十話 倉井亜香里
ダンジョンの出現や遅刻などなど、様々な出来事があったが今日も無事学校が終わった。
だがしかし、何だかとても疲れてしまったような気がする……それもダンジョン攻略中と同じくらいにだ。
まあ、学校にいる間にも色々とあったからな。例えば一時間目が終わる直前。
「これ、さっきのプリント……」
「ヒッ!! す、すみません!! 市奈々井君の分もすぐに持って行きますから!!」
「あ、いや違……さっきのプリント回してるだけだか、ら…………い、行っちゃった」
前の席から回ってきたプリントをそれに倣い、俺も後ろに流したというだけなのに、同級生の男子が何か勘違いしたらしく、俺の分まで持って廊下に駆け出して行ったり。
「ごめん、そのパンが欲しいからちょっと退いてもらえ……」
「あ、し、市奈々井君!? す、すすすすみません!! すぐに買いますから殴るのだけは……!!」
「え?いきなり何言って……って、い、いやちょっと待って!! 違うから!!ちょっと退いて欲しかっただけだから……!!」
お昼休みにはやりたくもないのに、購買で同級生の女子をパシリのようにさせてしまったし。(勿論、後でお金は返した)
それと、午後の授業なんかでは。
「翔君、翔君、困った事になったの。助けに来てはくれないかしら?」
「ちょっと女神様、止めてくださいよ学校まで来るのは……っていうか、他の皆にバレたらどうするつもりですか?」
「心配いらないわ、今は魔法でアナタにしか見えないようにしているんだもの。それより翔君、お願いだから早く家に戻って私を助けに来てはくれないかしら?緊急事態なのよ」
「……それで、どうしたって言うんですか?家で何かあったんですか?」
「それがね……実はコントローラーの充電が切れてしまったみたいなの。でも、充電用のケーブルが何処にもなくてね……アナタにも一緒に探して欲しいのよ」
「いや、そんなしょうもない理由でわざわざ来ないでくださいよ!! どの道無理ですから!!
分かります? 今授業中ですよ!? っていうか留守の時にまでウチに入り込んで来て何やってるんですか!?」
突然にも現れた女神様がこれまたふざけた頼みをしてきたせいで、授業中だというのに大声でツッコミを入れてしまい。
更には女神様が他者には見えない事から、俺がただ一人で訳の分からない発言を始めたと誤解されてしまい教室がザワついたりと。
とにかく、そのように面倒事の尽きない一日であり、だからこそ俺は疲労感を覚えてしまったのだ。
最後のヤツは特に、恥ずかしいわイライラさせられるわで最悪の気分だった。
まあでも、漸くそれも終わり後は帰宅するのみ……しがダンジョンは既に攻略済みであるため、またあそこへと放り込まれる心配もない、今日一日だけではあるがな。
とはいえ、そのお陰で今日はゆっくりと過ごす事ができそうだ……などと考えていた時。
「か、翔君! 今日、一緒に帰らない?」
本日初めてとなる、俺に屈託のない笑みと言葉を投げ掛ける者があった。
振り返ると、そこには小動物的方向で可愛らしい姿形をし。また顔立ちも整っていて、特にクリクリとした目が印象的……では、あるのだが。
長い前髪によってそれは覆われていて、尚且つ随分と大人しい性格というか、常にオドオドとしているので余計に影の薄い存在と感じてしまう、俺にとってはお馴染みの同級生女子。
その名も倉井亜香里。彼女が俺の服の袖を掴んでいるのが見えた。
「おっ、亜香里じゃん。勿論良い……けど。あんまり俺と一緒にいると、変な噂されるかもしれないぞ?」
「そ、そんなの別に気にしないよ! か、翔君が本当はとっても優しいって事、私は知ってるから……! 」
「あ、亜香里……!! お前本当に良い奴だな……!! ああ一緒に帰ろう!! すぐ帰ろう!! それと帰りにコンビニ寄って行かないか? お前になら何でも奢ってやる!!」
「よ、寄り道はダメだよ翔君……!」
あれこれと話しながらも、俺達は共に下校を始めた。
亜香里と俺とは幼馴染みなのだ。そして、互いに何でも話せる間柄でもある。
例えばそう、俺はこの学校で唯一、髪を上げた亜香里の可愛さを知っているし。亜香里は亜香里で俺の内面をきちんと理解してくれている、というくらいにはな。
というか、殆ど全て知っていると言っても過言ではないかもしれない。もちろん、その全てにはダンジョン関連の事柄は含まれていないが。
流石にそこまではいくら亜香里と言えど話せないからな……というか、何と説明すれば良いか、突拍子もなくそのような話をしたら彼女に何と言われてしまうか、それすらも分からないのだから。
だとしても、それ以外に隠し事などない。いや、彼女にはそんな真似をするつもりなどないというのは本当だ。
ただ時折、何だか無性にその辺りの事を誰かに愚痴りたくなってしまう時もあるが、それでもだ。
とにかく。そうして俺と小動物、ではなくて小動物のような亜香里とは帰路に着くのだった。
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