甘える妹と甘えれない姉
カナタを街の外へ向かわせると、そこは平原となっており、画面の至る所にホーンラビットという額に小さな角の生えたウサギが多数生息していた。
「ねえ、お兄ちゃん。戦闘ってどうやるの?」
壁越しに由奈ちゃんの声が聞こえてくる。
「そうか……由奈ちゃんは最初のチュートリアルクエストしかしていないのか……」
チュートリアルクエストとは操作説明を行うためのクエストで、これを完遂するとレベルが1上がる。
つまり、このゲームでは実質レベル2からのスタートとなる。
「そうだよ~。キャラを作ってみたもののよく分からなかったから、そのまま放置してたんだよ」
「なるほど。ユーナカリアは魔法使い?」
「うん、魔法使いの女の子!」
「魔法はどんなのが使える?」
「えっとね……ファイアローとアイスバレットっていうの」
ふむ……ファイアローとアイスバレットか。
どちらも炎と氷の初級魔法だ。
「魔法使いは、画面右の方に本みたいなアイコンがない?それを選択すると魔法が撃てるよ。それか、その魔法を画面下のサブパレットにセットしておくといつでも使えるよ」
「え……?えっと……ごめんお兄ちゃん、どれか分からないからちょっと来て~!」
「え……?うん、分かった……」
僕は席を立って部屋を出ると、由奈ちゃんの部屋の前へやって来た。
そしてドアをノックしようと手を上げた瞬間、部屋のドアが開いた。
「あ、お兄ちゃんいらっしゃ~い!さ、入って!」
そこには笑顔を振りまく由奈ちゃんの姿があった。
「おじゃましま~す……」
自分の家なのに、どこか緊張しながら部屋へ入る。
うう……女の子の部屋に入るのなんて初めてだから緊張するよ……。
部屋を見渡すと、広さは僕の部屋と同じ6畳ほど。
ベッド、本棚、服の入ったタンス、勉強机兼パソコンデスクなどが置かれている。
違いと言えば、家具の色が水色系で統一され、ベッドには犬のぬいぐるみが置かれていることくらい。
漫画みたいなフリフリのレースだらけの部屋ではなかったので、僕は少しホッとした。
「それでお兄ちゃん、魔法ってどうやってこのサブパレットってのに入れるの?」
「これはこうやるんだよ」
僕は由奈ちゃんのマウスに手を添え、本のようなアイコンを開き、ファイアローとアイスバレットのアイコンをドラッグしてサブパレットへ移動させる。
「へえ~、こうやるんだ……」
「本のアイコンを開いても使えるけど、よく使う魔法はサブパレットに入れておくと便利だよ。あと、このサブパレットはキーボードのファンクションキーと対応してるから、ボタンを押すだけですぐ発動できるよ」
「ありがとうお兄ちゃん!すっごく助かったよっ!」
「ちょ……!由奈ちゃん……っ!?」
由奈ちゃんは笑顔で僕に抱きついてきて、僕は思わずドキッとしてしまう。
い、いきなり抱きついてくるからビックリするよ……。
「えへへ~、やっぱりお兄ちゃんは頼りになるなぁ~……。そうだ!改めて一緒に敵を倒していこうよ!」
「うん、そうだね」
由奈ちゃんに解放された僕は自分の部屋へ戻り、彼女とゲームを楽しんだのだった。
~サイドストーリー~
──亜希──
食事を済ませたあと、私は自分の部屋のベッドで寝転がりながらスマホを眺めていると、隣の部屋から由奈の声が聞こえてきた。
「あ……!出たっ!お兄ちゃん、あたしのユーナカリアが魔法を撃ったよ!」
声の感じからして、由奈は彼方とゲームで遊んでいるみたい……。
「そんなに面白いのかしら……?」
私は画面を閉じ、エリシア・オンラインを検索して紹介ページを開く。
これが今、彼方と由奈が熱中しているゲーム……。
由奈はこのゲームを通して彼方との距離を縮めている……。
ゲームがきっかけで交際に発展したって話もテレビやネットで見たことがある……。
まさか……彼方と由奈も……?
私は焦りを感じていた。
このままじゃ由奈に先を越されてしまう……。
でも、私はゲームなんてしたことないし……。
それに、したとしてもその後どうするの……?
彼方に助けてって一々言う……?
でもそれ、私のキャラじゃないし……。
でも……どうすれば……。
私はゲームの紹介画面を見ながらウンウンと悩んでいると、隣の部屋からまた声が聞こえてきた。
「えっ!?お兄ちゃんこれくれるのっ!?やったー!お兄ちゃん大好きっ!」
“大好き”……その言葉を聞いた瞬間、私はベッドから起き上がり、パソコンを立ち上げた。
そしてエリシア・オンラインをインストールし、ピンク色の髪をした自分のキャラクターを作ったのだった……。
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