十二話 ララドーラ 2
「ララドーラ……やっぱり貴女だったのね!!」
どうやら女神様は、我が家のテレビより現れた◯子もどきを知っているらしい。
だが俺は彼女の事を何も知らない。それはそれはもう、全くもってこれっぽっちもだ。
というか、某ホラー映画の怪異が如く現れる奴がもしも知り合いにいたとすれば、むしろ忘れる方が難しいというか、余程の事がなければ失念などするはずもないだろう。
だから俺は絶対に、絶対にこの女とは初対面であるのだ……一応、その証拠として。
とうとう全身をテレビから露出させた彼女は何と。額と頭の左右に一つずつ計三本、ユニコーンのようなツノがあり。
髪も緑色をしていて、尚且つ我々人間には出せないと言うか、自然だというか……何と言えば良いか難しい所だが、多分この色はオリジナルだ。地毛でこの髪色をしているのだ、この女は。
そして服装もまたこちらの一般的とは随分異なるもので、説明が難しいが漫画やアニメなんかによくいる巫女さんと魔法使いを合体させたかのようなものをしている……と。
ここまで彼女の様子を説明してきたのでもよーく分かっただろうが、それでも改めて言わせてもらうと。
俺がこのようなとんでもないというか、ファンタジックというか。とにかく。
そんなような姿形をした異質な彼女……ララドーラを知っている、もしくは忘れているだなんて有り得ないのである。
「久し振りね女神、それと翔君……だったかしら?アナタと会うのは初めてね」
一方、ララドーラは俺の事を知ってはいるようだが……
「ララドーラ!! 大人しく答えなさい!!どうして貴女が私よりこのゲーム強いのよ!? どうして私のクセをすぐ見抜けるのよ!?」
……女神様のせいで、ものすごくどうでも良い質問が先に来てしまったが、とにかく。
何故、ララドーラは俺を知っているのか?
彼女はこんなにもファンタジックな見た目をした、女神様とも顔見知りである人物なんだぞ?いや、人物であるかどうかも怪しいくらいの奴だ。
それが本当に、何故なんだ……考えれば考える程に嫌な予感しかしない。だってそれは何だか、俺のスキルやダンジョンそのものに関係がありそうでならないから。
そう思うと居ても立っても居られず、気が付けば俺は女神様の質問に答えが来るのも待たずしてララドーラへと疑問をぶつけていた。
「アンタ何者だ? 何で俺の名前を知っている?」
「あら、知ってるに決まってるじゃない?アナタは私が頑張って作ったダンジョンを何度も何度も台無しにしてくれちゃった仇敵なんだもの。忘れたくたって忘れられないわ」
すると幸いにもツッコミの必要はなかったようで、ララドーラは冷静に拾うべき疑問だけを選定し、かつしっかりと拾い。
つまり、女神様の質問を完全に無視した上で俺に返答を寄越してくれた。
……は、良いとして。
コイツ今、『ダンジョンを作った』とか言ったな。あの魔物達蠢く、不用意に立ち入れば〝そちらの世界〟の者だろうと危険に晒されるであろうあのダンジョンを。
まさか……もしかすると、このララドーラとか言う奴こそがダンジョンが生成されたりする全ての元凶ではないのだろうか……?
「フフフ、驚いてるようね……」
だがしかし、いくら待てどもララドーラは不適な笑みを浮かべるばかりで、気になる次の言葉をなかなか紡ぐ気配はない。
そこで、俺がまるで痺れを切らすかのように……いや、事実その通りだったのだろう。
俺は我慢できなかったのだ。彼女は一体何者なのか。そして俺の……というか、俺のスキルである『ダンジョン生成』にどんな関係があるのか。それを知りたいがあまりに数秒すら耐えられなかったのだから。
とにかく、そうして女神様を見遣ると。俺からの視線を受け取った彼女はゆっくりとこう語り出した。
「翔君……この子はララドーラ。私の妹であり、この子もまた女神……だったのは昔の話。
今は魔王軍の幹部をしている……つまり、私達の敵よ」
遂に姿を現したララドーラなる者は。
女神様の妹かつ元神。だが今は俺達の敵であるという、異色も異色の経歴を持った者であった。
そんな彼女がここを訪れた理由とは?その目的とは一体何なのだろうか?
その真実が今、彼女の口から直接明かされる……!!
かとばかり思っていたのだが。
「フフフ、お姉様もゲームで圧倒できたし、翔君も驚かせられたから満足したわ。じゃあ、今日のところはこれくらいにしておいてあげる。またねお姉様、翔君」
何と、ララドーラはそんな事を言って早々に姿を消してしまったのだ。
ちなみに、その際はテレビに戻るのではなくごく普通に、いやよくよく考えると普通ではないが、魔法陣の中に消えるようにして彼女はいなくなった。
……何がしたかったのだろう?
まあ、当の本人がいなくなってしまったのでそれは分からずじまいであったが、彼女の事は後に女神様が詳しく話してくれた。
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