五十九話 決戦!!堕天使ベリア!! 4
俺が止めるのも聞かずに椿と亜香里は戦場へと駆け出して行ってしまい。最後には女神様もそれに感化されたようで、俺をただ一人ダンジョンの隅に残してベリアの元へと飛び去って行った。
そうして四人となったこちら側のメンバーは、打倒ベリアへと向けて必死に戦い続ける。
「つ、椿ちゃん!? それに亜香里ちゃんまで!?……なら、私ももっと頑張らなくちゃね!!」
ララドーラさんは変わらず最前線にてベリアと剣や魔法で戦い。
「いざ戦うとなると怖いけど……でも、そんな事言ってられない!! 喰らいなさいベリア!! えい!!」
椿はララドーラさんに合わせつつ、ベリアの隙を突くように奴の背後や死角からの攻撃を狙い。
「こ、これどうやれば使えるんだろう? と、とりあえず振ってみよう……え、えいっ!!」
亜香里は皆からやや離れた位置をちょこまかと動きつつ、魔法を放ち彼女等の援護を行う。
「さあ行くわよベリア!! 今までゲームで培ったこの戦闘技術を……は、流石に無理だから、私も魔法で攻撃よ!!」
そして最後の女神様は、亜香里と同様に、ただし彼女よりも強力な魔法攻撃をベリアへと次々に撃ち込む。
と、そのようにして。彼女達四人は息も付かせぬ連携プレイによってベリアを追い詰めて行くのだった。
……かと、思われたが。
「おや、いつの間にやら随分と敵が増えたな。これは多勢に無勢と言った所だろうか……とは、言ってみたが。
市奈々井翔ならともかく、君等のような者がいくら増えた所で残念ながらこの私を倒す事など不可能だ!!」
何と、それでもベリアとの戦力差は埋められないらしく、奴の放つたった一度の魔法によって四人は一気に壁の隅へと追いやられてしまう。
幸いにも怪我人はいないようだが、それでも俺は声を上げずにはいられなかった。
「皆!!」
……ダメだ、パワーが違い過ぎる。
今は奇跡的にも助かったけれど、それもこれ以上戦い続ければどうなるか、知れたものではない。
だからと言って、逃げる事も一時撤退もできないんだ……だとすれば最短で勝負を決める、これしかない。
そしてその案は、俺が捻り出さなければならないんだ。どうせ何もできないんだ。なら、せめてそれくらいは……
俺は頭をフル回転させて思考を始めた。
唯一の救い、それは相手の弱点が既に判明している事だ。確か今のベリアは、俺から吸い取った魔力が飽和しかけているような状態で、だから一撃でも喰らうとそれが体外に放出されてしまうんだろう?
ならばそれだけ、たった一撃だけで良いんだ。あのベリアに攻撃を与えられる方法を考えるんだ。
やっぱり奴の隙を付くというのが一番だろうか? でも、どうやってそれを生み出すかが問題だ。
う〜ん、ええと、そうだな……
「…………そうだ!!」
すると、そこで一つのある考えが浮かび上がった。
そうして、妙案を思い付いた俺が次にとった行動とは。
「う、うぅ、なんて力なの……」
「女神様!! 女神様!!」
「か、翔君!? ダメじゃない、アナタはじっとしてなきゃ……」
「今は俺なんてどうでも良いんです!! それより女神様、二つ頼みがあります、それは……」
「……!? か、翔君、アナタ正気なの!? ダ、ダメよそんなの!! それじゃあアナタの身が……」
「お願いします!! そうじゃないと、皆が……!! お願いします女神様!! それしか方法がないんです!!」
壁の隅にいる女神様に、そのようにして頼み込むというものであった。
「ダメったらダメよ!! アナタはただでさえ弱っているのよ!? もしも今そんな事をしたら、最悪……」
「そんな事気にしてる場合ですか!? やるしかないんですよ!!」
しかし女神様はなかなか俺の願いを聞き入れてはくれず、頑として首を縦に振ろうとはしない。
「フフフ、どうやらここまでのようだね。それじゃあ一人ずつトドメといこうか。さて、まずは誰にするか……」
だが、ベリアがそれを待ってくれるはずもなく。奴は勝利を確信したのか、一人ずつ確実に仕留めようとゆっくり、ゆっくりと皆に近付く……と、その時。
「…………仕方ない。翔君、アナタの言う通りにするわ」
漸く、女神様は俺の目を見てそう言うのだった。
「め、女神様!!」
「でも、私からも一つだけお願い……絶対に死なないでね」
「……分かってます」
そして短い会話の後、俺達はすぐに行動を開始した。
女神様と俺とは二手に分かれたのだ。俺はベリアへと、女神様はまた別の方へと弾かれたように動き出す。
「何!?」
そんな俺にベリアは動揺しつつも、流石は魔王軍幹部と言った所だろうか。それでも尚、奴は咄嗟の判断で俺が手にした剣での一撃を防いで見せるのだった。
「お前、何故動ける!? 私があれだけ魔力を吸い取ってやったというのに、何故まだ動けるんだ!? 」
「たった今、女神様から魔力を分けてもらったのさ!! これでお前を倒す!!」
そう、そのからくりとは単純なものだ。
つい先程、女神様から魔力を分け与えてもらったからこそ、今こうして俺は動き、ベリアと戦えているのである。それこそが一つ目の女神様への頼み事だ。
……なんて、言っていられる時間はないんだけどな。
何しろ今の女神様は、亜香里と椿にも魔力を使っていて、尚且つ戦闘でも幾らか消費しているんだから、俺に寄越した魔力は微々たるものに過ぎないんだ。
つまり、今の俺は喋っている暇があるのならば、それよりも剣を振るい続けなければならないのである。
「……なるほど、お前が切り札という訳か。ならばこちらも、最後に全力で相手をさせてもらうとしよう。
その女神様の魔力とやらも、そう長くは持たないだろうからな、フフフ……」
おまけに、相手もその事を知っているようだしな……
「さあ行くぞ、市奈々井翔!!」
「来いベリア!! 絶対にお前を倒してやる!!」
そうして、今度は俺とベリアの最終決戦が幕を開けた。




