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四十七話 限界

「……あ、でも、さっきこんなのは見つけたけど?」


そう言って、突然思い出したかのようにガサゴソと服のポケットに手を突っ込んだのは椿だった。


「……え?」


まさか、本当に持っているのか? いやいや、俺でさえ持っていなかったんだぞ?


それを、亜香里と椿が所持しているはずもないというか、その可能性は絶望的とすら言えるあのポーションを……椿は、本当に持ってるのだろうか?


そして、その答えはと言うと……


「あったあった、はいコレ。さっきこのダンジョンの中で拾ったの。でも、今はそれどころじゃないと思ったから、皆には言ってなかったんだけど……」


「……おお、ポーション!! ソレだよソレ!!」


椿の取り出したそれは正真正銘、本物のポーションであった。


何という偶然、でも本当に助かった。これで俺も戦える、ララドーラさんの力になれるんだ。


という事で俺は椿からそれを受け取り、一息に飲んで心身共に回復を……


「ありがとう椿!! じゃあ早速それを渡して……」


「え、えっ!? 本当にコレ、ポーションなの!? そ、そっか……ま、まあ今は一大事なんだし、渡してあげたいけど、で、でも……!!」


と、しようとしたのだが、何故だか椿は抵抗する。


顔を赤くした彼女はポーションをまるで宝物のように抱き締めたまま、なかなか俺に手渡そうとしないのだ。そんな事をしている場合ではないというのに。


何か、訳があるんだろうか? 俺は椿に聞いた。


「どうしたんだ椿? もしかして、自分でもそれを使いたいとか? 何処か具合が悪いのか? でもごめん、今はそれどころじゃ……」


「う、ううん!! そういう訳じゃないの!! 全然、渡すのは大丈夫、で、でも……」


「でも?」


「の、飲みかけなの……私の……」


う〜ん、まあとにかく理由は分かった。どうやら椿は自分が口にしたものを俺に渡すべきかと悩んでいたらしい。


というか今飲もうとしている俺が言うのもアレだが、拾ったモノをよくすんなりと飲んでようと思ったな……もしかして結構、椿ってチャレンジャー気質なのか?


……まあ良いや。それがどんな状態であれ、手元にあるというだけで十分だ。


という訳で。


「何だ、そんな事か。良いよ椿、俺は別に気にしないからさ。じゃあ早速……」


「いや違、どっちかって言うと私が……ああっ!!」


俺は半ば奪うように椿からポーションを受け取ると、そのまま一気に飲み干した。そして。


「よし!! これで元気になった…………かもしれない!! まあ良いや、動けそうだし!!」


俺は完全復活……と、言いたい所だけど。


やっぱり、椿が飲んで中身が半分くらいになっていたせいだろうか?


全快とまではいかず、体力の回復は普段と同じかそれよりも若干不調、という程度までであった。


でも、これなら戦える。やっとララドーラさんに任せきりでなく、俺も加勢する事ができるんだ。


「じゃあ亜香里、椿!! 二人は下がってて!! 待ってろララドーラさん!! 今行くから!!」


俺はすぐさま、ララドーラさんの元へ駆け出して行った。


「し、しまった……!?」


「危ない!! ララドーラさん!!」


そうして、今にも彼女へと降り掛かろうとしていたドラゴンの爪を弾いてララドーラさんを守り。


「ありがとう……って、か、翔君!? アナタ、体調はもう大丈夫なの!?」


「はい、ポーションを飲みましたから!! それよりララドーラさん!! 早くトドメと行きましょう!!」


「……まあ、そうね、そろそろ私も限界だったし。それじゃあ、行くわよ!!」


その次は息を合わせ、今度は二人でドラゴンの懐目掛けて突撃した俺達は。


互いに手にした剣の双撃によって、遂にドラゴンを退治して見せるのだった。




腹を切られたドラゴンは、最後に一つ弱々しく吠えて地に伏した。


そしてそれ以降、ドラゴンが立ち上がる事はもう、二度となかった……この勝負、俺達の勝ちだ。


俺達は酷い状況にありながらも、こうして何とかダンジョンを攻略したのだ。


するとその途端、いつも通り周囲の石壁がまるで波に漂うかのようにぐにゃぐにゃと歪み始めたかと思うと。


数秒後には完全に消え去り、そうして俺達の意識は、視界は。元いた世界の見慣れた道に帰って来た。


良かった、と……まあ、本当にそれ自体は喜ぶべき事ではあったんだけど、でも。


「ふぅ、何とか攻略できたわね。これもアナタのお陰よ、ありがとう翔く……え? 翔君?」


「……す、すみませんララドーラさん、やっぱり全快じゃない時に動き過ぎるのは良くなかったみたいです。


も、もうダメそうなんで、後は頼みま……す……」


「ちょ、ちょっと翔君!? 翔君!!」


ポーションによるドーピング(?)のツケが回ってきたのか、以前よりも重く、強く、しかも突然に。


全身の疲労感に襲われた俺はとうとう限界となり、そこでとうとう、力なく倒れてしまうのだった……

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