六話 どうして今なんだ
よし、歯磨き粉の購入完了だ。ついでに化粧水とかマスクとか、余計なものも少し買ってしまったけれどもまあ良しとしよう。
さて、それじゃあ今度こそ学校に向かおうか。とはいってもまだまだ時間には余裕があるから、寄り道したとてやっぱり急ぐ必要はないんだけど。
それで、ええと、ここから学校に近い道は……ああそうだ。確かコンビニの裏を通って行くのが一番早かったな。
……まだあるよな?通行止めだったりしないよな?
俺は学校への近道を探そうと、コンビニの裏手に回った。
すると、そこには例の道がちゃんとあった。通行止めにもされていなければ解体もされていない。
ただし、整備もまたされていないので。その道はぼうぼうと草の生え揃う、荒れ果てたとも言えるような場所であるのだが。
まあでも、通るだけだから別に気にはしない。というかそんな事を言ってばかりいては本当に遅刻してしまうだろうし。
という訳だから、それじゃあ早速使わせてもらおう。俺はその道を歩き進めて行った……その瞬間。
ぐにゃぐにゃと、周囲の景色がまるで歪んだようになり始めたかと思うと、次には大きな生物達の影が、その鳴き声が俺の耳に届き。
最後には、見慣れたはずの風景が幾つもの細道の集まりのように。そして、その全てを一面の石畳へと姿を変えた。
…………ダンジョンが生成されたんだ。
何で、どうして今なんだ。確かに可能性はゼロではないにしろ、最近では朝にダンジョンが出現する事なんて滅多になかったはずなのに。
それが、どうして……何でよりによって今なんだ。本当に迷惑極まりない。このままじゃ遅刻してしまうじゃないか。
とはいえ、文句ばかり言っても始まらない。ここでそうしていたとて始まるのは俺を抜きにした朝のホームルームだけだ。
ならばもう、今は進むしかないのである。突き進んで魔物を倒し、最後にはボスをも倒してダンジョンを攻略するんだ。
いや、学校に辿り着くんだ。
俺はダンジョンの中を歩き出した。
今回のダンジョンは最もシンプルなタイプのものだった。
それは単純な迷路というか、単にその中に魔物や宝箱が配置されているだけというような。とにかく、今まで見てきた中ではかなりスタンダードなものだ。
だかしかし、今だけはシンプルであって欲しくなかった……
何せ迷路というのは実力どうこうが関係無い。どれだけ強かろうが運に見放されては、いつまで経ってもゴールには辿り着けないのだ。
ちなみに、現在時刻は寄り道をしていたせいか七時であり。もう一つちなみに言うと俺がこの手のダンジョンを攻略するのに要する平均タイムは約一時間前後と言った所だ。
……つまり、ギリギリアウトである。
だがもしかすると、急げば学校に間に合うかもしれない。いつもいつでも急ピッチでダンジョン攻略をしている訳ではないからな。
そうして叩き出された平均タイムなど、俺が本気を出せばきっと更新できるはずだ、多分。
でも、気合いよりも先にまずは一歩踏み出すとしようか。
そうして俺はダンジョン攻略を始めた。
だが幸先悪く、道行く先は行き止まりや魔物の巣等々、ゴールとはかけ離れたものが続いた。
僅かに汗ばむ額と、背後より俺に付き纏う焦燥感が実に不快である。
戦場で苛立つのはあまり好ましい事とは言えないだろうが、いち早く攻略したいと事実俺は焦っているのだ。そうなるのもある意味仕方がない。
唯一の救いと言えば、道中にミミックではない、つまり罠ではない宝箱を発見した事だろうか。
そして、その中身がポーションであったのもまた喜ばしいポイントである。
とは言え、傍から見れば 『そんなモンでなに喜んでるんだ、どうせいっぱい見つかるヤツなんじゃないの?』などと言いたくなるかもしれないが、それは違う。
ただし、見つかりやすいのはまあ間違いないのだが……だとしても、俺にとってそれは素晴らしいアイテムである事に変わりはない。
何故かと言うと、実はこのようなアイテム類はダンジョン攻略後も所持が出来れば、現実世界へと持ち込むのも可能でだな。
もちろん、ダンジョン外で使用する事も全く問題無くできてしまうのだ。
その中でも特に、このポーションというものは有能というか、とにかく使える代物であってだな。
何と体力の回復だけでなく、ちょっとした擦り傷、切り傷なんかもあっという間に治してしまえるのだ。
つまり、俺が手にしたそれは普段の生活においては最強クラスに有能なアイテムで、だから俺は喜悦していたのだ。分かってもらえたかな?
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