ミアキのチュートリアルクエスト
──彼方──
二階へ上がった僕は、亜希の部屋へ通された。
部屋の広さは僕の部屋と同じ6畳ほどで、ベッド・本棚・タンス・パソコンの置かれた机・ローテーブルがあるくらい。
デザインこそ違うものの、大きな違いは部屋全体がピンクを基調としていることで、由奈ちゃんの部屋とはまた違った印象を受けた。
「そ……それで彼方、早速で悪いんだけどゲームのやり方を教えてもらえないかしら……?」
亜希はパソコンを立ち上げ、エリシア・オンラインを起動させる。
画面には「ミアキ」と書かれたキャラクターが映し出されていた。
ピンクの髪をした人間の女性キャラで、初心者用の剣と盾、それに初期装備の服を着ている。
「えっと、亜希はどこまで進めてるの?」
「そ……それが昨日の夜にこの子を作っただけで、何も……」
なるほど……つまりチュートリアルもまだということか。
「ところで亜希、コントローラーとか持ってる?キーボードでも出来るけど、コントローラーがあったほうがやりやすいよ」
「そ……そんなの私が持ってるわけないでしょっ!?だって……ゲームとか初めてだもん……」
拗ねたように言う亜希に、思わずクスッと笑ってしまう。
しかしコントローラーがないのか……ん?待てよ。
「亜希ちょっと待ってて。確か僕の部屋に使ってないコントローラーがあったはずだから持ってくるね」
「そんな……悪いわよ……!」
僕は自分の部屋へ戻り、タンスの一番下から予備のコントローラーを取り出し、再び亜希の部屋へ戻った。
「亜希、これを使いなよ」
「あ……ありがとう……」
パソコンにUSBケーブルを繋ぎ、コントローラーを手渡すと、亜希は少し顔を赤くして笑みを浮かべた。
「さて、まずはミアキを選択して。チュートリアルクエストを進めるよ」
「チュートリアルクエスト……?」
「うん。このゲームの操作に慣れるための練習みたいなものだよ」
「わ……わかったわ。やってみる……」
亜希はコントローラーを手に持ち、椅子に座る。
僕はそのすぐ横に膝立ちになった。
---
『お前が冒険者志望としてやって来た【ミアキ】か?お前みたいな奴がこの先やっていけるか俺が見極めてやる。俺の指示通りに動いてみろ!』
ゲームが始まると、ミアキの前に「ジェスター」というNPCの男性キャラが現れ、チュートリアルが始まった。
「……ねえ彼方。この偉そうな男は誰?」
「これはNPCキャラだね」
「NPC……?」
「ノンプレイヤーキャラ。簡単に言えばゲーム側が操作するキャラのことだよ」
「なんか高圧的な物言いが苛つくんだけど……殴ってもいいかしら……?」
「こういうのは倒せないから無理だよ」
亜希の「殴ってもいいか」という言葉に、思わず笑みがこぼれる。
僕も最初はこのNPCを見て偉そうだと思ったけど、亜希と一緒に見るとなんだか懐かしい。
「そう……それは残念だわ……。ところでどうすればいいのかしら?」
「このNPCの指示に従って動くことになるよ」
「わかったわ。なら話を聞けばいいのね」
亜希はボタンを押し、ジェスターの話を進める。
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『ミアキ、あそこにある箱の中身を持ってこい!』
「はぁっ!?何よこいつ!それくらい自分で取りに行きなさいよっ!」
「ま……まあまあ……亜希、ゲームなんだし……」
「分かったわよ……」
文句を言いながらも、亜希はミアキを操作して箱へ移動し、中身を取り出してジェスターのもとへ持っていく。
---
『よし、うまく取ってこれたみたいだな!まあ、これくらい出来ないとこの先思いやられるがな……。さあ次だ……!』
「えぇ~……!まだやらされるの……っ!?」
亜希は文句を言いながらも、ジェスターの指示通りにトリスタの街を進んでいく。
チュートリアルは物品の配達、アイテム収集、敵の討伐など様々で、その度に亜希は
「自分で持っていきなさいよ!」
「そのくらい自分でできないの!?」
などとブツブツ言いながら操作していた。
その様子が面白くて、僕はつい笑ってしまう。
「ちょっと彼方……笑わなくてもいいでしょ……?下手なのは初めてなんだからしょうがないじゃない……!」
「ああ、違うよ……亜希の反応が面白くてつい……」
亜希は頬を膨らませながら僕を見る。
僕は宥めつつ、ゲームを進めていく。
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『見事だミアキ!よく俺からの課題を達成した!これは俺からの報酬だ、受け取れ!』
チュートリアルを終え、ミアキは経験値を受け取り、レベル2へ上がった。
「やったわ彼方!彼方のおかげでミアキのレベルが上がったわ!」
「うわぁ……!あ……亜希……っ!?」
亜希はよほど嬉しかったのか、笑顔で僕に抱きついてきた。
髪からふわっと香る甘い匂いに、思わずドキッとしてしまう。
「ねえねえ彼方!この先どうすればいいのっ!?」
「この先は自由に冒険すればいいんだけど……もしよければ僕のキャラと冒険してみる?」
「する!私彼方と冒険したいわっ!」
「じ……じゃあ、僕は自分の部屋に戻ってゲームを起動させてくるね」
「分かったわ!」
僕は亜希から離れ、ドキドキと胸を高鳴らせながら自分の部屋へ戻った。
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