2章 raise a flag
僕から見た小瓶は、当たり前と言われたらそれまでだが、表情はなく、机にただ置かれているだけの無機質的ななにかに過ぎなかった。小瓶がさも当然かのように話していて、しかも僕にブチギレるようなことは普通ではありえないのだ。そもそも物を存在を消したモノがいることなど「キンキ」であろう。この世にいないやつが、僕が初めて存在を奪うという覚悟のもと、実態を消したやつが...ありえない。でも一番ありえないのは、彼の存在を許容しつつある自分だ。
僕は完全に狂っていた。いま自分がいるこの場、この空間がさっぱり分からなかった。戸惑った僕は必死の形相でスネイカーにこう言った。
「スネイカー。これは何?どういうこと。僕の戒の使い過ぎにより生まれた副産物?それとも僕がウイルス性の精神病にでもかかって、僕にしか見えてないモノ?ああ。もしかして帝国の仕業か。どちらにせよ。真実を知っているんでしょう?別に今の僕があなたが愚の骨頂と表現した、真実/本質を追い求めている野郎と同じと思われても、僕は分かるまで、納得するまであなたに尋ねます。口をつぐんでいないで、ちゃんと答えてください。答えて……僕、今にも気が狂いそうです。これに耐えられる気がしない。やだ。これを知覚したくない。これは在ってはならない。彼は世界とは相反する存在になってます。そういう運命です。別にあなたが関わっているとか、この際どうでもいい。早くこいつを抹消して…」
私を見て、スネイカ−は笑っていた。言葉を発せずに、僕の問いかけに対し、ニンマリとした笑顔を見せているだけだった。それは、僕が今まで見たことのない顔で、普段、冷静沈着を貫いているスネイカー像とは、相反するような無垢な笑顔だった。きっとコーヒーに入っているHHCPが聞きすぎたのだろう。そう考えていたが、彼はゆっくり口を開いて
「お前らは良い関係になりそうだ。」
とこの不可解な状況を俯瞰しながら言った。小瓶と僕のそれぞれの発言から分かる通り、僕たちの関係はズッ友というより犬猿の仲に近しいものだった。だからスネイカーが発言何を指しているのか、全くと言っていいほどわからず、考えても意味不明なままだった。ただただ小瓶を睨むくらいしかなかった僕と、何故かにこやかな笑顔でゆっくりコーヒーを飲んでいるスネイカーの奇妙な膠着状態が続いた。
スネイカーはこの状況がつまんなかったのか、それともこれ以上部屋が煙くなるのを避けるためか(この短時間で、もう4本目に入ろうとしていた)わからないが、残りのコーヒーをぐびっと飲み干して、自分が吸うための葉巻を2,3本持って、
「ちょっくら外で吸ってくる。」
と席を立ち上がって言った。リビングのドアノブに手をかけて、
「ほんなら帝国のヘビ。なるはやで頼む」と言いながら部屋を後にした。
そこから10分少々何もない時間が過ぎてった。こうなってしまった理由は2つあって、1つは話を切り出せばよいのかこと。もう一つは互いに発する言葉。一言一句全て互いの勘に触れるということだ。だから、この膠着状態を打破せねばと思いつつ、どうやって会話を始めればよいのか互いの探り合いが続いているといった感じだ。互いが互いの存在を確認したかったが、それぞれ、持っているトラウマやヘイトがくっきり刻まれた互いの魂はそれを頑なに拒んだ。我慢比べみたいだった。
この空気に嫌気が差したのだろうか。なんかせねばという焦りだろうか。本意は定かではないが、口火を切ったのは小瓶のほうだった。
「お前。何。名前は。」
ぶっきらぼうで、平坦に、淡々と小瓶は僕に名前を聞いた。自分の実態を奪った僕に対して、それからここに喚びよせたスネイカーに対しての毒を必死に抑えた結果のように思う。この状況で彼はさっきのスネイカーのように、僕に対してフランクに話しかけることはしなかった。貴族階級に属していた彼は、人との距離の作り方は僕やスネイカーより長けていると感じた。
彼が話しかけてくれたことで、この状態から開放されるという若干の嬉しさがあった。しかし、そもそも彼の兵士に染まりきったような性格が嫌いなこと、一昨日、人生経験が全くない僕に容赦ない攻撃や罵倒を浴びせ続け、トラウマを植え付けたことは、やはり許しがたく、彼に対しての敵対心むき出しな姿勢は、依然として変わらなかった。
「お前って。誰のこと言ってんだ」
小瓶と同じように自分を殺し、相手と距離を置くような話し方をしてみたかったが、悔しいかな。彼に対する敵対心が全面に出ていた。
「そこのゼイデンのガキ」
|ゼイデンのガキは、希少ですが世に何百といます。いったい誰のことを指しているのでしょうか。せっかく初めて会った時に名乗ったのに。もしかして帝国の、貴族階級なのに忘れてしまったんですか?あの帝国でも"生き恥"なんですね。|なんて煽ろうかと思ったが、彼の火に油を注ぐ行為は、この会話自体を平行線たらしめる気がするので、大人しく彼の質問に答えることにした。
