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五十一話 開幕 体育祭! 3

という事で始まった体育祭。選手宣誓と開幕の花火が上がった数分後に、俺もまたクラスメイト達と共に移動を始めていた。


最初の競技が終わるとすぐに、クラス対抗にて行われる綱引きがあるからだ。しかも俺達のクラスは第一試合、むしろ今動かなければいつ動くのかという話である。


ちなみに言うと、体育祭は赤、青、白の三組に別れて点数を競うのだが、その組み分けはクラスごとに振り分けられるのでクラスメイト間での同士討ち(?)の心配は無用である。


ただ逆に言えば、そのせいで亜香里とは一緒の組になれなかったんだけどな……まあ良い。


今は競技に集中するとしようか。




「オーエス、オーエス」って何なんだろう?由来はフランス語らしいが、何故そんな所から輸入したんだろう? 我が国のものというか、産地直送(?)ではいけなかったのだろうか?


……と、考えているうちにも、それと同様の掛け声が俺の背後、前方、あらゆる位置から上げられ、全てが一塊となってまるで波のようにグラウンドを揺れ渡る。


そう、綱引きはもう始まっているのだ。


気になる勝負の行方はと言うと、もう間も無く我がクラスの勝利という所だ。だがしかし油断は禁物、俺はクラスメイト達と共に全力でロープを引き続けた。


とは言え、この中で唯一レベルの概念を持つ俺が本気を出してしまうと、色々な意味で大変な事になってしまうから、ほどほどの中での全力ではあるが……


「市奈々井君!! 頑張って!!」


するとその時、観客席から俺の名を呼ぶ者がいる事に気が付く。


そこにいたのは、周囲の掛け声にも負けずに元気いっぱい、こちらへと声援を飛ばす椿だった。


またその脇には、沢山のヤンキー達の姿もあった……って、やっぱり椿はそっち側なのか。


そしてヤンキー達と椿の声援が重なり、その一部だけがまるで応援団のように俺を激励している……


それはありがたくないと言えば嘘になるが、他の観客達がやや引いているので総合的に評価すれば『ちょっとだけやめてほしい』となる。


……ま、今日くらいは良いか。


俺は考えるのをやめ、ここからは更に全力で綱を引く事にし。


そして最終的に無事勝利できた時、皆と始めてのハイタッチに成功するのだった……!!




ま、まさかそんな事を……なんて、自分でも信じられなかった。


勝利した瞬間の歓声と共に、皆とハイタッチだぞ? あの嫌われ者だったはずの俺が……


もしかすると、今回の体育祭は俺の中で最高のものとなるかもしれない。


少し前から興奮していたのは認めるが、更にというか、段々と楽しくなってきたな……!!


という事で無事綱引きを勝利に終え、また幾つかの競技を見届けた俺は今、もう間も無く始まらんとしている応援合戦に向けて集中していた。


というか、正確に言うとただ静かにしているだけなのだが……いやでも、ここで集中はしておいた方が良いと思う。


だって、応援合戦とは言ってもその実は皆で行うダンス合戦なんだ。振り付けを一つでも間違えれば浮に浮きまくってしまう。


それだけは、俺にとって最も避けねばならない事柄であった。何せ、俺は漸く皆と分かり合えた(?)というだけの、未だ評価の低い男子生徒であるのだから……と、その時。


こちらを狙う、レンズが光るのに気付く。それを知った俺がその方角に目を向けると、そこには……


「ああ、もっと練習したかったのに……アプデで変更されたあの技なら、私が使える六つくらいのコンボのうち三つ、いや四つくらいには組み込めそ」


「ああ、本当にもう……ちょっと黙ってなさい!! 今から翔君の出番なのよ!? 少しは気にしたらどうなの!?」


……何やらモメているようだが、とにかく。


俺にカメラを合わせているララドーラさんと、その横で……不貞腐れているようにも見える、半透明の女神様の姿があった。


ララドーラさん、来てくれたのか。それに女神様も……いや、あの人は自発的にと言うより、ララドーラさんが連れて来たんだろうが。


そう考えると何と言うか、本当にブレない人だな……まあだからこそ、その話は置いておくとして。


姉の方がどうであれ、妹であるララドーラさんのその行動には正直感動というか、嬉しくて涙さえ出て来そうになる。


が、今は止めておくとしよう。目が潤んで振り付けを間違えている事に気が付きませんでしたでは困るからな。


そう、今はただ、映像とあの人の目になるべく良い姿で映る事ができるよう、応援合戦を頑張るのみだ。


俺は胸に突如として込み上げてきた何か熱いものを感じながら、自身の順番を待ち続けた。

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