
「では、ここから説明していきます。フンデシューレ・シュルツでは家庭犬、ペットとして飼われている犬から警察犬、麻薬探知犬、介助犬、護衛犬など特殊な
訓練犬までの訓練を行っています。今から向かうのは飼い主さんと一緒に行うグループスクールの部屋です。」
廊下を歩いていくと、教室みたいな部屋で6組の飼い主と犬がトレーナーと思われる男性に合わせて座れや伏せなどをやっていた。
「今は飼い主さんと犬がトレーナーの指示のもとトレーニングを行っています。トレーナーが1組の飼い主さんと犬をマンツーマンでトレーニングすることもありますね。スクールには飼い主さんと一緒にする訓練とトレーナーが犬を訓練する2パターンがあります。アイリスちゃんはトレーナーが訓練するコースだと聞いていますが間違いないですか?」
「はい。護衛犬を目指したいのでトレーナーさんにお願いしたいです。」
「わかりました。では特殊訓練をしている施設の方へ行きましょうか。付いてきてください。」
また工藤さんに付いていき、となりの建物に入っていく。
扉の重い音が響く。
「防音になっているので、外には音が漏れません。主にここでは麻薬探知犬や護衛犬、警察犬の訓練をしています。」
廊下から見える部屋ではジャーマンシェパードドッグがプロテクターを着けた男性の腕に食らいついていた。
「キャッ!」
「おっ!すごいな!」
「まぁっ!噛まれている男性は大丈夫なのかしら?」
「練習ですから、ケガをしないようにしていますので大丈夫です。」
(俺、これをするのか?)
間近でみた訓練に驚きを隠せない様子の面々。
工藤さんは笑いながら俺たちを見ていた。
何部屋か同じように訓練しているのを見て、お嬢が不安げに俺を見つめる。
「次へ行きましょうか。次はすごく煩いのでこのヘッドフォンを着けてもらえますか?」
工藤さんから手渡されたヘッドフォンに困惑するが素直に着ける3人。
「キャン!」(俺には無いんですねー。そうですかー!)
「アイリスちゃんはちょっと我慢できるかな?」
(もしかして銃声が聞こえるとか?あり得るな…。)
隣の建物へ入っていく。
目の前の扉を開けるともうひとつ扉があった。
ひとつ目の扉を閉めてから2つ目の扉を開けて入っていく。
その時、銃声が鳴り響いた。
耳鳴りの様になって頭も痛い。
わからないだろうがしかめっ面になっているだろ。
お嬢たちはほとんど聞こえなかったのだろう、平気な様子で工藤さんに付いていく。
「平気そうですね。」
俺を見ていた工藤さんが呟く。
(やっぱりな。銃声の音で俺がどう反応するか見ていたのか。)
銃声を聞いて、パニックになる犬もいるだろうから様子を見て訓練内容を決めるのだろう。
俺はどこまで訓練するのかは知らないが無事に日本へ帰りたいと思った。
工藤さんはお嬢たちにホワイトボードで説明しながら銃を使った訓練の様子を教えていく。
訓練で使われる銃は玉は出ない火薬のみが爆発する銃だった。
まずは音で怯まないようにして先ほどの見た、人を噛みに行けるように練習しているようだ。
建物内を一通り見終わって、一度外へ出ていく俺たち。
先ほど見ていた瓦礫がつまれた一角に来た。
フェンスに囲まれたここは災害救助の訓練する場所らしい。
(崩れないようになっているだろうが瓦礫の上に乗るのは怖い場所だな。)
施設の案内が終わったのでフェンス内から出て、お嬢は拙いドイツ語で工藤さんと話しはじめる。
『こんな感じで、しか、話せないのです。』
『なるほど…確かに拙い様子ですね。』
「上手く話せるようになれますか?」
「リスニングは出来ているようなので大丈夫だと思いますが、実際に話して慣れていくことが必要ですね。良かったら、私とメッセージ交換しますか?アイリスちゃんの様子を報告するのに連絡するので、その時にでも少しお話しましょうか?」
「私は嬉しいですが、いいんですか?」
嬉しいそうに工藤さんと話すお嬢に、工藤さんと楽しそうに話すお嬢を嬉しそうに見つめる親父様とママ上様だった。
「リードを取ってもいいですよ。しばらくはここにいるのでアイリスちゃん自由にさせてあげてください。」
「何処にも行かないですが、いいのですか?」
「ええ、いいですよ。」
お嬢は迷っている様子だったが、俺を放してくれた。
放された俺は辺りの匂いを嗅いでいるといきなり近くで銃声が鳴り響いた。
読んでいただき、ありがとうございました。
ブックマークが増えて、作者は感激しております。
これからも頑張って更新していきます。




