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早速カノンを抱き上げようとするノアの首根っこを掴んだ。
「なんですか」
「手を洗ってからだバカタレ」
「ちぇー」
木を登ったり落ちたりしたのだから当然だ。
手を洗って早足で戻ってきたノアは、カノンを抱き上げて向かい合わせになるように膝の上に乗せた。
急に抱き上げられて泣き出すかとも思ったが、そんなこともなく、不思議そうにノアを見上げるカノン。
どうにも彼女は赤ん坊にしては泣くことが少ないように思う。
普通の赤ん坊というのは泣くのが仕事なのではないだろうか。
病院で診てもらった方が良いだろうか。
拾った時に病気はないかを一度診てもらったが、その時に不安なことがあれば来いと言われていた。
何も無ければそれで良いのだが。
「それで、今日はなんの用だ?」
ノアの前に来客用のコップとカノン用のコップを置く。
一瞬キョトンとした顔になったが、すぐに口を開いた。
「実は最近、この辺りを謎の生き物が徘徊してるみたいなんです」
ノアの話はこうだ。
討伐隊の巡回中、今までに見たことの無い足跡を発見したそう。
形は犬の肉球と変わらないが、特筆すべきはその大きさだ。
どうも、通常の肉球の5倍ほどの大きさらしい。
凶暴性などは不明だが、大きさからして突然変異の可能性があり、要注意らしい。
「でかい犬ねえ……」
「犬かどうかすらもあやしいですけどね」
「だー!」
そんな話をしていると、今まで大人しく座っていたカノンが急に声を出した。
話に飽きて愚図っているのかと思ったが、どことなく目がキラキラしていて、どちらかといえば興奮しているような気がする。
「見たいのか?」
「あい!」
ビシッと真っ直ぐに手を伸ばしているが、腕が短いのでどうにも格好がつかない。
「そうか」
堪えきれずに漏れ出す笑いに、不服そうに頬を膨らませるカノン。
それに気付かないふりをして、大きな犬について思案する。
実際問題、危険があるようであれば早々に討伐しておきたい。
自分一人だけならば放置していたところでさして問題ではないが、今はカノンがいるのだ。
もしカノンが外に出てしまった時に現れ、襲われでもすれば……。
と、そこまで想像して止める。
そうならないように先んじて動けば何も問題もないのだ。
近日中にでも捜索してみることに決めた。
「それにしても、この子不思議な子ですね」
「そうか?」
「普通このくらい小さい子だったらまだコップで飲み物飲めないと思いますよ。それに……」
一度カノンを見る。
ジッとノアのことを見つめているカノンは、次の言葉を待っているようだった。
「なんだか話している内容が分かっているような気がするんですよね」