「モーン」
正直、彼に名乗りたくはなかった。この「モーン」という名前は旧人類のように、母が子に与える名というわけではなく、昨日たまたま僕が、mournという言葉に感銘を受けて、自分の名にした。という経緯がある。だから、僕の名前というのは、仮名と同じくらい名前としての効力が薄い。どちらかというと僕の名というのは僕自身の理想像に近しいモノである。小瓶はなにかひらめいたようであり、さっきより、半音高い声で、
「ヒャハハハ。こいつがこの戒を持ってして、他人を悼むようなことは天地がひっくり返ってもないぜ。」
と笑いながら言った。僕からしたら痛いところを突かれたという感じだ。帝国の人間兵器に一通りの教養が備わっているということに酷く驚いたし、自分の性格や戒が自分の理想像とはかけ離れていることを指摘され、耳が痛かった。スネイカーが違法ルートで持ち出したデタウムにより、奇跡的に世のありとあらゆる教養を瞬時に得た僕が、先入観と自分の勘だけで実態のないことを話しているのは、人間としてまずいことをやっている気がする。
今も先入観だけで人を判断した結果、これまでジスク卿のことを帝国が戦線維持のためだけに養育した、人工でできた人間兵器だと思っていた。まさか彼のような存在がmournという別大陸の言語を知っているとは思ってもいなかったのだ。僕はこれまでの彼との間違えたことを悔やんだ。|なぜ僕がこれまで彼のことを同等の知能を持ったモノとして彼を捉えてしまったのか|
特に困るのは、彼の罵倒に対する返しである。稚拙な言葉を使う人だと思われたくなかった。しかし、考える脳がなかったからか、全く考えることもせず、感情に任せて
「うるせえ。クソミュータントが。」
とこぼしてしまった。クソ・バカなど誰でも使える幼稚な罵倒に逃げた僕の負けである。少し言い訳をするなら、そもそも表情が無いモノと会話を交わす中で、平常運転でいることがかなり難しいとだけは言える。だが、それでも自分の沸点を抑制できない自分自身が一番の敗因である。
色々なことも相まって、自分自身のことがこの世で何よりもキライなモノになってしまった。気分はどん底だ。小瓶は勝ちを確信した小瓶は静かに黙っているだけだった。
・・・
本当に一人になってしまった僕は、自分がすがれるものや頼りたいもの、信頼できるものが少なくなっていったために、とにかく知り合いを求めた。どんなに僕に罵倒したり、反骨的な態度であっても良いから、僕の話を聞いてくれて、応答してくれる人が側にいたらと必死に願った。切望した。タバコを外に吸いに行ったっきり、行方不明なスネイカーだったり、きっとドラマの録画を見ているツクモだったりが、ふとここに来ることを熱望した僕は、反射的に、
「スネイカー。あなたが作った状況だろ。責任取ってくれよ!」
だったり、「ツクモ。この状況を壊してくれ。」
などと、ひたすら知人の名を呼び続けた。いや。呼ぶというより泣き叫ぶといった感じだ。とにかく不安になったら喚くといった感じだ。しかし、僕の嘆きに反して、誰一人としてこの部屋に来ることはなかった。小瓶は僕がうるさいことに嫌気が差していたみたいで、
「はぁ。マジでうるせぇ。お前は、本当に経験不足なんだな。というか社会を知らなすぎる。孤独なんて世の中日常茶飯事なんだぞ。少しは黙ってろ。」
と僕に喝を入れた。僕はきょとんとした顔で小瓶を見つめていた。小瓶はゆっくり息を吐いたあと続けて
「そんな能力不足のお前よ。一応30年くらい生き抜いてきた俺が、お前が社会でやり抜くために必要なことについてでも教えてやろうか。」
と小瓶は挑発的に尋ねた。
「余計なお世話だ。」
「お前、前会った時より自我を失いかけてる気がするぞ。」
「それってお前の感想だろ。」
「自我がないからこそ孤独に苦しんでるのでは?」
「うっ…」
「まあいいや。」
と彼は素っ気なく言い、長話を始めた。
「別に聞いても聞かなくても構わん。」
「あっそ。」
僕は小瓶にそっぽを向け、窓から見える砂丘を見つめていた。
「お前に問いたいことが一つある。」
「なんだ?」
「なぜお前は、あの男に尽くせるんだ?」
「命の恩人だからだ。」
「あいつは共和国の技術を"キンキ"を破ってまで高めた男だぞ。」
「人は過ちを犯すものだろ?違うか?特にゼイデンなんかは。」
「じゃあお前は未来永劫、最低なあの医者というレッテルを貼られたやつと共存できるって言ってんだな」
「ああ。少なくともお前よりは過ごしていて楽しい相手だ。」
「ふうん。そこまでして、棚に上げるのか」
「棚に上げているわけではない。慕っているだけだ。」
「俺にはお前が単純バカなのか、まだ無知なだけなのかがよくわからん。」
「どう思われようが興味はない。」
