大闘技大会 決勝戦。
謁見の間。
血相を変え、不乱に走る一般兵はその王座にて首を垂れた。
その緊張は伝播する。
吉兆か凶兆か。
はたまた命運か。
今このタイミング起きた変数はその後の行末を大きく乱す事となる。
息を整えた男は大声で伝令を叫ぶ。
「目的は不明!!
これほどまでの損壊は前例がありません──
第51地区、大門が大破いたしました!!」
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大闘技大会──決勝戦
「波乱の前哨戦が終わり、ついにやって来たこの闘い!
覚悟を決めた名士達が鎬を削り、たどり着いたはこの舞台!!」
口上が上がり会場の熱気は最高潮に達する。
揃ったのは四名。
巌鉱の粉砕者。
絶対王者。
豪炎の武人。
無名の仮面。
各者の心情はもはや不要。
ただ強いやつが勝つ。
そんな純粋で単純な戦いが今──
「大闘技大会 決勝戦!!」
始めっ!!!!」
口火を切った。
瞬間。
チャーンソーを思わせる、けたまましい暴音が鳴り響く。
「【武装 鰐御】」
いきなりの解放。
荒いやすりの様な魔素が各者の肌を刺激する。
「【武装 金剛の鎧】」
「【武装 炎舞】」
「【武装】」
当然の解放。
だが──闘いはもう一段階水準をあげる。
オアシスの武衛神官にして魔物及び敵対勢力の殲滅を目的とした多対近接戦闘の頂点。
故にそれを本能にて察知した三者は、一斉にセベクへと駆けた。
金剛の鎧が魔素を受け止め、炎舞は去なし──
少年が──
「む、むり…………!!」
躊躇する。
そしてその直感は現に正確だった。
「【武装 鰐神】」
神を冠するその武装。
発動と共に波濤する魔素は、前線は張っていたエイトリーとスヴァログの総身をもいとも簡単に吹き飛ばす。
当然に少年は無傷では済まず、顔面を覆う仮面及び身体の前面は削りとれたかの様に損傷し、倒れ伏した。
圧倒的力量。
絶望的格差。
それを突き付ける。
しかし、それを前にしても立ち上った男たちには確かな算段があった。
「なぁ渋顔よ。等価交換と行こうか」
エイトリーはその言葉に静かに頷く。
そして──
「【二重連唱 金剛の炎鎧】」
赤銅に煌く鎧を纏う両者と冷酷な王者が相対す。
文字通りひりつく空間は、触れられざる者たちの領域に分かち、火花を散らした。
緊迫した戦場。
その戦況を動かす者は居なかった。
いや、動かす事すら叶わなかったのだ。
現にエイトリー は前身しようと試みている。
自分の役割を十二分に理解しているからだ。
前線を上げ、王者に届く一撃を構える為に。
しかしながらピクリとも動かない。
動けないのだ。
そしてそれはスヴァログとて同じ。
これを打破出来るものはこの場において存在しなかった。
たった一人を除いて。
「嘆かわしい……」
その一言は会場の熱気を消し去った。
血の気が引き、肚の底から凍える様な感覚が会場を襲い──
──紡がれる。
「【赫鱗】」
赫然と爆発するその魔素は場内の障壁すらも抉り取る勢いで辺りを襲った。
跡形もなく、殲滅のみを目的とした中範囲壊滅技。
故に彼の目は久しく感嘆の意を表した。
「ほぉ、形を成すか……」
武装を剥がされ、血に濡れた総身でありながら、彼は未だ立っていた。
意識も途絶え途絶えの満身創痍の状況。
「てめぇ…ここにいる全員殺す気か……?」
漏れ出た言葉に王者の返事はなかった。
言葉の意味は理解している筈だ。
事実、エイトリー が咄嗟に場内の障壁を補強して居なければ、今頃この会場は跡形もなくなっていただろう。
故にエリトリーの損傷は一段と深い。
会場は冷めきり、恐怖が支配する。
そしてこの寒気もまた、一段と冥府へと近く。
「【雷鎚 雹怒流】」
瞬間、黄金の閃光が王者の眼前で爆ぜた。
「唆らしい……」
悠然と言葉を吐いた。
しかしながらここまで接近されるのは王者とて思いの外であった。
少年の氷の拳が王者の魔素と拮抗する。
「だがしかし、半端だな……」
その言葉を後に、少年の纏う氷塊が砕けた。
右腕から肩に掛けて肉が裂け、血飛沫を上げる。
覆せぬ力量。
王者の圧力に負け、後方へと吹き飛んだ少年の総身は、受け身をとる体力すら残さず、数回のバウンドを繰り返しスヴァログが受け止めた。
「すまないな……」
彼もまた満身創痍の中、吐き出した言葉と共に、少年の身体に茜色の魔素を纏わせた。
「クソッたれ……」
そう言ってエイトリーもまた少年に潜在能力に望みを賭けた。
金色と輝きはじめる魔素は、ほとんど原型を留めていないヘンテコな仮面を黄金へと変革してゆく。
纏う魔素は少年の総身を廻り、細胞を活性化して自然治癒および身体機能を大幅に上げる。
類稀なる才能は、受け継がれた魔素と細胞を新たな境地へと昇華させる。
名はまだない。
ただ。
純粋な。
魔素の。
細胞の。
霊魂の。
「【武装】」
解放。
正月休みで少し書きました。なんとか生きてます。




