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二十九話 防災訓練 2

しかし、それでも残酷に時は過ぎてゆく……まあ、残酷でなくとも過ぎてゆくものだ。


そうして普段以上の居心地の悪さを感じながらも俺は授業を受け、日本史、数学、休憩時間とそれは続き。


「大きな荷物が届きました。繰り返します、大きな荷物が届きました。学生の皆さんは先生の指示に従い校庭に移動して下さい。繰り返します……」


だがその途中、全てを断ち切り我ら学生へと向けたそのようなアナウンスが校内に響き渡った。


いよいよ防災訓練の開幕だ。俺達はアナウンスの通り、教師の先導に従って校庭へと移動を始める。


また、今回はどうやら『不審者が学校に侵入した』という想定で行われるものであるらしい。


その者を刺激しないよう、当該人物を荷物として我々に伝えているのが何よりの証拠だ。


……が、残念ながら俺の予想していた通りの未来が現実となる。


今までも、そして昨日で殊更に自己評価を爆下げした俺は周囲から距離をこれでもかと置かれに置かれ、置かれまくり。


しかもそれだけでなく、移動した先にいた別クラスの者達まで、俺を目にした途端に離れようと指示を無視して動き出すわ。


「あの人、昨日校門前にいたヤンキーと喧嘩してた人だよ……」だの何だのと口々に言い、騒つきまくるわで居心地は最悪だった。


だがそれにしても……はぁ、全く。今は訓練とはいえ、避難している真っ最中だと言うのにこれか。


いやまあ、俺のせいなのは重々承知してはいるが、それでもだ。こんなんでは、もし本当に不審者が来た時に大変な事になってしまうかもしれないぞ?


……などと思っていた、その時だった。


「これほど大勢の人間と共にダンジョンに放り込まれれば、流石の翔君も……フフフ、もうこちらの勝利は決まったようなものね」


未だ会話ばかりして落ち着かぬクラスメイト達の中でただ一人、そのような事を呟く者の存在に俺が気付いたのは。


「これは、不審者……じゃなくて」


女神様以外の者で、この世界でダンジョンの存在を知っている人物は俺と亜香里と椿。それくらいのはずだ。


だが、その誰でもないだろう声や口調、発言だってそうだ…………なら、多分。


これは、ララドーラだ。アイツがここにいる。


「も、もしかしてララドーラか!? だとするとマズいな……と、とにかく!! 早く一人にならないと……!!」


俺は漸く彼女の事を思い出し、すぐに皆を巻き込まぬよう移動しようとしたが……既に手遅れだった。


突如として、周囲の空間が歪んだように見えたかと思えば、すぐにまた景色が別のものと変化してゆくという。


普段よく見ている現象に、俺だけが既視感を覚える……ダンジョンが生成され始めたのだ。


しかも、よりによってこんな所で。


「クソッ!! 遅かったか!! まさか、他の奴も一緒にだなんて……どうしたら良いんだよ!? 本当にどうしたら良いんだ、俺は!?」


俺は頭を抱えるばかりだった。


だってまさか俺だけ。いや、今回はクラスメイト達もか。


それが、ガチの訓練ではない災害(?)、そんなものに見舞われるだなんて夢にも思わなかったんだから。




ただ幸い、ダンジョンに放り込まれた同級生達は皆まだ目を覚ましてはいない。俺一人を除いて。


それに、どうやらあまりにも人数が多過ぎたせいかダンジョンにも生徒達全てを取り込む事は不可能だったらしく。今現在、ここにいる生徒達は一クラス分くらいだろうか? とにかく、それくらいである。


……が、これが良くない状況と言うのには何ら変わりがない。


というか、コレはもしかすると。他の生徒達には俺含めた一部の者だけが突然消えたみたいに見えていて、外の世界では大パニックになっているんじゃないか!?


まあ、本当の所は分からないにしても今回のダンジョン攻略だけは出来るだけ速攻、最速最短で終わらせないといけないな。


という訳で、俺は他の者が目を覚ますのも待たずにダンジョンの攻略を始めた。


というか、覚醒したらかなり面倒な事になるからな、むしろそれまでの間が勝負なんだ。


だがしかし、まずは最初にいた地点の近くにいる魔物達を殲滅しておこうと、奴等と戦い始めた時に俺は気付いた。


そんな魔物達はというと。以前はボスだったはずのオークや、それと同等の巨体とパワーを持つミノタウロス、他にもギガンテスや、果てはドラゴンなんかもいたりして。


つまり、ここは強力な魔物達が蔓延る、かなり攻略困難なダンジョンであるという事だ。


この俺でさえも、魔物一体の討伐に数分程度の時間を要するくらいにはな……だが、それにしても。


本当に迷惑というか何というか、何故こんな時に限って攻略の面倒なダンジョンが生成されるんだよ……ララドーラはそれ程、本気で俺を倒そうといつつもりなんだろうか?


まあ良い、頭より身体を動かさなくては。


真相が何だろうと、今の俺にはどの道戦い続ける事しかできなかった。

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