「興味はない、か。その考えはお前が人として生きたいなら改めるべきかもしれないな。」
「人への"恩義"を知らない人間兵器に言われたくはない。」
「あの男に恩義を感じるかどうかという点において、俺はお前を人間として見れない。」
「何が言いたい?」
「お前があいつの犬のようだってことさ。」
「僕は人間だが?」
「メタファーを知らないのか?困ったもんだな。ようは、お前があいつのやったことに対する"恩義"ってものを強く捉えすぎているのではないかってことだ。」
「お前は僕の何を知っている?人に対する価値基準なんて人十人十色だろ」
「それは一理ある。だが、俺にはお前の行動や言動が、教祖を「神」として崇め奉っている、カルトの信者にしか見えないんだ。」
「つまりは、お前は恩人や師匠と呼べる人が全くいない悲しい人生を送ってきたってことだな」
「いや。俺にも恩人はいる。確かに俺はその人達を尊敬しているし、感謝も欠かさず伝えてきた。」
「じゃあ僕は全くもって問題ないはずだ。」
「そうだな。普通に尊敬する分には勝手にしてくれ。で済む話だ。でも、お前は何でもかんでも自分の先入観を第一に考えてしまうという悪癖がある。いいか。人の価値観ってのはアホほど違う。お前があいつに助けられて、恩義を感じるのはいいけど、あいつが善意でお前を助けたなんて何が証拠だ。あいつがお前に『善意で助けたんだよ』なんて言いでもしたか?」
「そんなこと…確かになかった。でも、人を悪意で助けることなんて、冷静に考えてまず無いだろ。」
「でも、100%無いとは言い切れないよな?人生なんて裏切りの連続で成り立っているもの。解決できない対立なんてもはや日常だ。」
「具体例くらい使って話せよ」
「注文が多いやつだ。ほらテレビを付けたら、帝国の南西経8度線でファーザー海賊一団が、サン・ヴィセンテで帝国と攻城戦に関するニュースが連日放送されているだろう。」
「ツクモから聞いた。」
「何で起きたか知っているか?」
「確か、ファーザーが帝国の領土であるソル・ヴィサンテを帝国に不法に占拠されたって身勝手に喚いたからじゃなかったっけ。」
「うん。報道されている分には間違っていない。まあ本当の理由は違う。きっとあいつでさえわからん。これは俺が属していたゴールドハンター界隈でその攻城戦に関する情報が日々漏洩していたから、俺は知っているが。まあ、アガペトの住人は一人も知らないだろう。知りたいか?」
小瓶の話は誰よりもわかりやすく、僕の思想と発言の矛盾点をめった刺しにした。でもデタウムのおかげで初めて対等な議論ができた気がするのだ。(負けてるけど)小瓶はキンキを破った一つであり、僕にとって恐ろしいモノだったが、このように会話しているうちに、小瓶が話しているときの言葉の強弱やため息、相槌などで彼の表情をある程度想像することができる。ということから、話しやすかったかもしれない。最初の頃のあった小瓶に対する敵対心は徐々に薄れ、小瓶と話すのがちょっと楽しくなってしまった。
だが、これからの会話が少し不安でもある。なんせ、僕は攻城戦?の報道を見たことがなく、小瓶の話を、ツクモから聞いたことのみを頼りにして、聞かなければならないというのは中々しんどい。テレビすら、スネイカーが治療のために使ったときしかろくに見ていないというのに…
そんな僕だったが、何よりも僕の知らない情報について小瓶が喋っているというこの構図が、この世の何よりも嫌だったため、
「別に」
吐き捨てるように言った。すると、ジスクは僕の拒絶反応に目もくれず、
「そうか。やっぱり気になるよな。」
と煽りつつ話を続けた、
「どうやら、攻城戦になる前、帝国がファーザーの無人島を知らぬ間に乗っ取っていたかららしい。」
「それって、卑怯な帝国がよくやる領土の奪い方じゃね」
「俺達も最初はそう思った。」
(お前らは帝国の人間なんだから、それに関しては否定しなきゃ駄目だろ)
「だがしかしだ。その島は、別にファーザーの領土と公的に認められたものでは無い。」
「つまり?」
「つまりはだな。ファーザーもその無人島を自分の領土だと思い込んでいたってことだ。」
「それってどっちが悪いとかなくないか?」
「そう。この騒動の本質は双方ーの勘違いで起きたってこと。時事ネタと組み合わせた良い具体例だと思うんだが。どうだ?」
「まあ。いいんじゃね?(訳:『悔しいが付け入る隙のない良い例だ』と言いたいが、自分の立場を保つため反骨的な態度を作っている)」
「お前はこの件についてどう思う?」
「逆に聞きたいが、ファーザーが帝国に勝てると思うのか?」
「まあ、自明といったところかな。話を聞いたときからおおかた予想がついてる。でも、今回はあくまでも攻城戦で、植民地戦争じゃないし、ファーザーには連合国との同盟があるから、帝国も無理に攻め込まないだろ。だから、ファーザーが解体するってことはなさそうだ。暫くしたら、どうせいつもの大洋に戻ってるだろ。」
