二十三話 最悪な出来事 4
「か、翔君! あんな所に宝箱みたいなのがあるよ! あ、開けてみる……?」
「ダメだ亜香里! それはミミック……じゃなくて。か、勝手に誰のものとも分からない宝箱を開けるのは、あんまりよくないんじゃないかな?」
「ねえ市奈々井君、さっきの変なヌルヌルがこんなのを落としていったんだけど、コレって何なのかな?」
「ああ、それはポーション……じゃなくて。お、俺もよく分からないな、何だろうな? 飲み物、とか?」
今の会話からも分かるように、スライムとの一戦の後もまあ幾つか色んな意味で危ない場面はあったものの。
何とか俺はボロを出さず、また三人共全員無事でダンジョンを歩き進められている。
そして今はもう、ダンジョンも終盤という所であった。
とはいえ、正直に言うと今回のダンジョン攻略が今までで一番疲れたかもしれない。
何せほぼ下着姿同然。つまり、あと一撃も被弾を許されない程度の防御力しかない二人を守りながらというだけでも疲労感がマックスだと言うのに。
加えて彼女達には、色々と誤魔化しながらそれを続けなければならないのだから。
例えば上記したような場合とか、他にもこんな感じで……
「ね、ねえ翔君、翔君ばっかりに無理させてごめんね。わ、私にも何かできる事とか、あったりしないかな……?」
「亜香里のせいなんかじゃないんだから、そんな事は気にしなくて良いよ。というか、俺にとってはこんなのいつもの事だし」
「え、え!? こ、こんなのがいつもの事なの……?」
「あ、違……ゲ、ゲームでさ! いつもよく見るようなパターンだからさ!」
亜香里にはこうして真実を隠し。
「ねえ市奈々井君、私達を守りながら戦ってくれてるのは本当にありがたいんだけど……何だか、戦い慣れているように見えるのは気のせい?」
「ん?まあ、この剣はいつも使ってる奴だから、もう手に馴染んでるというか」
「えっ、そうなの? 市奈々井君、それさっきそこで拾ったとか言ってたような気がしたけど……!」
「あ、いや、間違えた! いつもバットで素振りとかしてるからさ! こういうモノには手が慣れてるんだよな〜って!」
椿にはいつも使っている剣……じゃなくて、さっき拾った剣の事をはぐらかし。
まあ、ここまで言えば嫌でも分かっただろうが。とにかく、色々と偽り過ぎた俺は疲れてしまったんだ。
確かに、戦っている魔物はさっきからずっとスライムばかりではあるが、それでもだ。全く、一体全体何なんだ? ここはスライム尽くしのダンジョンなのか?
だが、それももうじきに終わる……歩いて歩いて歩き続け、漸くダンジョンの最奥が見えてきたんだ。
あとはこのダンジョンのボスを倒すだけ、そうすれば全てが終了だ。それでこのマズい状況とも、二人にあらゆる物事をひた隠しにしなければならない現状ともオサラバできるのだ。
だからこそ、俺は普段とは違い早足でダンジョンを歩き進めた。
これもまた普段とは違う、両肩にのしかかる重圧(?)から解放される事を夢見て。
そうして最奥に辿り着き、俺達三人を待ち受けるボスモンスターの姿が見えた直後。
「よし!」
俺は二人に気付かれぬよう、こっそりとガッツポーズを披露して見せた。
何故か? 答えは簡単、ボスモンスターがその中でも特に弱い奴であったからだ。
それは先程二人の服を溶かした奴よりも二回り、いや三回りは大きいかというくらいのスライム、正しくはメガスライムだった。
……なるほど、さっきからやけにスライムが多いとは思っていたが。予想通り、ここはやはりと言うべきか最後までスライムたっぷり、スライム尽くしのダンジョンだったようだな。
そしてこのメガスライム、見た目も色艶も先程のスライムとほぼ同じである……まあでも、その部分はむしろ嬉しいというか、ラッキーだと言えよう。
だとすればコイツも多分、触れた所で服を溶かすくらいしかしてこないんだろうし、本当に今日はラッキー……
とはいえ、コイツ言う程弱くはない。
道中のザコよりも体重があるため、油断していると押し潰される危険があり。それに何より、ステータス自体はソイツらの倍以上だ。
なので一応、気を引き締めなければならないのだ。あと、二人を避難させるのも忘れずにな。
「な、何アレ……今までの変なヌルヌル達より、だいぶ大きい……」
「や、やっぱり、これまでより強いのかな?アレ……」
「大丈夫、俺が何とかするさ。二人はここで待っててくれ。何かあったら危ないからさ」
「し、市奈々井君……!」
「か、翔君! き、気を付けてね……!」
という事で、俺は二人を通路の隅に残して一人前進し、メガスライムの前に立った。
「さあ始めるぞ!! メガスラ……おっと、変なヌルヌル!!このダンジョン最後の戦いだ!!」




