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四十八話 限界 2

「クッ……全くもう!! アプデされて技が変わったなんて聞いてないわよ!! ああもう!! やり辛いったらありゃしないわ!!


あ……でも、この技良いわね、相手のダウンの仕方を見たら、コンボにも繋げられそうだし。というか、この技を入れれば既存のコンボよりもダメージが入るんじゃないかしら……よし!! じゃあもう、こうなったら一か八かよ!!


即席だけど、この技をコンボに組み込んで一発逆転……って、誰よさっきから五月蝿いわね!! そんなにドアノブをガチャガチャされても開けられないわよ!! 私は今忙し」


「ちょっと!! いい加減にしなさいよこのゲーム馬鹿!! こっちは翔君が倒れて大変なのよ!! 分かったらさっさとここを開けて、せめてもう少し静かにしていなさい!!」


「ラ、ララドーラ!? それに皆も……って、え、え!? か、翔君が!?」


倒れてから暫くして、何やらそのような会話が聞こえてきたが。


まあでも、どうせいつもの事だしと。俺は気付かないフリをして目を閉じているのだった……




……なんて、寝たフリをしていたら本当に眠ってしまっていたようだ。


目を開けるといつしか日はすっかりと落ち、その代わりに月が夜の空に鎮座していた。


また、俺の居場所がララドーラさんや亜香里、それと椿達三人の腕の中から自室のベッドへと変わっていた。俺が眠っている間に皆が運んでくれたのだろう。


感謝、しなければならないな……


「ああっ!! また負けた!! ダメね、今日はもうずっと練習モードで例のコンボを完璧にするとしましょう……」


小声でボソボソと呟き、いつものようにこちらへ背中を向けてゲームをしている女神様を除いて。


「……ん、あら翔君、目が覚めたのね?」


なんて思いながら、呆れにも近い視線を女神様に飛ばしていた時、ベッド脇からそのような声が聞こえた。


目を向けると、そこにはララドーラさんがいた。俺を心配してなのか、今の今までずっとそうして寄り添っていてくれたのだろう。


それを示すように、その場のクッションに彼女の腕の形が刻まれている。というか、そのように凹んでいるのが見える。


「あ、ララドーラさん。もしかしてずっとそこで看病してくれてたんですか?」


「まあ、そうね。とは言っても、アナタずっと眠っていたから、様子を見ていただけではあるけどね」


「……ありがとうございます。それとすみません、迷惑を掛けてしまって……」


「気にしないで、本当に見ていただけだし……だから、お礼の言葉ならこの二人に言ってあげて。この子達は泊まり込みで看病するって聞かなくて、私や自分達の親を必死に説得してまでここにいるのよ」


すると、そう言ってララドーラさんは自身の側の床下を指差した……ん? この二人?


そこに、誰かいるのだろうか? まさか亜香里と椿か? いや、亜香里はともかく椿は流石にいないだろう。いやいや、亜香里もだ。明日だって学校はあるのだから。


そう思い、下を覗き込んで見ると。


「……あ。ま、まさかとは思ったけど、やっぱりか……」


そう、そのまさかだった。そこには亜香里と椿が、互いに重なり合うようにして床で目を閉じていたのだ。


大方、この二人も俺から片時も離れず様子を見てくれていたが体力の限界がきてしまい。それでこうして二人揃って眠り込んでしまっている、とかそういう事なのだろう。


「二人も、ありがとうな。わざわざ俺のために、そこまでしてくれて……」


とにかく、こうまでしてくれる友人達には感謝しなければならない。


俺は小声でそう言い、亜香里と椿の頭を撫でた後に二人を包むようにして毛布を掛けてやった。


と、そこでまたララドーラさんが口を開く。


「……まあ、結局は二人共そうしたんだけど、最初に言い出したのは亜香里ちゃんなのよね。


そう言えばその時は亜香里ちゃん、何だかまるで切羽詰まったような感じだったわ、『私が翔君のためにしてあげられるのはこれくらいだから……!!』とか言ってね。


もしかして翔君、亜香里ちゃんに心配を掛けるような事を言ったとか、それか何かしちゃったんじゃないの? まあ詳しくは分からないけど、あまりこの子に無理させちゃダメよ? ここまでしてくれる友達なんてそうそういないもの」


なんと、それは知らなかった。というか、正直いつもオドオドしている亜香里が……なんて思うと、本当に驚きである。


というか、もしかすると最近亜香里の様子がおかしい(多分)ように見えたのは何と言うか、俺を心配しての事だったんだろうか?


まあ、それは分からないが……でも、ダンジョンの事と言い不調の件と言い、俺が彼女を不安にさせてしまっているのだけはまず間違いないはずだ。


そうならないよう、もっともっと頑張らないといけないな……いや、まずは体力を回復させるのが先決か。


そう考えた後、俺は再び目を閉じた。


亜香里と椿と、そしてララドーラさん。皆と自室の床で共に、寄り添うようにして。


「あら? もしかしてこの技もアプデで変わってるの!? そんな、困るわよ! 元の技は置き技として入れるのに最適だったのに……!


あ、でも発動フレームは前のより短いし、ヒット確認もできるのね……ふむふむ、なるほどアリだわ。


フフフフフ、ならこの技もきちんと練習しておかないとね……!! 面白くなってきたわ……!!」


ちなみにその皆というのには、女神様は含まれていない。

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