五話 世の理
……あ、そうだ。
失礼。ダンジョンについての説明で言い忘れていた事がまだ幾つか残っていた。
俺のスキルで生成されるダンジョンだが、これは外部からは見えず、また入れるのも俺か、もしくは俺の付近にいた不幸な第三者くらいである。
なのでどんなに近くにいようと、俺の側にさえいなければ何の問題もない。誰かに見られる事も、誰かが巻き込まれてしまうという事もほぼ心配する必要はないんだ。俺と一緒にいなければな。
それともう一つ、『ダンジョンはあまりにも狭い範囲、場所には生成されない』というのがある。
例えば誰かの自宅等の一室、細長い一本道なんかがそうだ。だから突然現れた魔物に四方を固められて絶対絶滅、なんて事はあり得ないと言って良いだろう。
ただ、その場合は付近のまた別の場所に生成されるため、わざわざ移動してダンジョンを攻略する手前というか、必要があるんだけど。
……と、まあこのくらいだろうか。
ちなみに、狭い場所にダンジョンが出現する事はないとさっき言ったが、もちろん俺の自宅もその例外ではない。
だからここでだけは、安心して朝を迎えられるんだ。まあ、今日はもう攻略したからどの道生成はされないんだけど。
という事でやっぱりダンジョンは出現せず、翌朝。
快眠した俺にまた普段通りの生活が、朝が戻って来た、つまり学校があるという事だ。支度を整えて登校しなければならない、学生の本分とも言えるそれがな。
ちなみに、あれから女神様はどうしたのかというと。
「やっぱり置き技が決まった時が一番気持ちいいのよね〜! 体感的に少し離れた所にいる相手が動くのに合わせて入れると決まり易い気がするわ! スッと入るとか、吸い込まれるって言うのはコレなのね!」
ブツブツブツブツ何か言いながら、俺がベッドに潜った後も暫くはゲームを続けていたようだが。
目を覚ました時には既に部屋から姿を消していた……けど、これはいつもの事だから気にする必要はない。
という事で、俺はそのまま登校の準備を始めた。
朝飯を食べ、歯磨きと洗顔、それと髪を整えた後に次は身支度に入る。我が校は八時に出席を取るのだが今は六時だ。それに歩いて十分程で学校には着くから、ゆとりを持って行動できると言えよう。
むしろ早過ぎるくらいか?……と、思わない事もないが。
登校中にダンジョンが生成される可能性も加味し、俺はいつもこのくらいの時間から動き始めるのだ。
残念ながら変更はできない。
まあ、そんな事はないとは思うけども……最近、ダンジョンが生成されるのは殆ど夜だし、流石にね?
「よし、じゃあ行って来ます」
そうして準備を終えた俺は誰に言うでもなくそう口に出すと、最後に玄関扉に施錠し歩き出した。
すると、飛び込んで来るのは。
談笑しながら歩く我が同士こと学生諸君。都会にも小さく、だが逞しく響き渡りその存在を証明せんとする小鳥達の囀り。
目まぐるしく動き回る大小種様々な車。陽光を浴びその身を温める、コンクリートジャングルのビル群達……等々。
前方に流れゆく景色はそのようなもので、悪く言えば当たり前と言うか、ごく普通の光景でしかなかったのだが。
時折それら、つまり〝フツー〟とは全く異なる空間へと放り込まれる俺にとってそれは、何だか当然ではないような気がしてならず。むしろ感動さえしてしまいそうになる。
俺の目の届く所、いやそうでなくともこの世界にいる俺以外の皆は、こうした当たり前を当たり前とも思わずに日々を過ごしているんだろうな。
そう考えるとちょっと羨ましいような、そうでもないような……口に出してはみたけど、やっぱり自分でも正確な所はよく分からない。
……なら、もう考えなくても良いか。ここからは俺も余計な思考はせず、フツーかつさっさと登校するとしよう。
目の前の信号が青になったのを見、俺はまた歩き出した。
とは言え、急ぐ必要なんてこれっぽっちもないんだけどな。先程〝さっさと登校するとしよう〟などと言ったが、それでもだ。
何せ前に言った通り、時間はまだまだあるのだから。
……あ、それなら学校の前にコンビニに寄って行こうか。確か歯磨き粉を切らしていたはずだし。
寄り道はあまり褒められた行為とは言えないが、どうせ俺はそういった類いの消耗品の買い出しをすぐに忘れてしまうからな。
主に突然現れては俺の思考を、予定を、全てを妨げる邪魔者、ダンジョンのせいで……まあ良いや、とにかくそうしよう。
俺は向かう先を変え、コンビニへと移動を始めた。
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