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戒:R  作者: T
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9/12

3章 The wolf howlsⅤ

手指がふやけきった頃、僕はそっと湯船から上がり髪や体を洗うことにした。僕の髪はもう3日も洗ってないからか、汗とかフケがまとわりついて、ガサガサして非常に洗いづらかった。いっそ坊主にしとけりゃ良かったなあ、なんて思ったりした。髪を洗うのとは違い、ベトベトしていた体を洗い流す行為は非常に快感を覚えた。ただ湯船につかるだけでは解決できない足指の間や脇の間のくっさい臭いをシャンプーで洗い流す行為。格別である。総合的には満足出来た。かなー。と思う。

ただ僕は後2人ほど待機している人がいることを考慮した結果、再度湯船に浸かることはせず、そそくさと風呂場から出た。タオルでさっと自分の身体を雑に拭き終わった後、自分の寝巻きを取りに行こうと全裸で階段を登っていた道中、僕はツクモに出くわした。彼女は引きながら、否、ドン引きながら

「お前、全裸はまずいだろ...」

と言う。しかし、ちょっと前、スネイカーと会話していた時には何不自由なく会話できていた。今更そんな事を言われても、困りものなのだ。

|そんなまずいかな...|

|分からん。ただし俺はちゃんと履いてから出る。|

|スネイカーは大丈夫そうだったよ。|

|他人を比較するな。私情を出さんでどう意見する?|

|確かに。|

ということなので、

「そうか?」

と挑発気味に、食い気味に聞き返した。僕は思ったことを言っただけなのだ。同じ種族なのに、普通ではない者たちなのに、世間体を今更気にしてどうする?という僕の意見は整合性がある程度取れている。と思いたい私情を僕はぶつけた。それがかなり癪だったのだろう。彼女はむっとして、僕を見る。というか睨みつける。僕が両手を挙げ敵意はないことを示す。僕の最大限の誠意に納得したと思われる彼女は、上目遣いで、どこぞの方言風に

「お前社会に出たらどうすんだ?新人類は大体同じ体系だけんど、旧人類には女と男2種類の性別があって、裸でおるってことは、社会全体として気持ち悪い人の位置づけがされる悪いことなんだぞ?ええな?」

と言い返した。さっきも何かなまった言い方だな、と感じていたが、今の話し方で全てを察した。勝手に推理するに、彼女が今見ているドラマもしくはアニメの中に、地方出身の不自然になまっているオタク受けを意識した、主人公のライバル的ポジションのやつがいて、彼女は見ているうちに、そいつにまんまと感化されたということである。(言っておくがこれは我ながら非常に理論的な解釈と言えるだろう。断じて僕の誇大妄想ではない)

話が脱線したがこんなやつに、ある程度根拠だった反論をされ、なおかつ、「すまない。僕が悪かった」などと自分の非を認めるというのはゼイデンの名が廃ると思ったので、僕は

「まあ、別にいいじゃん。ここにはゼイデンしかいないんだし。」

と、単純なガキに対し大人の対応というものを見せつけたのだった。(なお敬語ではなく勇気のタメ口&上から目線な物言いというのがポイント高い)

「へえ。ボクに歯向かおうなど良い度胸してんじゃん。」

「残念ながらお前と違って大人なんだよ。」

と吐き捨てる。それで僕は充足したのだが、彼女にとって僕の態度というのは、うざったらしいことこの上ないそうで、爪を噛むなどといささか不満げなを様相を呈していた。

その時の僕は自分の勝利を噛みしめた。ニタニタした顔をあえてツクモに見せながら、階段をどこぞの王族のように悠々と登った。ここで初めて自分より知能が劣る者を煽る楽しさを憶えてしまった。これだから人間は醜い。と冷笑する。バイバイ。ツクモ。僕は君が未到達の領域に入ってしまったようだ。

・・・

どこぞの故人が言ったように人間万事塞翁が馬である。何かしでかしたら、いつかは報いが来るものなのだ。ただ、残念なことにその報いを受けるのが想像の数倍早かった。彼女は僕とすれ違った瞬間、僕の傲慢な態度に我慢ならなかったのか、左手を鋭利なナイフに変化させ僕を急襲した。一応、人間誰しも持っている反射神経により、ナイフによって手が切られるなんてことは無かったものの、僕の身体はバランスを崩し、ドシーンと尻もちをついた。

