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五十八話 決戦!!堕天使ベリア!! 3

俺が止めるのも聞かず、剣を手にした椿はベリアへと向けて一直線に駆け出して行った……


マズい、非常にマズいぞこれは。もう体調がどうのと言ってられない、そんな場合ではない。


いくら防御魔法が掛けられているとは言え、女神様の言うように椿は一般人という事に何一つの変わりはないのだ。


つまりこの戦いで怪我もすれば、それは例え擦り傷でも彼女にとっては重傷になり得るだろうし。まずもそもそもとして、この戦いについていけるとは到底思えない。


仕方ないな、ここは俺も行くしか……などと思っていた時、また声を上げる者があった。


「…………あ、あの、め、女神様!!


わ、私にも力を貸してはもらえませんか!? 皆が頑張ってるのに、私だけ何もしないって言うのは我慢できなくて……!!」


そう、今度は椿に続いて亜香里までもが打倒ベリアへと向けて名乗りを上げたんだ。


でも、そんな事絶対に認められなかった。というか椿の参戦だって俺はまだ良しとした訳じゃあない。


さっきから似たような事を何度も言っているが、まずあの二人が戦いの場に立つ事それ自体がいけないんだと俺は言っているんだ。


椿と亜香里はどうしたって一般人に過ぎない。そんな二人にもし何かあれば、その時は恐らく、最悪の事態と同義であるのだから……


「お、おい待て亜香里! 何もお前まで行く必要は」


そこで、俺は亜香里を止めるべく説得を始めようとしたのだが、それはまたもや女神様の発言によって掻き消された。


「え、えぇ!? あ、アナタもなの……? まあでも、人数は多い方が良いわよね? それなら……と、言いたい所なんだけど。


悪いけど、さっき椿ちゃんにありったけの防御魔法を掛けてあげたから、もう魔力があまり残ってないのよね……だから、アナタにはできてもサポートくらいって所かしら。


さあこの杖を使って、遠距離から二人を助けてあげて……ただし間違っても無理はしない事、分かったわね?」


そうしてどんどんと話は進み、亜香里にまで女神様は武器を手渡す。


俺はまだ、その提案に納得すらしていないというのに……


「は、はい女神様!! ありがとうございます!! それじゃあ翔君、私行ってくるね!!」


だが準備は整ってしまったらしく、亜香里はそう言って戦いの場へと向かって行く……が。


流石に二度も友人の無謀を看過する訳にはいかず、俺は走り出そうとする亜香里の腕を掴んですぐさま説得を試みた。


「おい待てってば亜香里!! お前の気持ちは分かったけど何もそこまでしなくても……」


「か、翔君……ふふふ、ありがとう翔君、心配してくれてるんだね。


でも、ごめん。私も皆の力に……ううん、正直に言うとね。私、翔君の力になりたいの。翔君にもっともっと、私の事を見ていて欲しいから……」


「え? 俺の力? もっと見ていて欲しい? きゅ、急にどうしたんだよ亜香里、お前らしくないというか、何と言うか……」


すると、話すべきはこちらだと言うのに、亜香里は俺を目を真っ直ぐに見つめある話を始めた。


「……だって、翔君の周りには最近、椿ちゃんとか、他のクラスメイトの子達とかが沢山いて。


それは、翔君が前から望んでいた事だから嬉しくもあるけど……でもちょっと寂しいというか、心配で……だから、私ももっと頑張らないとなぁって思ったの。


……何だかズルいよね、こんな時にそんな理由で動いたりするだなんて……でも、皆の力になりたいのも本当。


だから、ごめんね翔君。悪いけどその頼みは聞けない。それじゃあ私、行くね。


その代わりって訳じゃないけど、コレ少し預かっていても良い?……今だけ、コレを私の御守りにさせて欲しいの」


「え、こ、コレか……?」


そうして戸惑う俺を置き去りにして、何だか一皮剥けたようにも見える亜香里は、彼女は。


俺が以前、彼女自身から譲り受けた『剣ぐるみ』を半ば奪い去るようにして掴み取り、一瞬の隙を突いてそのまま戦場へと駆け出して行くのだった。


「あ、あぁ!! 待て亜香里!! 亜香里──!!」




「…………ごめんなさい翔君」


「え? め、女神様? 一体どうしたんですか?」


「今からアナタを一人、ここに取り残してしまう事を謝罪したのよ。さっきの亜香里ちゃんの覚悟を聞いて、私も決めたわ。


怖くないって言うと嘘になるし、怪我なんて絶対したくない……でも。今動かなくちゃあの二人に、いいえ、ララドーラにも顔向けできないような気がするの。


それじゃあ翔君、アナタはここでじっとしていなさいね!」


「ああちょっと!! 女神様まで!?」


そしてその直後、女神様も漸く参戦を決めたようで、俺の元を飛び出すようにして離れて行ったのだが。


すっかりと混乱していた今の俺には、彼女の胸に秘められた真意にまでは気付く事ができなかった。

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