三十一話 決戦 ララドーラ!!
ダンジョン最奥、そこは広々とした空間……以外に何も無く、まさにがらんとした場所であった。
ただし、ただ一人そこに立ち、俺を今の今まで待ち構えていたのだろうボスを除いて。
そして、そんな何もない最奥で俺を待ち受けていたボスとは……頭部に三本のツノを持つ、緑髪の妙にファンタジックな格好をしたあの人物。
「フフフフ、随分と早かったじゃない翔君。他の子達もいたからもっと苦戦すると思っていたんだけど、少し見直したわ。
でも、それもここまで。アナタは今から私に倒される運命なのよ、フフフフ……」
正直、それはないだろうと。幹部がわざわざ出向くなどあり得ないだろうとばかりに思っていたが。
実の所その通りだったらしく、どうやらこのダンジョンのボスはララドーラ、彼女が務めるようであった。
いや、『勤める』が正解だろうか? だって彼女は魔王側に付いているんだし、ここを担当しているというか、これも仕事の一つだったりするんだろうし。
……まあ、そんなのは良いや。
とにかく、俺はララドーラと再会できて満足だった。それこそ願ったり叶ったりだ。
俺は彼女を女神様サイド、つまりこちらへと引き入れ(戻すと言うのが正しいだろうか?)、魔王についての情報を聞き出したいとさっきから。
いや、彼女と初対面したあの時からずっとずっと、そう考えていたんだから。
「……ララドーラ、それはこっちのセリフだ!! ここで倒されるのはアンタの方なんだよ!! そう運命で決まってるんだ!!
もちろんその後に女神様と仲直りして、魔王について知ってる事を全部包み隠さず俺達に白状するって事もな!!」
「あら? 翔君、何だかよく分からないけれど、アナタすっごいやる気みたいね? まあ良いわ、むしろそうこなくちゃ、私の相手は務まらないもの!!」
「そのセリフ、そのままそっくり返してやるよ!!……って、さっきから鸚鵡返しばっかりしてるような……? ま、まあ良いや!!
行くぞララドーラ!! お喋りはここまでだ!!」
そうして、俺と魔王軍幹部との戦いが幕を開けた。
「喰らえっ!!」
「甘いわ!!」
互いに得物は一本の剣。それが交錯し、時には衝突し。鋼同士のぶつかり合う金属音がダンジョン内を木霊のように駆け抜ける。
だが、流石は魔王軍の幹部と言った所か。彼女は剣技一辺倒というだけではなかったようだ。
「今度はこっちの番よ!! 喰らいなさい『雷撃』!!」
鍔迫り合いの隙を縫い、ララドーラは俺へと雷魔法を飛ばしてくる。
流石に剣で受けては感電してしまう……そこで俺は素早く後方に退き、攻撃自体を躱す事で何とかその危機を免れるのだった。
「ふぅ、やり辛いな。色々な意味で……」
……そう、上記したように俺達は結構良い勝負というか、なかなか決着がつかずにいるというか。
とにかく、俺はララドーラを相手に、意外にも苦戦を強いられていた。
だが、剣を合わせた今だからこそ言える。今目の前にいる彼女には、恐らく本気さえ出せばフツーに勝利できるのだろうと。
とはいえ、現状を見れば信じられないと言われても仕方がないだろう。
でも、俺は別に嘘を吐いているのでも、その予測が間違っているのでもない。先程話した内容は全て真実、誓ってそうだと言えよう。
(まあ、後者の方は多分ではあるが)
では、何がためにこんな状況になってしまっているのかと言うと……思わず呟きにしてしまった通り、やり辛いのただ一言なのである。
そうだ。やり辛いんだ。俺は彼女との戦いというものが非常にやり辛くて堪らないんだ。
まず第一に、ララドーラが純粋に、かつ予想外に結構戦えるというか、強いというのもある。
それもまた真実だ、はっきりと認めよう。俺は相手の実力を見誤る程未熟ではない。
それ程までに戦ってきたという自負があるからな。まあそれも、コイツらの製作(?)したダンジョンのお陰……いや、その所為なのだが。
で、次に二つ目……というか、正直に言うとこれが殆どの原因を占めているんだけれど。
……ララドーラ、彼女が女神様の妹だと言う事だ。そして先も言ったように、これこそが俺を今現在最も悩ませている問題でもある。
だって、なあ……普通のボスならともかく、あの女神様の妹なんだぞ? 倒すなんて愚か、傷付けるのも気が引けるというものだ。
というか、まずそもそもとして彼女にはこちら側に戻って来てもらい、いわゆる『光堕ち』をしてもらって。
尚且つ、俺達に魔王についての情報提供をしてもらいたいというのが本音なんだから、撃破なんてできるはずがないのだ。
だがしかし、そのために手加減しなくてはならず、また今の今まで魔物相手にそんな事をした経験も、必要もなかった俺にはその加減自体があまりよく分からず、こんなグダグダとした戦闘になってしまっていると。
……まあ、そういう訳なのである。
けど、そんな事をしている時間なんて、本当はこれっぽっちもないんだけど……いや、そんなのは俺自身最も良く分かっているのだが。
それでも、それでもそこには。全てにおいて今一歩踏み出せない自分がいた。