「ふうん。言いたいことはそれだけか。」
「お前は何をも重要なところはそこじゃない。別にお前の問いに答えるためだけにこの具体例を使っている訳じゃない。お前の見聞を広げるためでもある。」
「それは…なんですか?」
「せっかちな奴だな」
「いいからさっさと話して。」
「この攻城戦はどんなやつが戦っていると思う?」
「多分ゼイデンなんて代物は使わないだろ?一般兵じゃね」「帝国の一般兵ってどんなやつだと思う?後、クイズだからデタウムは使うなよ。面白くなくなる。」
「うーん。お前らと同様のレベルの奴ら2,3人かな?」
「ニアピンってところか。攻城戦ってのは基本的に守る側のほうが有利なんだ。攻める側に、お前らのようなバランスブレイカーがいない限り、補給物資不足とかで大体守る側が勝つ。だから、攻城戦ではなく籠城戦って言われてるだろ。」
「たしか、帝国の砦には高度な結界が貼ってあるよな。」
「そうだ。つまり、ゴールドハンターと同等のレベルに位置するような兵士はファーザー側が1,2人使うかどうかだし、この戦が負け戦だってことに途中で気づいて、すぐ撤退させるだろ。」
「つまりは、新人類の非能力者や旧人類を使いかねないと」
「そう。この勘違いで多くの人員が無駄死にする。死人の数は通常の紛争で出てくる数より多いのは確実と見て間違いないだろう。」
「歯がゆいと言うべきか、もどかしいというべきか。」
「そう感じるのも無理はない。しかしだ。私達はこの戦を第三者目線から語っているから、そのように感じているが、当人達には理詰めするだけでは動じない、確固たる思い込みがある。」
「確かに。当人でありながらも状況を俯瞰してみるってのは正直かなりの高等技術か。」
「だからこの攻城戦は早く終わるのと同時に、どちらかが撤退を決意するまで、旧人類の無駄死にが終わらない。」
「それは、悲しいけど理解できてしまうな。」
「うむ。ここまでのことをできるだけわかりやすく説明したつもりだが、お前さんはわかったか?」
「まあ。」
「今、お前は"人"をどのようなモノだと思っている?」
「神の模造品または神になれなかった絞りカスな。」
「うん。まあ俺は前者に同意見かな。私にとって、人というのは短絡的で、だいたい自己中心的な生物なのだ。」
話を聞き続けてもう15分が立った。小瓶に自分の思考が少しずつ,少しずつ毒されていることに気づいた。偏見で凝り固まっていた互いの魂が徐々に溶け合っている。それと同時に、
「僕のスネイカー像が崩壊し始めている。と思う。」
「良し悪しは判断しかねる。しかし、それこそが成長だ。」
「これで良いのか?」
「ここまで言っておいてアレだが、正直分からん。ただこのマインドが身についてさえいれば、行きやすくはある。俺の人生にかけて保証する。」
「もう僕は、左足を直したスネイカーに対しての恩義というものの僕にとっての重さと比べて、スネイカーが思う僕の重要性は等価交換ではなかったという解釈に縛られて生きていいんだな。」
「みんな同じだよ。我々は損得勘定で生きているんだ。言うなれば毎日がライアーゲームってことだ。」
「そうか…」
「ようやく、お前も他人が人助けという建前をなんのためにやっているのか想像がついてきたろ。」
「道端にいる物乞いや募金団体に金を渡すのと一緒ってことか」
小瓶は頷く代わりに自分の身体を倒し、起き上がった。
「そういえばさ。これまでお前はあいつが自分の左足を治した理由とか、直接聞いたことがあるのか?ここまで言っておいて何だが、その理由をお前にわざわざ直接話してたりしてたら、白の可能性がかなり残ってる」
「ツクモから間接的に「そういえば〜?」みたいに聞いて勝手に納得してた気がする。」
「危なかったな。つまり昨日のお前は、あいつがお前に対してやった全てを理由もないまま、それをありがたいこととして片付け、ただ受け身になっていたってことでOKか。」
「そうかもな。でももしかしたら、議題の全てがお前の勘違いかもしれない。」
「ヒャハハハ。確かに言えてる。」
「なあ、ここまでのお前の話を聞いて思ったことだが、共和国の連中が必ずしも善とは限らんし、帝国が必ずしも悪とは限らないと思うんだ。」
「というのは、何が言いたい?」
「あいつらは、物の善悪なんて知らない。両方ともどもに存るのは、思想と呼ばれし偏見と欲求にまみれた者のエゴがあるだけだ。」
ここまでのジスクの論は、反論も罵倒もできないくらい完璧で、質問する必要がないくらい分かりやすかった。僕は頭がパンクしそうだったが、今日の出来事が自分の糧になるようなことだけは明白であった。ただ彼の自白とも取れるような、メッセージ性の強い意見を私だけに述べていることが不思議だと感じる。小瓶は次のように話し始めた。
