静かに散る火花
「ねえ、御堂君……昨日言ってたクッキー作ってみたんだけど食べてもらえる……?」
昼休み。今日も中庭で亜希と柊さんと弁当を食べていると、柊さんが脇に置いていた小さなバッグから小袋に入ったクッキー数枚を取り出し、僕に手渡してくれた。
「ありがとう柊さん!へぇ、おいしそうだね」
受け取ったクッキーはチョコチップクッキーのようで、とても美味しそうに見えた。
「よかったら風原さんもどうぞ……」
「え……ええ……いただくわね」
柊さんは亜希にもクッキーを渡す。
なぜか柊さんは少し笑みを浮かべ、亜希の顔は引きつっていた。
亜希ってクッキーが好きじゃないのかな……?
「ねえ、柊さん。早速いただいてもいい?」
「ええ、食べてもらえると嬉しい……」
僕は小袋を開け、クッキーを一枚口へ運ぶ。
チョコチップの甘みとサクサク感が口いっぱいに広がる。
「うん……柊さんこれ美味しいよ!柊さんって料理得意なんだね!」
「御堂君にそう言ってもらえると嬉しい……。でも、失敗したのもあるからまだまだ……」
「そんなことないよ!これだけ上手に出来るのはすごいと思うよ!」
「み……御堂君……そんなに褒められるとわたし恥ずかしい……」
柊さんは少し顔を赤くして俯いた。
「く……確かにこれ美味しいわね……」
一方の亜希は、どこか面白くなさそうにクッキーを食べていた。
やっぱり甘いのが苦手なのかな……?
「亜希って甘いのが苦手なの?」
「え……っ!?そ……そんなことないわよっ!いや、このクッキー美味しいわね……!あはははは……!」
作り笑いを浮かべながらクッキーを口に運ぶ亜希。
……変だな。
「風原さんのお口にも合うようで何より……。そういえば昨日、風原さんは御堂君と料理の練習をするって言ってたけど、どうだった……?」
「え……ええ……!もちろん御堂君と夕飯を作ったわ!御堂君の教え方が上手いのか、みんな私の料理を美味しいって言ってくれていたわ!それに、昨日は御堂君の部屋で一緒に数学の課題をしたのよ!」
「御堂君の部屋で宿題……」
亜希が胸を張って誇らしげに話すと、柊さんの眉がピクリと動いた。
なんだろう……二人の間で火花が散っている……気がする。
ここは早めに撤退したほうがいい。
そう判断した僕は、二人が見つめ合っている隙にそそくさと逃げることにした。
「私たち……意外と気が合いそうね……!」
「本当にそう……特にとある部分で共通していそう……」
「御堂君はどう思うっ!?」
「御堂君はどう思う……?」
二人が振り向いた先には、すでに僕の姿はなかった。
◆◆◆
その日の夜。
エリシアへログインすると、メールを受信していることに気づいた。
(なんだろう……?)
開いてみると、差出人はミオリネ(柊)さん。
内容は「ログインしたら連絡してほしい」とだけ書かれていた。
なんだろう……。とりあえず挨拶をするか。
---
『こんばんは』
『こんばんは!』
『こんばんは……』
『お兄ちゃんこんばんは!』
挨拶をすると、スズタクさん、柊さん、そして先にログインしていた由奈ちゃんから返事が返ってきた。
『ねえねえお兄ちゃん!今日もあたしのレベル上げ手伝って!』
『……ユーナカリアさん、今日はわたしがカナタさんを予約済みです』
『あ……そうなんですね、ごめんなさい』
『大丈夫……その代わり、今度カナタさんをユーナカリアさんに貸してあげます』
『はい!では次はあたしがお借りします!』
二人が勝手に僕の“譲渡”について話し合っている。
……僕の意見はどこへ行ったんだろう。
『ははは……!カナタはモテモテだな!』
「ははは……笑い事じゃないんだけどな……」
スズタクさんのチャットを見て、僕は乾いた笑いを浮かべた。
---
『カナタさん、今日は新エリアに行きませんか……?』
『うん、いいよ』
『それじゃあ、ユーナカリアさんは俺とレベル上げをするかい?』
『はい!お願いします!あ、あたしは今トリスタにいます』
『分かった、そっちに向かおう』
『ミオリネさん、僕たちはどうする……?』
『……来れるのならヴァルツァに来てほしい』
『分かった。確かショップで転移スクロール売ってたはずだから、すぐに行くよ』
『……待ってる』
僕はカナタを操作し、ショップで転移スクロールを購入してヴァルツァへ移動した。
すると、すぐ目の前にミオリネさんの姿があった。
『ミオリネさん、お待たせ』
『大丈夫、そんなに待ってない……。それよりパーティーの招待を送ります』
招待を受け、僕はミオリネさんのパーティーに参加した。
ヴァルツァの街を出ると、周囲には「ヴァルキュリア」と表示された敵が何体もいた。
『それじゃあ……いくよ!』
『カナタさん、援護します……!』
僕がカナタで攻撃を仕掛けると、後ろからミオリネさんが矢を放って援護してくれる。
しかしヴァルキュリアはHPも防御力も高く、なかなか倒れない。
「く……!こいつ硬い……!」
『カナタさん、敵が集まってきてます……!』
辺りを見ると、数体のヴァルキュリアが僕へ向かってくる。
そして攻撃を受けると、思った以上に体力を奪われた。
「くそ……!こいつ強い……!」
『カナタさんHPが……!』
『く……一度撤退しよう……!』
『わかりました……!』
僕はカナタを操作し、ミオリネさんと共に街へ逃れた。
---
『思ったより強いね……』
『昨日もスズタクさんが苦戦していました……』
『えぇ~!あのスズタクさんが……っ!?』
スズタクさんほどの腕前でも苦戦するなら、このヴァルキュリアは相当手強いということだ。
『とりあえず、どうしますか?』
『う~ん……もう少し戦ってみよう』
『わかりました。ではわたしは援護します』
『ミオリネさん、お願い』
その後も僕はミオリネ(柊)さんと共に、苦戦しながらもゲームを楽しんだ。
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