三十二話 決戦 ララドーラ!! 2
時間がない。そんな事は嫌と言うほど分かっている。分かっては、いる。
だというのに、ダラダラと戦闘を長引かせてしまっていた……これは、そんな俺へと下された罰なんだろうか。
今も尚、ララドーラと戦い続ける俺の目前で数秒程後に、最も恐れていた事態が起きてしまうのである。
ああ、なんて事だ……これは俺のせいだ。全部全部、俺のせいだ……最初こそ、俺はそうして頭を抱えた。
だがしかし、後にそれが俺を救う最大の武器になるとは、この時の俺はまだ何も知らない……
戦いがあまりにも長引いたせいか、俺達はいつしか思考するでもなく、自然と息を整える時間を欲していた。
「ハァ、ハァ、翔君……本当に見直したわ。アナタ、結構強いじゃない。お世辞なんかじゃない、これは心からの言葉よ」
「ハァ、ハァ……ララドーラ、お前もな……」
そして、それは殆ど同時にだった。つまり、俺もララドーラもだ。
俺達は時を同じくして振り上げる剣を、魔法を放つその手を止め、肩で呼吸をした。声まで交わした。
……まさに、その時だった。
「よし!次ははあっちに行ってみよう……って、あれ?」
「あれってもしかして、市奈々井君?」
「本当だ! 市奈々井君だ! 何だかデカい剣まで持ってる!」
「ひ、ひえぇ……俺達皆、アレで殺されるんじゃ……」
ダンジョンの通路、正確に言えば俺がやって来た方向にあるその奥から、聞き覚えのある複数の声が響いたかと思うと。
そこからぞろぞろと生徒達が姿を現したのは。
「え、え!? な、何してるんだアイツらは……!?」
呆気に取られ、そう口に出してしまった。
だって仕方ないだろう? 俺は生徒達に静かに、そしてその場で大人しくしていろと、きちんとそう伝えたはずなんだから。
でも、本当にどうして……とは言いつつも、何となく予想はできる。
おおかた最初こそ俺の指示通り待機し続けていたが、段々と自分達の置かれた現状が不安となり。
そして最後には痺れを切らして、その打開のため移動を始めたとか、まあそういう所なんだろう。
はあ、全く困ったものだ。いくらこのような状況とは言え、すぐに色々と無視して行動するのはむしろ命取りだぞ……なんて。
本来、余計な考えなどしている場合ではなかったというのに、にも関わらず俺はしてしまっていた。
他の生徒達には命取りだの何だのと言いつつも、その実本当に取り返しのつかないというか、致命的な失敗をしていたのは俺の方だったんだ。
だからこそ、その天罰が雷と形を変えて俺に下されたのだ。もっと言えば、ララドーラから放たれた雷魔法として。
「翔君、予想外の展開に困っているんでしょうけど、流石にちょっと油断し過ぎなんじゃない?」
「え?……あ、し、しまった……!!」
そしてその雷は、俺に命中……ではなく、間一髪で避けられたものの。
その時に思わず剣を手離してしまい、俺はなんと。
戦闘の真っ最中にボスの目の前で丸腰になるという、大失態を犯してしまうのであった。
「ま、マズい……!! このままだと……!!」
敗北……それどころか、最悪の場合は俺の命が。
いや、今回はそれだけじゃない。他の生徒達の命もだ。俺はそんなものまでもを、自身のミスによって危険に晒してしまったんだから。
というか、剣を失った今となってはもう、ダメかもしれない……けれども。
だからと言って「はいそうですか」で簡単に終われる程、俺達は人生を長く生きてなんかない。
まだ、諦める訳にはいかないんだ。ここで俺が諦めてしまえば、全員の未来が閉ざされてしまう。
「チッ、アイツらガヤガヤと本当に五月蝿いわね……まあ良いわ。さあ翔君、最後は苦しまないよう、魔法じゃなく剣で真っ二つにしてあげるわ!
これで終わりよ! 安心して逝きなさい! 寂しくないように、すぐにあの子達もあの世に送ってあげるから!」
「そんな事……させない!! まだだ!! まだ俺は諦めないぞ!!」
覚悟を決めて満身創痍から何とか立ち直り、ララドーラの一撃を回避して見せた俺は。
どうにか妙案を絞り出すため、ひいてはここから勝利を掴み取るため。頭をフル回転させて策を練り始める……