「ここからは、話しても一般論とはかけ離れているからあまり参考にならないと思うぞ。だからまあ、何言ってるかわからないようだったら、どうぞ聞き流してくれ。別に気になったら質問してくれ、要求に添えるかどうかについては保証しかねるがな。」
「何で急に」
「いやぁ。今の俺がさ。生かされている身だからさ。人生っていうルートから既に外れてるわけよ。こっからは"本当の"余生っての?体は無いわけだしさ。だから、もう俺は誰に対しても自分の真意を伝えられる、言いたいことを言うぜ。」
「人を捨てたか。」
「いや。捨てたわけじゃない。「神」になったんだ。」
「痛いか?」
「もう痛くない。慣れた。」
「んで、本日は何を御告げに?」
「それいいな。うむ。気に入った。今度から召喚口上はこれで行こう。」
「本当にこれで良いのか?」
「お前が良ければ。まあ、冗談はこれくらいにして、本日の神託といこう。」
「はい。」
「お前は「あいつ」のような飽くなき理想を追い求める天才を目指してはいけない。」
「いや。まず目指せないでしょう。」
「ああ。違う違う。目指すじゃない。ついて行くなということだ。ん~と。あいつのような天才は「自由」というものの捉え方が俺たちとは違う。天才たちは、「自由」というものを自分たちで作ったり、壊したりすることが出来る。その結果、彼らの改革に溺れた亡霊はかなりの母数がある。」
「僕が亡霊になる可能性が高いと言いたいのか?」
「いや...直にそうなるとは思うが。今のところは大丈夫だ。天才が何らかの改革・運動をした時にことは発生する。きっとあいつも自覚していると思うが...亡霊ができる範囲内で作ったものが、一握りの天才によって跡形もなく消される。」
「つまり、一新するっていうのは善ではなく、悪寄りだと言いたいんですか。」
「うんーと。半分正解で半分間違いかな。改まるってことはさ。規則を変えるってことなんだよね。だからこれまでの善悪の基準が消失する。」
「新しい秩序を作れると。天才=神ってことですか」
「うーん...というか。天才は幼い頃に神童と呼ばれたりするだろ。神の子(god kid)だったり。今神になって実感したけどさ。神の子ってのは神よりもたちが悪いんだよね」
「なんでだ。普通神の子と聞いたら神になりきれていない存在に思えるだろ。」
「だからだよ。神というものの廉価版の癖に、神としての規則に縛られない。実体があるのにもかかわらず人の依代となってしまう。」
「いや。人は断じて神の廉価版ではないと思う。誰しもが創造性を持ち、誰しもに自由を与えられた神とは似て非なるものだ。」
「じゃあそいつ等が力を持ち出したらどうなるんだ。ある者は自分の立場を維持したいがために虚言癖が備わり、ある者は、耐え難いストレスから詐欺に手を染めたり、ある者は薬厨になったり。ある者は元からおかしかったり。なのにも関わらず、大衆は人を都合の良いところだけでしか見れないから、俺達は腐っていない国を知らない。だろ。」
「正直、僕がまだ2日しかこの世界にいないから、国が腐っているとはどういうことかわからない。今まで僕が見てきた人達は欠陥はあったかもしれないけど、腐敗しているとは感じなかった。まだ僕は経験が浅すぎるから、自分で感じたもの/見たものが少ない。だから君の意見に納得ができない。」
「もう昔のことだったから覚えていないが、俺もガキの頃はお前のように思っていたのかもしれん。すまん。ちょっと話が難しすぎたな。」
「神が人に謝る必要は内と思うけど。」
「そうか。それもそうだな。」
「それに、帝国とか共和国とかは話を聞く限りは、腐ってるとも思うし。」
「わりと、俺を信頼してくれてるではありませんか。」
「早く話を進めて。」
「せっかちなやつだな。もうちょっと気楽に行こうぜ。」
「いいから。」
「まあここまでのまとめとして、天才たちは自由を作る。それは一時的に革命/好影響を及ぼすかもしれないが、多くの場合は腐敗する」
「人間ってのは自由に生きる。つまりは天才についていく以外にも、凡人についていく奴隷という生き方がある。」
「人間性の否定だと思っているけど?」
「否定というより、裏返しと言った方が良いな。」
「なんで?」
「奴隷という言葉の解釈の違いってやつだ。結構勘違いしている人が多いのだが、奴隷とは人間としての名誉や権利、そして自由を剥奪した/された人を表す。」
「つまり人間性の否定ということじゃん」
「いや。違う。もし人間性というのを常に求めていたら、人ってのは自殺する覚悟で反発するはずだ。だから昔の磔刑で、ある受刑者じゃ数日間生き延びたというデータがある。それは、生きて何かを残すという思念を持っているから、必死に抗おうとする。君はそうだった。捕獲したから分かることだが、WODになったやつは自ら進んで奴隷になっていた。」
