四十四話 俺を唯一助けてくれる大人
「いや本当、すみませんねララドーラさん……この埋め合わせは必ずさせてもらうんで」
「別に、そんな事気にしなくて良いわよ……ところで、この子達は何なの?」
「か、翔君が心配で付いて来ました! 」
「私もです!」
「あ、ああ。そうなのね……」
はい、という訳で一件落着。俺を唯一助けてくれる大人こと、ララドーラさんに迎えに来てもらった。
今は彼女の操るママチャリの後部座席にて、送迎をしてもらっている真っ最中である。
(ちなみに、このママチャリは日頃のお礼にと俺が小遣いで購入したものだ、普段はララドーラさんがバイトの出勤なんかでよく使っている)
ちなみに言うと、付き添いの二人は亜香里と椿だ。
亜香里は最初から今の今までずっと側にいてくれて、椿はと言うと偶然にもまた待ち伏せ(?)していたらしく、そのまま合流したのだ。
だがそれにしても、本当に助かった……やはりララドーラさんは素晴らしい大人だ。不法侵入三昧、我が自宅でゲーム三昧の姉とは偉い違いである。
とは言え亜香里はもちろんの事、ついでに椿にも感謝しなければならないな……両者と本日出会った理由は真逆とも言って良いが、どちらも俺を心配してくれているのだけは紛れもない真実なんだろうから。
当然、先も言ったように必ずこの礼はさせてもらうつもりだ……あ、今言った〝お礼〟とは、ヤンキー達の使うような意味じゃなくてだ。
でも、お礼と言っても何をすれば良いかな? ……まあ良いや、それはまた今度、充分に回復できた後に考えるとしよう。
そうして俺は一旦全てを放り出し、少しでも身体を休めようと目を閉じた。
このすぐ後に、今度は頭が上がらないほど三人に感謝しなければならない出来事が起こるとも知らずに。
「ほらしっかりして! あともうちょっとで家に着くわよ!」
「か、翔君、大丈夫……?」
「生きてる、よね……?」
「いや死んでないって、大丈夫大丈夫」
暫く目を瞑っていたが、もう間も無く家に辿り着くという所までやって来たようだ。皆に掛けられた声でそれはすぐに分かった。
だがそれでも俺は目を閉じ、そのままの姿勢でいた。別に亜香里と椿が心配しているように死にかけているからではない。ただ単に眠くて仕方がなかっただけだ。
……いや、案外そうだったというか、本当に死にかけていたのかもしれないな。
何せこの時の俺は、皆の声が聞こえていながらも本能的に休息を求めるあまりにそうしていたのだから。(多分)
まあでも、着いた時にはちゃんと起きるつもりだし、その後もこの三人が側にいてくれるのだから何の問題もないはずだ。
そう、何の心配もする必要はないんだ……そうだとばかり思っていた。
でも、この時の俺は大事なことを忘れてしまっていた。恐らく、それは疲れからの失念というか、とにかくそのせいであるのは間違いないと思う。
とは言え、その事を俺は後悔した。してもし切れない、足りないくらいだ。
だって、それは一番大切な事…………
今日はまだ、ダンジョンの攻略が済んでいないという、絶対に忘れてはならない事を俺は失念していたのだから。
だが、運命というものは残酷なものだ。それを思い出した俺を嘲笑うかのように、目を開けたその直後。
まだ皆が側にいるというのに空間が歪み始め、そしてとうとう、俺達は……
「か、翔君! こ、これって……!」
「も、もしかして、またなの……?」
「マ、マズい! 皆俺から離れて……!」
「いいえ翔君、残念ながらもう手遅れみたいよ……それにしても、アナタのスキルで生成されるダンジョンってものは本当に厄介なのね、この私でさえ全く予知できないんだもの……はぁ、マズい事になったわ」
俺以外に今度は三人もの人物を残したまま、ダンジョン生成に巻き込まれてしまうのであった。




