四十九話 開幕 体育祭!
あれからも色々とあったが、何とか皆の協力のお陰で日々をやり抜く事ができた。
亜香里は学校で、ララドーラさんは日常生活で、椿は時折かつどちらでも。あと、女神様は……とにかく、という感じで皆に支えられ、何とかここまで来た。
まあ、別にこれで全て終わり、という事では決してないのだが、それでも今日という日だけは華々しく飾りたい、そうありたいと思っているのが本音だ。
ただし、俺だけではなく、今日を生きる我が校の生徒達全員がそのような気持ちを胸に秘めている事だろう。
何たって、今日は待ちに待った体育祭の当日であるのだから。
ダンジョン生成に邪魔されながらも学業……は、まあ、今日だけそっちの方は一旦置いておくとして。
その後の練習もしっかりとやり遂げたつもりだ。だから技術不足とか、競技をやるに当たっての精神面なんかに関しては不安など微塵もない。
しかし、未だ完全復活といかない事だけが唯一の懸念だった。
本当に、自分でも不思議でならない。どうして俺の体調は一向に良くならないんだろう?
もちろん、ただ嘆いていたばかりではない。そっち方面でもやる事は全てやったはずだ。
これ以上悪化しないよう、少しでも具合が悪くなれば保健室を利用したし。それと病院にも行った。ただ、〝何科〟に行けば良いのか分からないため内科だけではあるが。
ポーションも手に入れればすぐに、家にある分も全て飲んだ。飲んで飲んで飲み干した。
だと言うのに、何も変わらなかった。
確かにポーションを飲んだ直後は一時的に回復こそしたものの、それは体力だけの話であり。だとしてもまたすぐに疲労感が押し寄せて来たし。
伊達先生にも医師達にも、きちんと診てもらったのだが……それでも、皆が『異常なし』との判断を下したんだ。
俺の身体は今でもずっと、危険を知らせるための信号を発し続けているというのに。
もしかすると俺は、未知の病原菌にでも感染しているのだろうか? それかもしくは、何と言うかこう……イップスの日常版、みたいなものを発症(?)してしまったとか?
なんて、有る事無い事考えてしまい、憂鬱になった時もあったが。他の生徒や俺の側にいる皆の中で、俺のような症状を訴えている者は一人もいない。
だから多分、これは単なる俺の不調に過ぎないのだろう。いや、きっとそうだ。それだけなんだ。
……と、自身を励まし、というか誤魔化してここまで来たんだ。
そうとなればもうヤケクソ……とかではないが、もう泣こうが喚こうが当日というのには違いないんだ。だからやれるだけはやってみようと思う。
その後は、そうだな。以降も体調が戻らなければ、長期休暇でも取るとしようか。
幸い、出席日数は全く問題無いし。というか、俺は遅刻魔かつ授業を途中で抜け出すとは言え、『ほぼ皆勤賞』とは呼べるレベルだし。
弁当、体操着、水筒……よし、準備完了だ。学校に着いてから着替えるから今は制服で良いんだし。
あ、あと、小さいブルーシートみたいなものも用意しておいたからこれも忘れず持って行こう。俺の家族は誰も見に来ない、というか来れないからな。
さて、これで本当に準備は終わった。という事で俺は家を飛び出し、学校へと向かい始める。
道中、自身に変化がないかどうかと確認しつつ俺は歩いた。
とは言っても、普段とあまり変わりはない。流石に歩くだけで息が切れたり疲れたりはしないし、身体も重いという訳ではない、いつも通りだ。
だがしかし、『いつも通り』とは最近の話だ。
つまり、俺の不調は一切として変わる事なく続いているという事だ、先程も言ったように相変わらず。
まあ良い。今日だけは例えそれが空元気だとしても頑張るとしよう。
せっかくの体育祭なんだからな……などと考えていた時。
「お、おはよう翔君!」
背後から声を掛けられ、そこに亜香里がいる事を知った。
「お、亜香里おはよう。一緒の組じゃないのが残念だけど、とにかく今日はお互い頑張ろうな」
「う、うん! そうだね、頑張ろう……でも翔君、体調はもう大丈夫なの?」
「それはもう全然大丈夫……ではないけど、まあ今日くらいは動いても問題無いと思う、ってくらいかな」
「そ、そっか……無理、しないでね」
「ああ、いつもありがとう。気に掛けてくれて」
そうして俺は小動物、ではなく。小動物のような幼馴染の頭を撫でながら学校へと向かうのであった。
「フフフ、市奈々井翔。今日が君の命日だよ……!!」
最近めっきり減った……かとばかり思われていた、背後からの視線に一切として気が付かないまま。