「それはお前らが卑怯だったからではなく。」
「いや。君が私の存在を無くせたように、人は自分が窮地に立たされた時、取る行動は2択だ。抗うか、従うかだ。」
「抗わないやつなんているんですか。」
「ああ。最初はみんな抗うもんだ。まだ希望というものが残っているからな。しかし、お前みたいな確固たる信念が魂に刻まれていない限り、大抵の人間は自由に生きることを諦めてしまう。」
「僕には理解できないかもしれない。」
「そうだな。お前とかあいつみたいな才があるやつにはわからない。でも、俺等みたいな凡才にとって人の下につく奴隷ってのは悪くないことだ。目的を遂行するだけで、生きるための最低限の物が提供される。立場的には意志も糞もなかったが、自分の姿を批判されることもない。人間性を否定されるってことは気持ちの良いことではないが、奴隷が染み付いてきたら憤りすら感じなくなってくる。」
「本当に人は奴隷が適応してしまうのか?僕だったら恐怖しか感じない。」
「じゃあ、なんでさっきは自由が与えられていたのにもかかわらず、知り合いに助けを求めたんだ?なんで発狂したんだ?」
僕はだんまりを決め込んだ。孤独だったから...寂しかったから...なんて言える気がしない。
「確か...独りで焦燥感に駆られたんだっけか。」
・・・
「そう自由とは同時に孤独を背負う。新時代を作るなんて大それたことを世間は言うもんだが、先駆者には与えられたレールが存在しない。列車を走らせるためにはレールを作るしか無いんだ。そう考えると、奴隷ってのは楽だよなあ。自分の感情を殺すだけで飯と友が手に入る。」
「確かに、僕達は人生でこの2つが在りさえすれば生きていられる。それは”良く”分かった。しかし、そんなの...楽しくないだろ?」
「人生なんてそんな輝かしいものではない。大人になればなるにつれて毒されていくから大丈夫だ。」
「お前は本当に自由が嫌いなんだな。」
「まあな。奴隷を見すぎたことで、奴隷の考えに染まりきってるだけかもしれないけどな。」
「君ってそんなに仕事できるやつだったっけ?」
「ヒャハハハ。朝だから頭が冴えてるな。そう。これは冗談だ。俺はただ自由に怖気づいているだけなんだ。最もらしいデータと理由を言ってな。俺も元々は自由というのに希望を持ってたんだろうな。」
「僕もいずれそうなる?」
「可能性は高い。でもお前にはわずかながらに才があるから。もしかしたらお前は、希望の求道者として無意識に、魂で周りに希望を与える存在になるかもしれない。それに少し期待してる。」
「自由が嫌いじゃないのか。今の君の発言は矛盾に値するぞ。」
「嫌いなのは、先導者になれるわけがないのに、自由を作れると思っているやつ。そいつ等は、まあそいつ等なりに考えているとは思うんだが、さっき言ったみたいに、一度歯車が抜けたり合わなくなったりすると全てを失う。「全てを」だ。あまりにリスキーすぎる。もしお前がそいつらように軽々しく自由を見ていたら、俺は自害する覚悟で止めるはずだ。」
「お前は俺に何を期待する?」
「要望が多くて済まない。1つ目に一度自由を作るのに失敗した時、あいつの暴走を止めること。もう一つはこの腐った世界に本当の革命を見せること」
発言の内容に関してひどく納得出来るものだった。胸は高鳴り、生気に満ちていた。小瓶の発言は、最初に会ったときにされた説教と違い、小瓶が心の底で抱えていた情動による熱で満ちていた。どうやら、この世界は希望と絶望と活気と鬱屈に溢れており、僕が思っている以上にずっと壮大で窮屈なようだ。
彼は、罵倒と解説を組み合わせて演説をすることが思ったより得意らしかった。スネイカーや僕のようなゼイデンのこと、この社会を取り込む黒いシステムについて。彼の話は決して正しい訳では無い。しかし、人一人の心を揺るがすには十分なものだった。
彼は今ここで神になったことを告白した。もう彼は人間ではない、だから初めて”本音”が言える。僕は、彼の中で鬱屈として溜まっていた有象無象の一部分に触れた。ひょっとすると、キンキを破った存在と語っている僕が一番のキンキかもしれない。
「お前が言いたいことは。よくわかった。」
「そうか。それはありがたい。ところでお前と俺の関係はどう名付けるんだ?信者第一号とかどうだ。良かったな。今だったら教祖ポジが狙えるぞ。」
「いや違う。僕は君に100%付き従うことはないよ。君は僕の眷属神だ。姿形が小瓶だし。」
「なるほど。眷属神か。ダブルミーニングで良いな。」
「それから謝罪。僕はまだこの世界に存在して日が浅いのに、知ったような口を聞いたのは申し訳なかった。薬の効力を良い方向に捉えすぎていた。」
