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五十三話 開幕 体育祭! 5

色々とあったような、そうでもなかったような……とにかく、何はともあれ借り物競走が終わった。


そして、ここからの時間は待ちに待ったお昼休みだ。


まあどうせ一人だし、さっさと弁当を食べ終えて眠るとしようか……と、思っていたのだが。


「美味しそう〜! ほら、亜香里ちゃんも早く食べよ!」


「う、うん、でも……ラ、ララドーラさん、ほ、本当に、私も一緒で良いんですか……?」


「もちろん! さあ、食べて食べて! 亜香里ちゃんや椿ちゃんの分も考えて多めに作ってきたんだから何も心配しなくて良いのよ! 」


「ああ、翔君のお家が恋しいわ。帰ったらすぐコンボの練習をして、それからそれから……」


ご覧の通り、ララドーラさんが昼食を作ってきてくれたというので、それを皆で食べる事となったのだ。


つまり一人ではなくて多数だし、静かでもなく騒がしく、俺の想定していた昼休みとはかけ離れているという事でもある……


とはいえ、ララドーラさんはきっと俺達のためを思って準備してくれていたのだろうからその思いを無下にはできない。それに、皆とこうして食べる昼食も悪い気はしない、というか普通に楽しいし。


なので俺は何も言わず、昼休憩を皆と過ごす事を選択した。


自身の脳が、身体が、『休め』とばかりに発し続ける強烈な眠気や疲れには気付かぬフリをして。


「ふむ、まだ起きていられるだけの余裕があるとは……なかなか頑張るじゃないか、市奈々井翔。


だが、それもここまでだ。そっちがそうくるのならこちらも、頃合いを見てもう一度魔力を頂戴させてもらうぞ……フフフ」




「はぁ、はぁ……あと少し、あと、少しだ……」


ほんの少しだけでも、目を閉じて休息するくらいはしておいた方が良かっただろうか。


昼休みを皆と楽しく過ごした俺はやはりと言うべきか、その代償として凄まじいまでの疲労を背負う事となってしまっていた。


だがしかし、言葉にもしたようにあと少しなのだ。そう、あと少し、あともう少しで体育祭も終わりを迎える。


それが分かっていたからこそ、気力を振り絞り俺はまだ倒れずにいる事ができた。


事実、騎馬戦と大縄跳びは既に終了していた。あまりにも疲れていたがために詳細な部分はよく覚えていないと言うのが本音だが、それでも何の失態もなく競技を行えたように思う。まあ多分、多分ではあるけれども。


そして、後はクラス対抗リレーを残すのみだ。しかも、それまでにはまた幾つかの競技がある。


つまり、ここで充分に身体を休めリレーを走り切りさえすれば、俺は全ての競技を無事に終えて体育祭をやり遂げたと、はっきりとそう言い切れるんだ。


とはいえ、みるみるうちに悪くなる顔色や息を切らす様子を最早隠し切れなくなり、今はこっそりと校庭の裏に一人座り込んでいるという始末である。


そのような状態ではクラスメイト達も心配するだろうし、それに何より、もしも彼等の中心で倒れてしまってはせっかくの体育祭の雰囲気が台無しになるだろうから、これも仕方ないのだ。


でも本当に、リレーなんて今の俺にできるんだろうか……いやいや、弱気になってはいけない。


できるかじゃない、やらなければならないんだ。俺は曲がりなりにも皆に推薦された代役であるのだから。


「…………」


という事で俺は今校庭で一人、瞑想するかのようにして目を閉じ身体を休めていた。


ただ勝手に抜け出して来てしまったから、誰かが俺を探しているかもしれないが、そんな事を気にしている場合じゃない。俺は是が非でもこうしていなければならないんだ。


この位置からでも聞こえる体育祭のアナウンス、そこにリレーの言葉が出るその時まで……


「やっと見つけたよ、市奈々井君。随分と探したんだが、まさかこんな所にいるとは思わなかったよ」


すると、誰かが俺を呼ぶそんな声が聞こえた。


……やはり捜索されていたか、でも誰だろう? クラスメイト達だろうか?


いや、違うな。というか、この声は恐らく……ああきっとそうだ、あの人だ。


「……やっぱり、アナタですか」


そこで瞼を開けると、予想通り。


俺の目の前には、伊達先生がいた。

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