彼女は持ち前の戦闘力からか、この一瞬の隙も見逃さず僕の頭をボールのように蹴った。(回し蹴りなどの技術が伴った蹴りではなく、ヤンキーキックだった)僕は頭から転げ落ち、踊り場の壁に五体を思いっきりぶつけた。しばらく痛みから動けず、その場でうずくまっていた。ツクモはそんな僕を気にも留めずに、ゆっくりと階段を降り、凄腕の死刑執行人のように

「報復完了。」

とカッコつけながらつぶやいた。しかし、この淡々と任務をこなすクール系のキャラは彼女の性に合わなかったらしい。彼女は

「ボクとお前。実力も序列も違うんだよね。大人か子供かなんか関係ないんだよね。それ、最初に教えたことだよねえ?なに立場を逆転しようとか思ってんの??死にたいのかなあ???????????」

といかにも頭の悪そうなセリフともに、けたたましく発狂しながら、自らのナイフを僕の瞳孔に近づけて、後数ミリのところで寸止めした。頭を少しでも動かしさえすれば当たる距離である。彼女のナイフはピクリとも動かず静止した状態だったが、彼女の息は犬のように荒く、普段の存在しているかすらわからない程度の理性が完全に消失しているということが明らかだった。最初は怖気付いて足をプルプル動かしながら、壁にピッタリと張り付いていた。

ただ虚ろな目をしながら静止していた僕は、彼女が自身の理性を失い暴走状態であるのにもかかわらず、寸止めはできるという並外れた技量を眼前にし、彼女に殺されることが自分の本望のように静かに笑うことしか選択肢がなかった。

「なんで笑ってんのさ?今君はピンチなんだよ??今、ボクを煽ったってだけで殺されそうだんだよ???」

と困惑気味のツクモは嗚咽をこぼしながら言う。彼女の右手の甲には毛細血管がくっきりと浮き出ていた。

僕はさっきからの彼女の発言に違和感を憶える。なぜ彼女が僕を殺さないのか。だ。確かに煽っただけで人を殺めるってのは無粋かもしれない。でもそれは悪魔で普通の人ならばという話だ。能力者なら、ゼイデンならばむしろ殺すことが正義なのだ。

なぜだろう。僕は知らず知らずのうちに、彼女の腫瘍に触れてしまった気がする。なぜ彼女は僕を手にかけないのか。いや、かければいいはずだ。どうせ僕はまな板の鯉にすぎない。切るなり潰すなり好きなようにやってくれて良いはずだ。それをしないってのが妙に引っかかてしまう。なぜだ...どうしてだ...考えろ...僕は今日の会話の軌跡を辿る。必死に自問自答する。だが見たい記憶は忘却された。過去の物となった。史料もない。もう誰が何を言っていたかは思い出せない。何かが「変」なのだ。

....................子供...................大人....................



一つだけすでにこの状況を逆転できる、すなわち優勢になることの確証を得た。きっと3回も崖っぷちの状態に立たされた僕だから分かる。いや、僕だけにしか分からない。これまで隠されていた彼女の素性を捉えたはずなのだ。(厳密にはフィーリングである。根拠がないだけの直感だがそれが真実であると信じて疑うことはしなかった)僕はシニカルに笑いながらこう言い放つ。

「俺が殺されそうだ?なあツクモ、どうせ僕のこと殺せないだろ?というか、お前人殺したこと無いもんな!いつだって半人前なんだよな!」

それは銀の弾丸のように、彼女が抱えている腫瘍を貫いた。今まで見たことがないくらい体がプルプルと震えて、ナイフになっていた左手もいつの間にか元通りになっている。彼女は右手で手すりを持ちながら、その場から立ち上がった。ショックで感情は虚ろなようだ。僕の一言で彼女は自信、尊厳、威厳、在り方、何もかもを一瞬失ったのだ。そんな彼女を救おうともけなそうともせず僕はただ見守っていた。

・・・

時間は彼女は言葉を取り戻させ、

「今までのことは忘れて。次はないから。」

と遺言のように言葉を残した。そしてすぐにその場から脱する。居てはいけないようがして、一人になりたくて、静かに階段を降りていく。それに関しては一切の感情を示さず、いい加減服を着ようと思いながら、階段を上がっていった。