「そうか。まあ実際デタウムで狂った人間をその目で確認するのが手っ取り早いけどな。後、初めてあった時、先入観だけでお前を他のゼイデンと同等に捉えようとしたことは済まない。未発達のゼイデンにトラウマを植え付けてしまったからな。それが今後足かせになってしまうだろうし、そこは謝る。」
「よし。これで関係は定義されたな。後はあいつとどう関わるかだ。」
「スネイカーのことか。」
「改めて聞くが、お前はあいつのこれまでについてどれくらい知っている?」
「スネイカーはお前と敵対関係にあった共和国の科学者の一人だった。彼はゼイデンであり兵器を作ることに能力が丈ていた。ある時、死体を兵器として再利用する(ゾンビ化させる)という技術を彼は作った。共和国はこれ略奪し、第一次ソルルナ戦争が長期化した。死体を使った兵器は、一度死んだら人は亡くなってしまう。という世界の常識がひっくり返した。それに責任を感じたスネイカーは失踪。という感じかな。」
「あいつが与えた影響はこれだけじゃないぜ。それに対抗するため帝国は、自国内のゼイデンを軍事利用。いや利用というより乱用か。そして、資材をかき集めるため周辺の国との抗争は激化した。死体兵器の確立から、侵攻は一度もやめたことがない。そしてなにより、俺達ゴールドハンターはゼイデンが足りなくなったからできた役職だ。同時期に選りすぐりのゼイデンを集めたWODもできたっけなあ。」「だからこそスネイカーは帝国でも共和国でもないこの砂漠へ逃げてきた。と。」
「そういう事だ。このアガプトという国は地形上、国家から逃げるのにちょうどよくてだな。なんと共和国に隣接していて逃げるのに手っ取り早いのと、軍が強いのでデモが起こりづらいという利点があるな。知ってる限りでも、キャピタル7でなんかやらかした役人や科学者、軍の大将たちが無数にいる。」
「こうしてみると、みんな共犯だ。」
「どういうことだ」
「お前もスネイカーも政府も軍の大将も人ってのは在るだけで、争いを起こすのに、知能を持ち合わせた悲しき生き物なんだから。」
「じゃあお前が最初に脱獄するべきだ。」
・・・
「ねえ。ところでスネイカーは僕を使って何をしたいのだと思う?」
「さあ。わからん。あいつの思考はブラックボックスだ。でも、ちょっと気になる点はある。」
「なにそれ。」
「ゴールドハンターがゼイデンを捕獲するときは、基本的に帝国本部と支部の部長が3日くらい協議して決めるんだよ、ほら俺の隣りにいたコカっていう名前のやつがいただろう。あれが部長だ。」
「ああ。あの無口な。」
「そう。だが年Ⅰ位の確率で緊急捕獲命令ってのが出される。」
「それってどういうの?」
「いわゆる、協議の必要なし。即捕獲ってやつ。」
「なんか。怖いな。」
「たぶん、お前の能力が強かっただけかと思うが...もしかしたら何かしらの秘密があるかもしれん。詳しくはわからんよ。」
「そうか。」
「じゃあそれともう一つ。あの黒い邪眼はなんだ?僕と初めて相対した時、君とコカ(?)が使ったやつ。」
「ああ。黒い目か。始めに行っておくとメカニズムはさっぱりわからん。ただ対象に潜んでいる憎悪や憎しみのエネルギーを利用して物理的に拘束する器具らしい。ゴールドハンターだけじゃなく、兵士全員に手術が義務付けられている。」
「なるほど。チートか。」
「まあな。増強剤というべきかな。ゴミみたいな能力の奴らが対抗する術みたいなもんだ。」
「ふうん」
・・・
「なあ。1つ試したいことがあるんだが協力してもらえるか?」
「内容による。」
「ここまでの長々とした話から、今回の主犯格は分かった。おそらく、彼は何らかを使って僕がこれに気づいたことも知っている。」
「まあ。そうだな。」
「君は僕になにかするべきことがあるんじゃないか。」
「まあな。でもまだそれをする心の準備ができてない。儀式みたいなもんだ。場の設定が整っていないんだよ。」
「なるほど。そうやって拒否しているってことか。」
「うん。まあ。そういう事になる。神に心はなくても反骨精神は宿っているのでな。」
「そうか。とどのつまりだ。僕に手を差し伸べた件も、君が復活した件も彼の計画の延長線上というべきだろう。しかし、これはあくまで僕とか君の推理に過ぎない。状況証拠なら山のようにあるけど物的証拠は何もない。」
「要するに?」
「立証ができない。証拠にならない。だからさ。作るんだよ。証拠ってやつを。」
僕ははっきり言った。これまでとなくきっぱりと言った。他ではない。真実を知るために。多少の犠牲は厭わない。
「何をするんだい。」
小瓶はこの時までは僕が何をするのか/しでかすのかが分からなかったようだ。
「戒の門解放、空に落つる虚の鳳凰よ。いまこの手の先にうつりし小瓶を無のものとせよ。代償はこの左手に」
小瓶はこの自体を理解したようだ。そして、もうこの長い長い話は終止符を迎える。誰に許されたか/許されないのかとかは問題にすらならない。左手への代償など知ったことか。別にもう一生使えなくてもいい。とにかく、決定打を打つのだ。
