五十六話 決戦!!堕天使ベリア!!
ダンジョンボスであるベリアとはいきなりの戦闘開始。
我が軍は非戦闘員が恐らく三名。ただし一名はともかく、もう一名がまともに戦う姿は見た事がないという、何とも不安の残る状態でボス戦が幕を開けた。
ちなみに。分かるとは思うが、俺は魔力をベリアによって今まで吸い取られていた事が原因による体調不良に未だ悩まされており、残念ながら戦闘には不参加の予定である。
いやまあ、死ぬ気でやればほんの僅かな戦力の足しくらいにはなれるかもしれないが……でも。
そんな状況の味方がいては却って邪魔になってしまうはず。だからどう足掻いても、参加などできないのだ。
確かに不安ではあるけれど、それでもだ。
まあでも、ララドーラさんがいれば多分……じゃなく、あの人ならばきっと良い結果に導いてくれるだろう。そこはあの人と戦闘経験のある俺が保証する。
それに相手はララドーラさんの元同僚的存在、つまり多分ではあるが戦力的に見ても同程度のはずなのだ。
ならもしかすると、ララドーラさん一人でも……そう、思っていたのだが。
「……おっといけない、危うく忘れる所だった。
これからいざ戦おうと言うのだ。本来の姿に戻っておかなければな……!!」
突如としてそう呟き、姿を変えゆくベリアを見た途端に、俺の中の希望はまるで空気の抜けた風船のように縮み始めていってしまう。
雲行きが怪しくなった事に気付かされたんだ。そして何故、そう思うのかというと……
変身を終えたベリアは今までの姿と、何もかもが違ったからだ。
姿形はもちろん、以前のララドーラさんと同系統の異世界に生きる者のように。もっと細かく言えば服装は黒のドレスと、ローブをマントのように肩に羽織り。
髪は燃えるような赤色で、頭部には羊のようなツノが四本と……いや正直、服装や見た目なんてどうでも良い。
問題なのは、その姿になってからは俺ですら分かる程急激にベリアの魔力が上昇した事だ。
何しろ今のそれは、まるでオーラのように彼女を包んでいるのだから……でもそれは、俺の魔力をも取り込んでいるからだろうか? それとも単純に今まで隠していた魔力量が膨大だったからか?
まあ、それは分からないが……とにかく。
臨戦態勢となったベリアが相手となると、予想したように上手く戦いが運ぶ可能性はぐっと低くなったと言えるだろう。
というか、最悪は敗北……と。
俺はそのような予測ばかりしてしまっていた。
だがしかし、早くも俺の予測した最悪の未来へと向けて、事は進み始めようかとしていた。
「分かっていた事だけれど、やるしかなさそうね……亜香里ちゃん、椿ちゃん、アナタ達は翔くんと一緒にダンジョンの隅に避難してて! コイツは私とお姉様でどうにかするわ!!」
「は、はい! い、行こう翔君……!」
「さあ急いで、私達に掴まって良いから!!」
「ご、ごめん二人共……」
「ちょ、ちょっと待って!! ララドーラ、私……!!」
俺達は部屋の隅にひとまず避難し、そこで遂に戦いが幕を開ける。
「姿が変わった所でアンタはアンタよ……喰らいなさい!!」
「フフフ、果たして本当にそうかな……?」
そしてまずは初めにと言わんばかりに、ララドーラさんが速攻なる剣の一撃をベリアへと放った……の、だが。
「……きゃっ!!」
ララドーラさんはそれを防ぐために動かされた、ベリアの明らかに手加減した剣の一振りによって壁際にまで追いやられてしまう。
「ど、どういう事!? アンタと私の戦力差なんて殆どなかったはずなのに!? それなのに、どうしてこんな……」
「おいおいララドーラ、お前大事なことを忘れているぞ? 私はあの市奈々井翔から魔力を吸い取ったんだ、パワーアップしていないはずがないだろう?
まあ最も、それは予想以上のものだったから私の体内で飽和しかけているような状態でね、もし一撃でも喰らえば全て体外に放出されてしまうだろうが……
もしも、お前が一撃を私に与えられればの話だ。むしろ今の私達には丁度良いハンデと言えるだろうね」
そして、ベリアの強さにはそのようなからくりがあったようだ。
だがしかし、分かった所で対処できなければ無意味に等しく、だからと言って逃亡もできない。
「随分と余裕そうね、わざわざ敵に弱点を教えるだなんて……でもその余裕、きっとアンタの敗因になるわよ!!」
「強がりを言うなララドーラ!! さっさと負けを認めろ!!」
だからこそ、ララドーラさんは戦い続けるしかなかった。
ベリアの言ったように、あれが強がりだなんて俺にだって分かる、ララドーラさんの頬を伝うあの冷や汗を見れば一目で……でも、そんな状態でもあの人は頑張っているのだ。
俺に何かできる事は……いや待てよ。
そういえば、女神様は何をしているんだ?