・・・

|なあ。水を差すようで申し訳ないんだが。|

|おお、小瓶か。さっきは黙っといてくれてありがとう。|

|いや、第三者がとやかく言う場面じゃねえだろ。というか、俺にとっては至極どうでもいいんだが、今、あの死体人形、下に降りたら不味くね。ほら、バギー。|

|おっ。そうだな......|

さっきはさっき。これはこれである。さっきの騒動は無事終わりを迎えることが出来たが、今度はそうもいかない。スネイカーはやけ酒に溺れ、絶賛炎上中である。今のツクモにとって説教とは耐え難い苦痛なのだ。せめて時間がこのツクモを治癒するまでは、一人にした方が懸命だ。少なくとも現状を知っておいた方が良い。

僕は踊り場にさいど向かい、階段を飛び降りた。幸いツクモは廊下で立ち止まっていた。スネイカーにバレないように、僕は静かな声で言った。(後付だが、昼同様、スネイカーに僕の取ろうとしている行動がバレている可能性が高い。)

「ツクモ様、あのですね。」

彼女は明かりを消して、黒くなった壁を見つめている。こちらを振り返ると自分以外の”これ”の存在に築いた。さっきの出来事を飲み込もうとしている最中に、”これ”が介入してきたことしたことに対して苛立ちを覚えていた。苛立っているだけマシである。感情を取り戻しつつあるのだ。僕はほっと胸をなでおろす。彼女は僕が心配していたことに理解しつつも、これまで通りの関係を取り戻そうと、いつものように、無愛想に、

「何?」

応えた。僕はちょっとにやけてしまう。そうだ僕たちは最も浅くて濃密な1時間を過ごしたのだ。端的に、薄情に言うと1時間無駄にした。この章は長い長い茶番劇の終盤も終盤。エピローグに入りかけた所なのだ。しかし、ここまで内容を要約すると原点回帰。結果傷つけ合って、変わったことはなにもない。劇としては非常につまんない物となってしまった。フィルムはあと少しだ。一応の完結を目指すためには、巻いていく必要がある。

「スネイカーにバギー壊したのバレたのだけど?」

と言った。終わりも終わりこれにて簡潔である。カメラはツクモはそうかぁ〜というなんとも言えない表情

を映しながら、ゆっくりとフェードアウトする。そしてエンドロールに入っていく。

|これにて第一話の簡潔。|

|かなりの大長編だな。|

|多分1時間尺になるから大丈夫。|

無問題だ。ツクモは自分自身で納得し

「あっそう。へぇ〜。」

という。自我を取り戻したのだ。だから、リビングとは逆方向の風呂場へ向かっていった。

・・・

それからというもの、今日人の顔を見ることはしなかった。僕は彼女の人間らしさに触れ、彼女の存在を愛らしいと思ったり。もうすっかり湯冷めしきった体で、僕は自分の部屋に戻る。もう風呂の恩恵はすっかり消失していた。

さっさと寝巻きに着替えた後、机に座りながら息をついた。毎回一日の終わりが近づいてくると、今日が人生で一番長い日だったかもしれないと思うのだ。そして、そう思ったことが今日頑張った証だと思い聞かせることにしているのだ。僕はもう一度深く息をつき、昨日と同じ体勢で手記を取った。

さて、僕の過去の続きを語らねば。早く過去のしがらみを取り除かねばならない。

|そんなに焦ることはないんじゃねえか?|

|いや、僕の回顧録は君と違って短いんだ。だから、逆に貴重でもある。どっちにしろ、今は忘れてはならないものなんだよ。|


だいぶ遅れてしまって申し訳ありません。僕の続編を期待している人はそうそういないことでしょうが、謝らせてください。ちょっと学校が始まって、バタバタしていました。この時期って環境が一気に変わってしまって妙に疲れるんですよね。教室でシンジ君みたいに、平静を保とうとイヤホンで音楽を聞いてる頻度を前より多くなったなあ、とも思いますし。よく、家でLINKIN PARK、通学中とかでradioheadやamazarashiを聞いています。

そういえば、前の話とは本気で1mmも関係ないんですけどLINKIN PARKのベスト盤papercutsがついに出ました。彼らの活動全てを包括した良い作品なんですが、後期の物が少し少なかったようにも感じます。星4.2と言ったところですかね。次から、空白なのはさみしいし、SNSをLINE以外の物を何もやっていない事を考えると、後書きで趣味解説でもやろうかなとも思ったりします。(理論・技術に関しては1mmも語りませんが)


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