「これで証拠が判明する。彼が来ようと来まいと、物的証拠が得られるだろう?」
「まあ、私の本望としてはいまいなくなることがベストだけどな。まあそんなことはないだろう。ヒャハハハ。」
彼の最期(仮)は苦し紛れに死んだ時とは違い笑っていた。僕は自分の戒が不発にならないよう精力を込めて、指先に集中した。
「施錠!」
「なるほど!愚かだったか。」
・・・
何も起きなかった。いや、厳密には起きたんだが、当人がこの場にはいない。なるほど。これはキンキ以外の何物でもないな。”規格外”すぎる
もしかしたら、僕はまだベッドに寝たままだったかもしれない。ここまでの事は全て夢だったのかもしれない。(だとしたら信じられない悪夢だったのだが)まあいい、身体はしばらく起きやしないのだ。
視界が薄れていたが、耳の感覚は麻痺していなかったようだ。開かずのドアがガチャっと開かれた。
そして、小瓶は言う
「本当に馬鹿げている。どうやってやったm人間として規格外だ。戒が人の範疇を超えている。お前がこのように神になったほうが良いんじゃないか。しかも、ゼイデンの研究者としては聡明叡智。なのにこんなに尖った思考をお持ちで。これは共和だけでなく世界中から目をつけられるわ。あなたが求める自由がわからない…」
「お前らに分からなくて当然だ。」
「ひょっとしてまだ諦めていないんですか。共和国や帝国含めキャピタル7への復讐。」
「そんなことは知る必要はない。お前の仕事は唯一。さっさとモーンとcode:dealを結んでくれればいい。残念ながら、お前と私の主従関係は変えようがない永久なものだ。命令には背けない。だろう。公卿を父に持つ帝国随一のボマーなら、従者が主に背くことがどれほど醜いのかわかるよな。確かにお前は自由から程遠い束縛されていた生活だから、私がどれほど憎いかは察することにしよう。デタウムを彼に使ったことは謝らん。私は医者であり、研究者だ。つまるところ、なるべく早くこれを終わらせろ。時間がないんだ。」
スネイカ−。お前は一体何だ?
・・・
次に開いた僕の目は白い天井を見ていた。”当然”だが、僕の体には鎖がつけられてはいない。とりあえずこのままでは寝たきりではならない。気絶中なにがあったのかを知らなければ。そういう強迫観念が僕の体を起こそうとした時、ぐわんと、脳神経が破けるようなひどい頭痛がした。額に手を当て、少し寝すぎたかと思い、別に立ってたいわけではなかったので、ベッド脇に座ることにした。僕の視線はまっすぐ、意味もなく白い壁を見つめていた。その時だ。テーブル上だろうか。聞いたことのある声がした。
「お前、少しは一回頭を冷やせたか。」
やはり前者らしい。スネイカーが僕の詠唱に介入できるほどのキンキで僕を気絶させたという事実が確定した。記憶は浅いが、記録としては残っている。人の記憶力とは時に常軌を逸する時があるな。少なくとも寝る前の数秒をこんなに鮮明に覚えているとは思わなかった。落ち着け。とりあえず冷静になるんだ。
「頭を冷やすべきはお前、「も」じゃないのか?」
「そうかもしれないな。」
「それにしても、まさかの遠距離技か。」
「まあ色々な収穫はあったじゃないか。」
「脅威の地獄耳とキンキの能力ねぇ。」
「この会話も筒抜けさ。今更怯えてもどうしようもない。」
「うーん。駄目だ。相手が強すぎる。」
「まあお前の戒も相当ぶっ飛んでいるから強弱に関しては時間の問題だと思うんだが。でも、真実を追究するのは長期戦になりそうだぜ。10年以上の。」
「わかってる。10年後、俺が世界を曲げかねないってこともな。」
「覚悟はできてるってことか。」
「ああ。もう誰にも混ざりたくねえんだよ。本当の自由っては何なのか。身をもって証明してやる。」
「旗が立ってるじゃねえか」
「どういう意味だ。」
「普通の人間はただの棒だ。それも大半は地下に埋まってる。一部浮いているやつは地上に出てくる。でも、真に浮くことができたやつ、旗を上げる事ができたやつには敵わねえ。」
「もうちょっと分かりやすく。」
「私達には結局、個性はないけど、色がある。性格とか容姿じゃなくてだな。もっと漠然とした人間性ってやつがよ。それを旗にして、絵にして人に見せることが出来るやつが一番強いってことだ。ちなみにデタウムにはこの意味が記載されてないと思うぜ。俺オリジナルだからな。」
オリジナルなのはいささか問題だと思うが、旗を上
げるって言う言葉自体はかなりかっこいいじゃねえか。もう迷いはない。僕は生涯自由という旗を掲げ続ける。本当の自由というのを全うし続ける。もう僕は止まらない、走り続けるまでだ。と盛大にイキった僕なのだった。
どんな酷評でもいいので感想くだだい。
皆さんで一緒にこの作品を最良のものにできれば…と思ってます。




