3章 The wolf howls 傍パート Ⅱ
日はもう沈み東から上がってきた月が煌々と僕らの背中を照らした。夜になるに連れ風も少しずつ強まってきていた。ツクモは荷台を引っ張るのに手一杯だったらしく、道中僕にデカをの懐中電灯をもたせたりしていた。手が痛くなるくらい重い、ガチ仕様のやつだったが、人生初の夜の砂漠探検ということで、テンションは高めだった。この一帯はヘドウィンと古い集落を継承しながら使っている民族達くらいしか存在せず、インフラ及び都市開発が遅れているため、かなりきれいな夜なのだ。まあ目に砂が入ってくるのが玉に瑕といった感じだが。
・・・
歩き始めて15分くらい経ったころだろうか。
「ちょっと、遠回りする。」
確かいきなりツクモがこんなことを言い出し、これまでの進路とは急に逆方向に、つまりはこれまで自分たちが辿ってきた道にも戻り始めたのだ。でバギーの所に何かを取りに戻るのかとかそういうわけではなく、
時間つぶしに道をうろうろしているというか、この一帯を徘徊しているように思えた。(これは後でスネイカーに教わったんだが、この時、ツクモはSの連中に自分たちの進路を混乱させるためにそんなことをしたという。同じ道を言ったり来たりすることで、敵を分散させる事が可能になる。更に砂漠の風が砂を巻き上げ、自分達の足跡を消すことにより、最終的に自分達の行き先を分からなくできるとのことだ。馬鹿の直感、侮るなかれということらしい)
最終的に僕たちが行き着いたのは、今の拠点ではなく遺跡だった。それもただの廃墟みたいな、こじんまりとした遺跡だった。なぜそれをツクモが選んだのかというと、割と大きめの洞穴があったからである。数千年前の祖先がこれを掘って、しかもそれがまだ現存していることを考えると、かなり感慨深いなと、また訪れるべきなのかな。今になって思ったりする。そういう何も無いけど厳かな場所なのだ。ツクモは中に入るなり、自前の濃度計〈小型のもの)をポケットから取り出し、この一帯のマの濃度を測った。
「ふむふむ。65かー。基準の70欲しかったなー。まあいっか。全然ないよりは安心だし。まあ一人くらい入ってきても、彼、ポテンシャルエグそうだし。まあなんとかなるでしょ。」
とぶつぶつ独り言を述べながら、自分が引いてきた荷台を洞穴の中に入れた。そして、その中からごそごそと奥の方に(謎に)あった、結界構築機((小型のプロジェクターみたいなやつ)←ちなみにかなり高い)を2台取り出し、洞穴の角と角においた。
「これ出来ちゃったからもう結界学の授業なんていらんよなー。」
なんて誰にも聞こえていない愚痴を吐いて、Sの連中が50mくらいの位置から見てバレない程度の結界を作ったあと、ツクモは非常時のために取っておいた栄養バーをビリっと開け、ガブッとかじりながら穴の外を度々確認していた。
「洞穴で二人きり何も置きないはずがなく」ってことで。僕がいかにも腹ペコな様子を察して、同封されてたもう一方のやつを「ほい。食っとけ。」と笑いながら渡してくれたりした。渡した瞬間馬の餌やりのようにガブッとかじりつく。小型のゴブリンみたいな、可愛げのない僕なのだった。(今のほうがまだショタ売りできると思っている。)
この戦争に次ぐ戦争で忙しいこのご時世では考えられないくらい平和な時間である。どっかしらの日常系の作品にありそうな感じを終始感じ取った。
ただ、そんな”ハートフルな時間”は続くわけがないのだ。時間は転がる石のように過ぎ去っていくもので、場面がいつまで経っても切り替わらないなどありえないはずなのだ。今回はちょっと急展開過ぎたかもしれないが。
「いいかい。君はここで1時間少々待っててくれ。そうだ。座っててくれ。ちょいと実力だめしがしたいんだ。」
とツ気分屋のツクモさんは無責任にも僕を放棄し、ハンター殲滅という言いがかりをつけ、この場を出ていってしまったからだ。
「何も知らないガキを洞穴においてくなんてネグレクトも同然だろ!逃げるなァ卑怯者!!」とキレたかったりするが、状況が状況である。ハンターから僕をかばおうとしてまとめて死なんてエンドが最も最悪なのだ。自分が周辺のハンターたちをどうにかこうにかして殲滅した方が、まだ懸命という算段のようだ。総合的に加味するとある意味合理的判断だったと言えると思う。
ただし結果はいつも人を裏切るもので、今回は彼女の読みが浅かったというべきか。僕がその時何を思っていたのかを彼女は考慮していなかったかもしれない。。。




