妹の距離と姉の距離
「ねえねえお母さんっ!今日お兄ちゃんすっごくカッコよかったんだよ!
今日あたし、知らない男の人に連れて行かれそうになったんだけど、お兄ちゃんが助けに来てくれて、その男の人たちをズバーっと投げ飛ばしてたんだよ!」
夜……父さんと真奈美さんが帰り、みんなで夕食を囲んでいると、由奈ちゃんが今日の出来事を身振り手振り、さらに擬音まで交えて興奮気味に説明していた。
「由奈ちゃん、大丈夫だったの……っ!?」
「大丈夫大丈夫!お兄ちゃんのおかげで、あたしはほら、ケガ一つしてないよ!」
真奈美さんの心配をよそに、由奈ちゃんは笑いながらピースまでしていた。
「彼方は中学の頃まで柔道を習ってたからな……。しかし、なかなか頼もしい兄じゃないか」
「まあ……でも、たまたま通りかかってよかったよ。もう少し由奈ちゃんに気づくのが遅かったら、今ごろどうなっていたかと思うとゾッとするよ……」
「ホント、お兄ちゃんには感謝してもしきれないよ~!あははははっ!」
「ちょっと……!由奈ちゃん……っ!?」
由奈ちゃんは突然席を立つと、僕に抱きついてきた。
あわ……あわわわ……!
せ、背中に由奈ちゃんの柔らかな二つの膨らみが……!
「こら由奈……!行儀が悪いわよ……!」
その様子を、亜希はどこかムッとしながら注意していた。
姉として妹の行儀を指摘しているんだろう……亜希も中々いいお姉ちゃんをしている。
「それはそうと、今日の夕飯は彼方と亜希ちゃんが作ってくれたんだろ? なかなか美味しいじゃないか」
「は……はい……!彼方に教えてもらいながら作りましたっ!」
父さんは亜希と由奈ちゃんの様子に苦笑しつつ、話題を変えるように炒飯を口へ運ぶ。
亜希はぱあっと笑顔を浮かべていた。
「へぇ~、亜希ちゃんと彼方くんがね……。うふふ、二日目なのに一緒に料理をするほど仲が良くなってるのね。お母さん嬉しいわ」
真奈美さんも笑顔で炒飯を食べている。
すると、なぜか由奈ちゃんは少し面白くなさそうな顔をしていた。
「ねね、お兄ちゃん。今度あたし調理実習があるんだ。あたしの料理も見てよ~」
「あら……?由奈ちゃんの調理実習ってもう少し先じゃなかったかしら……?
それに、料理を覚えたいならお母さんが教えてあげるわよ?」
「やだ!あたしお兄ちゃんがいいのっ!」
「ははは……彼方はモテモテだな」
「あは……あははは……。ま……まあ、僕でよければいつでも教えてあげるよ」
「ホントっ!?やったーっ!!」
「ちょ……っ!由奈ちゃん……っ!?」
僕が苦笑しながらも由奈ちゃんのお願いを聞き入れると、彼女はさらに笑顔で抱きついてくる!
当然、胸が僕の背中に押し付けられるわけで……。
僕は理性をフル動員してその感触に耐えていた。
「由奈っ!いい加減にしなさいっ! 彼方が困ってるでしょっ!?」
「えぇ~?お姉ちゃん嫉妬してるの~?」
「んな……!し、嫉妬なんてしてないわよ……!」
「じゃあいいじゃん。それにお兄ちゃん困ってないよね?」
「え……? えっと……」
由奈ちゃんの言葉に、僕は言葉に詰まり視線を泳がせた。
困ると言えば困る……困っていないと言えば困っていない……。
むしろ役得……。
「でも由奈ちゃん、お行儀が悪いのは確かよ」
「はぁ~い……」
真奈美さんに指摘され、由奈ちゃんは渋々僕から離れる。
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