二話 異世界の扉
その女性が言うには、死にかけた俺は天国か地獄か、それは分からないがその辺りを、もとい死の淵を彷徨い。
辛くも生還を果たしたが、しかし。一度そのような場所に踏み込んだ事で異世界の扉を開いてしまったらしく。
例え元の世界に戻ったとて、二度と今までのような暮らしはできないのだそう……
と、言う話を相変わらず訳も分からないまま俺は聞かされたのだが。
もちろん、その女性の話には続きがある。
だがしかし、随分と長かったので要約させてもらうと。
上記したような事柄、つまり一時的とはいえ異世界の扉を開いてしまったがために。
その者の付近ではこの世と〝それとはまた異なる世界〟との空間が不安定となり、時折、別世界の〝ダンジョン〟とやらが生成されてしまうようになるという……
まあ要するに、俺はそのような現象によってスキル『ダンジョン生成』を手に入れてしまったんだそうだ。
ちなみに、誰でも思うような疑問を質問と変え、女性に投げ掛けてはみたのだが。
「でもそれって、スキルとは呼べなくないですか?」
「アナタだけがこの世界でこの現象を発生させるただ一人の存在なのです、そんな唯一無二の能力をスキルと言わずして何と言うのですか?」
と、このように何だか納得できないような説明で済まされてしまっている。
それと、もう一つ。
まあ、夢幻のような空間で俺に話し掛けているのだから何となくは分かるとは思うが。
この女性は自身を異なる世界の女神だとか何とかと話していて……とにかく、今の所自称ではあるが結構凄い人物だったらしく。
そんな女神様が何と、冥府へと落ちる直前に善行をした俺の不幸が確定している未来を憐れんでか。
「そのような方が苦しむと言うのは見たくありません。なのでこの私が力を貸してあげましょう」
などと言って、俺にある力を与えてくれた。
それは彼女曰く『レベル』の概念だと言う。
それさえあれば、俺はこの世界で唯一レベルアップする事が可能になるそうで。
まあ要するに、その力のお陰で俺は付近で生成されるダンジョンからは逃れられないものの。レベルによって身体能力を向上させられるために、生存率が飛躍的に上昇するはず……なんだそうだ。
まあ当然、いきなりそんな事を言われてもさっきの話と同様、これっぽっちも信じられなかったのだが。
とはいえ、時が過ぎゆくうちに俺は自然とそれらの話を、つまり俺の持つ厄介なスキルと女神様に与えられた力を徐々に理解し、受け入れていった。
……いや、正確に言えば強制的にか。
誰だって否応無しに生成されるダンジョンと、そこにいる魔物達に襲われれば嫌でも向き合わなければならないんだからな。
例えば今のように。もっと言うと、ボスモンスターとの戦いを繰り広げていたついさっきみたいに。
(ちなみに言うと、そのボスとはデカいスライムだった)
だが、それも難無く終える事が出来た。当然ながら結果は俺の勝利でだ。
まあ、こんな目に遭ったのは一度や二度ではない。今まで散々と言えるくらいダンジョンには挑戦しているんだからな。もう慣れたものだと言えよう。
(もちろん、したくてしているのではないけれども)
今日なんて特にだ。何せ、この道は俺が必ず通らねばならない自宅へと続くただ一つの道なのだから。
だと言うのに、また突然にダンジョン化しやがって……はぁ、お陰で随分と帰りが遅くなってしまった。
日はすっかり落ち、時間だけでなく腹まで減ってきた。今日はもう、さっさと家に帰るとしよう。
そう決めた俺はダンジョンを抜けるとすぐに、足早に自宅へと歩を進めた。
そうして、やっと帰宅出来た。
「…………あれ?」
と、思っていたというのに。玄関扉に触れた直後、俺は妙な違和感を覚え立ち止まった。
何と言えば良いのだろう、上手い例えが見つからないが。
この感覚は何処か『付近にダンジョンが生成される時のような』、ここは普段の街とは違うのだと言う妙な予感と酷似しているのだ。
そう、異世界からの扉が開かれたまさにその時のような……あ。
なら、これはダンジョンの出現でなくて、〝あっち〟か。なら心配は要らないな。
どちらも面倒な事には変わりないが……とにかく。
俺は〝ある事〟を確信し、今度こそ家の扉を開けた。
すると、そこで俺を待っていたのは。
「あら翔君、お帰りなさい。今日は少し遅かったのねぇ」
読み通り、あの時俺に色々と話してくれた女性。
もとい、女神様だった。
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