表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/53

三十六話 あれから…… 2

「……ん?」


下校途中、突然にも声を掛けられた俺が振り返ると、そこにいたのは。


「……ああ何だ、椿か」


「え〜、何その反応? 市奈々井君、最近ちょっと冷たいんじゃない?」


呼んだ名の通り、あのヤンキー少女(?)こと榎本椿だった。


そんな彼女は俺と目が合うや否や、パタパタと足音を鳴らしてこちらへと近寄って来る……


「だってお前……昨日も一昨日もそうやって待ち伏せしてたじゃん、そりゃあこんな反応にもなるさ」


……椿を見た俺のリアクションが悪いのも、彼女を『榎本』ではなく『椿』と呼んでいるのも。


その全ての理由は、上記した俺の言葉に集約されている。


まあ、言った通りだ。ダンジョンに亜香里と椿と共に巻き込まれたあの日、あれから椿は何故だがちょくちょく、俺を待ち伏せ……ではなく。俺の元へとこうしてやって来るのである。


つまり、正直に言うと俺はその頻度が多過ぎるからこそややうんざりとしているし。尚且つ名前呼びを解禁したのも、それによって前よりも仲良くなったからなんだ。


というか、俺をうんざりさせるほどのレベルでやって来る椿も椿だ。他にやる事は……


いや、まずそもそもとして、以前共にいたヤンキー達とたむろしていなくて平気なのか? 呼び出されたり、最近付き合いが悪いと言われたりはしないのだろうか?


……なんて、思っていた時もあったが。


実を言うと、そのような心配をする必要はない事は既に分かっていた。


これはその張本人というか、あの俺と戦った(?)ヤンキー達と少し前に再開し、そこで聞いた話なのだが。


何でも、椿は正式な不良グループの一員という訳ではなく、単に幼少期から付き合いのある彼等と共にいるというだけであるため居てもいなくても特にお咎めなんかはないんだそうだ。


というか、彼等は純粋な椿には自身の素性を隠しているようだし(あれで隠せているのもある意味スゴいが)、どちらかと言えばあのヤンキー達の方が自身を咎めているような気がする……主に、話してくれた奴の口ぶりや様子なんかからして。


まあ、とにかくそういう訳だ。つまり椿は色々な意味で自由だからこそ、俺の元へと足繁く通って来るのである。


そして、そんな彼女が今日ここに来た理由はというと……


「……それで椿、一体今日は何の用だ?」


「決まってるじゃない、今日も奈々井君をデートのお誘いに来たの、場所はいつもの喫茶店ね、もちろん行くでしょ?」


まただ、またこれだ。というかいつものヤツだ。俺と椿とは、昨日も一昨日も、つまり二日連続でそこに行っている、それが何よりの証拠だ。


「またか。いや、行くのは別に良いけどさ、良い加減そのデートって言うのは……」


「口止め、しておきたいでしょ?」


まただ、これもまたいつもの決まり文句だ。


椿は俺が一瞬でも嫌がる(言うほどじゃないけど)態度を見せると、いつもこうやって俺を脅し、自身の目的を達成せんとするのだ。


ダンジョンがどうとか、俺がそれを攻略してるだどうとか、言いふらすぞ! と、俺を脅迫して。


まあ、そうした所で狼少年、いや狼少女と揶揄われ、嫌な思いをするのは椿だけだろうが、友人としてそんな彼女の姿は見たくない。


だからと言うか何と言うか、とにかく。俺には椿の言う通りにする他はないんだ。


「椿、お前なぁ……はぁ、まあ良いや。分かった分かった、付き合うよ」


「そう言うと思った! よし、それじゃあすぐ行こう!」


という事で俺は遂に観念し、椿と喫茶店に向かい始める。


だがそれにしても、純粋だったはずの少女がこれではとんだ小悪魔じゃないか……これも全部、ダンジョンのせいか? ダンジョンのせいなのか?


あれの悪影響か何かで、椿はこうなってしまったんだろうか? 以前はあんなにも素直な女の子だったと言うのに……まあ、今もそうではあるんだけど。


でも、ごく一部の彼女だけはそうではなくて、むしろ…………なんて事を考えながら。




そのような思考を続け過ぎたせいだろうか。どうしても気になって仕方がなくなった俺は。


最早居ても立っても居られず、結局喫茶店で椿にそれとなく、いや割とストレートに聞いてみた所。


「な、なあちょっと良いか? 椿、お前最近口止めを口実にしてデートとか言って何かと誘って来るけどさ、何と言うか……ど、どうかしたのか?


何か悩みでもあるのか? いやまあ、意味分からないこと言ってるってのは自分でも分かってるけどさ、でも前はそんなタイプには見えなかったから、少し気になった、というか……」


「う〜ん……実はね、私にもよく分からないんだけど。でも、怪我していた所を市奈々井君に助けてもらって、ううんそれだけじゃない、ダンジョンに入っちゃった時も何とかしてくれて。


私にそこまでしてくれた男の人って初めてだったから、尊敬? してるっていうか、何となく好きだな〜って思えて、それでしょっちゅう会いに来てるってだけ。


まあ結局の所、私はもっともっと市奈々井君の事を知りたい……の、かも? アハハ、自分でもよく分からないや、でもさっき言った事は全部本当だよ?」


「そ、そっか……」


椿は俺と同様、割にストレートな表現でそう答えてくれた。


……まあ、それについての俺のコメントなんかは特にない。別に恥ずかしいからとかそういう訳じゃなく。


いやでも椿の奴、あんまり好きだとかそーゆうのを直接本人に言わない方が良いと思うけどな……俺だって。


じゃなくて。いくら相手だって、そんな事急に言われたら意識しちゃうだろうしさ……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