1-3
朝ごはんを食べ終え、家事や日課を一通り終えて日が高くなってきた頃。
コンコンと扉を叩く音が聞こえてくる。
「はーい」
返事をしながら出てみると、外には誰もいなかった。
内心「またか」と呟いて溜息をつく。
家の周囲に気配は無し、捜索範囲を少し広げてみると、数メートル離れた木の上に人の気配を感じる。
集中して目を凝らすと、どうやら弓を構えているようだった。
数秒後、躊躇なく引かれた弓矢は、家を目掛けて飛んでくる。
「甘いな」
矢が目前に迫った瞬間、傍にあった木の棒で弾く。
続いて、懐に忍ばせていた吹き矢に魔力を乗せて吹く。
矢は狙い通りの場所に届いたらしく、木が揺れている。
あれは落ちただろうなと苦笑する。
しばらくすると、トボトボとこちらに向かってくる人物が見えた。
頭には草が付いている。
「よう」
「どうも……」
あまりにも元気が無い様子なのがおかしくて笑うと、恨みがましい目線を送ってくる。
「なんであんなところまで吹き矢で届くんですか!」
「なんでって言われてもなあ……それよりもノア、そろそそろこういうの止めないか?」
木の上から落ちたせいでところどころに擦り傷を作り、文句を言ってくる少女――ノアの頭に付いている草を取ってやりながら言うと、そっぽを向かれる。
「止めません!先生が隊に戻ってきてくれるまで、絶対諦めませんから!」
“隊”という言葉を聞いて、グッと息が詰まるのを感じる。
魔王軍討伐隊。
かつて自身が所属していた隊だ。
「魔王軍は討伐されただろう」
「されましたけど、隊自体は解散されていません」
数年前に派遣された討伐隊と魔王軍との戦いで、討伐隊は魔王軍に勝利した。
魔王は勇者に倒され、魔王軍に所属していたほとんどが討伐された。
しかし勝利したからと言って、討伐隊の被害が無かったわけではなく、半数以上の者が犠牲になってしまった。
「俺は……」
「だー?」
重くなっていた空気で息が詰まりかけていた時、間の抜けた声が聞こえてきて、一気に空気が軽く感じた。
振り返ると、そこにはカノンがいた。
「あっ、例の赤ちゃんですね。かわいー」
「……ああ。」
冷静を装いながら、話題が変わったことにホッとしている自分がいた。




