始まる二人の共同作業
「ただいま~」
僕は家へと帰ると、返事はなかった。
父さんは仕事、真奈美さんも仕事なのかもしれない。
由奈ちゃんは家へ帰ると、すぐに二階の自室へ籠もってしまった……。
まあ、ついさっき怖い目に遭ったばかりだし、無理もないかもしれない。
「さて……と、まずは洗濯物を取り込むかな……」
僕はリビングへリュックを置くと、真奈美さんが庭に干してくれている洗濯物を取り込むため外へ出た。
すると、今まで僕と父さんの洗濯物しかなかった物干し竿の前に立つと、目についたのは見慣れない女性物の衣類……特に下着が目に入り、僕は思わず目を逸らして顔を赤くしてしまう……。
(と……とりあえず出来るだけ見ないようにしよう……)
僕は女性物の下着から目を逸らしながら洗濯物を取り込む。
畳むのは僕と父さんのだけにして、あとは触らない方がいいかもしれない……。
そう思いながら、ひとまず畳むのは後にして夕飯の支度をするためキッチンへ向かった。
「さてと……何にしようかな……」
僕は冷蔵庫の中を見ながら献立を考える……。
「ただいま」
夕飯を考えていると、玄関から亜希の声が聞こえ、続いてリビングへ向かう足音が響く。
「亜希、おかえり」
「彼方、帰ってたのね。由奈は……? 靴が玄関にあったけど……」
「由奈ちゃんは自分の部屋にいるよ」
僕は亜希を心配させないため、由奈ちゃんが帰り道で男たちに絡まれたことは伏せることにした。
「そう……。ところで洗濯物取り込んだの彼方よね……? もしかして……下着見た……?」
「み……見てないよ……!」
亜希がジロッと睨むと、僕は慌てて否定する。
正確には少しは見えたけど、出来るだけ見ないようにして取り込んだし……。
「……そう。分かってると思うけど、私たちの洗濯物は触らないでよ?」
「わ……分かってるよ……!」
「ならいいわ……。ところで彼方は何してるの……?」
「今から夕飯の支度をしようと思って……。亜希は夕飯何が食べたい? それとも練習ついでに一緒に作る?」
「……い……いいわよ」
僕の提案に、亜希はなぜか顔を少し赤くしながらキッチンへやって来た。
さて……亜希と料理を作るのはいいけど、何を作ろうか……?
「亜希って料理は苦手なんだっけ……?」
「そ……そうよ……!悪い……っ!?」
僕の問いに亜希は恥ずかしそうに顔を赤くし、ジロッと睨んでくる。
「そんなに睨まなくても……。ただ、教えるにしても亜希がどれくらい料理できるのか知っておかないと……」
「そ……そうよね……ごめん……。でも、本当に料理はしたことないから全然分からないの……。小学校や中学校の家庭科も苦手だったし、調理実習なんてお皿を出したり洗ったりしかしてなかったわ……包丁なんて握ったこともないの……」
「なるほど……」
僕は亜希の言葉を聞きながら、どういうメニューがいいかを考える。
料理をしたことがないなら、難しい料理は避けた方がいい。
煮物は難しいし……。
なら焼くのはどうだろう……?
焼いたり炒めたりするなら簡単かな……?
でも冷蔵庫に丁度いい食材あったかな……?
「う~ん……」
「あ……あの……教えるのが難しいのなら無理にしてくれなくてもいいから……」
僕が冷蔵庫の食材について悩んでいると、亜希はそれを“教えるのが難しい”と受け取ってしまったのか、少し淋しげな表情をしていた。
あ……いけない……亜希に変な誤解をさせちゃった……。
「ああ……違うんだよ。冷蔵庫の中の食材がどんなのがあったか思い返してただけだよ」
「そうなの……?」
「そうだよ。だから亜希が思ってることじゃないから安心して」
「分かった……」
僕の言葉に安心したのか、亜希の表情は少し柔らかくなった。
と、その時、一つのメニューを思いつく。
「そうだ! 炒飯なんてどうかな?」
「え……?炒飯……?」
「うん、これなら作るのも簡単だし、料理の練習にどうかなって思って」
「うん……彼方に任せるわ」
僕は冷蔵庫から卵とネギを取り出し、さらに玉ねぎを出して炊飯器の中のご飯の量を確認する。
うん、これだけあれば十分かな……?
僕は材料を確認すると、亜希と共に夕飯の支度を始めた。
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