第二十八話 『出られない部屋』の悲しい末路
『〇〇しないと出られない部屋』
そこに閉じ込められて丸二年。もう三年目に突入している。
その間、俺と凛々子はこの部屋から一歩も外に出ることなく、室内でのんびりと過ごした。
普通の学生なら、学校で勉強しているこの時期に。
将来のために勉強をして、自分の未来を豊かにするために努力している彼らに対して、俺たちはただただ時間を浪費するだけだった。
「勉強もしていない。ましてや、何か特別なスキルを磨いていたわけでもない。今ここにいるのは、ただのへたれオタクと、おバカな地雷系少女だけだ」
「おバカじゃないもん。勉強が苦手なだけ」
「ああ、そうだな。つまりバカだ」
「お、オタクくんもわたしと同じちゅーそつじゃん? ばーかばーか」
「中卒が必ずしもバカというわけではないだろ。むしろ世の中には、高校に行かずして成功している人間はたくさんいる」
「じゃあわたしたちも大丈夫ってこと?」
「いや、彼らは違う才能を持っているか、必ず成功してやるという野心を持っている。そのどちらも俺たちにはない……つまり、終わりだ」
凛々子は楽観的な人間なので、将来のことなんて微塵も考えた来なかったのだろう。
今が楽しければそれでいい。そうやって目の前のことしか見えないのは、凛々子のいいところでもある。彼女が無駄に明るくてポジティブなのは、そういう性格のおかげでもあるだろう。
だから、あまり言いたくはなかったのだが……いつまでも黙っていては、いずれ取り返しのつかないことになる可能性もある。
「今からではもう遅いかもしれないけど、俺たちも何かしたほうがいいかもしれないな」
「な、何かって、何を?」
「分からん。どうしよう」
今まではゲーム配信者になるつもりだった。でも冷静になってみると、たぶん現実逃避だったんだろうなぁ……楽観的な凛々子に影響されているのだろうか。自分を現実的な人間だと思っていたが、考えが甘かった。
「……あ! でも、わたしってぴっぴと結婚するじゃん? そうしたら別にわたしは働かなくて良くない?」
「初耳なんだが」
付き合ってすらいないのに結婚が決まっている件について。
こいつの脳内回路はどうなっているんだ。
「お金のことはぴっぴが考えて! わたしはお家のことをがんばるからっ」
「そ、それはずるいぞ! 俺がお家のほうがいいっ」
「は? 男でしょ? 稼いできてよ、てーしゅかんぱくでいいから」
「男女平等! というか、亭主関白なんてお前が絶対に許さないだろっ」
仮に結婚したとしても、こいつが俺の言うことを聞くなんて到底思えない。亭主関白どころか、尻に敷かれる未来しか見えなかった。
「えー。働くの嫌い……美味しいご飯を食べるだけの仕事ならいいんだけどなぁ」
「それなら、金持ちのおっさんと食事とかどうだ? ほら、中年くらいになると若くてかわいい子とご飯を食べてるだけで幸せらしいし、ちょうどいいじゃん」
「……って、ちょっと待って。それパパ活だよね?」
あ、たしかに。
どこかで聞き覚えのある詐欺みたいな稼ぎ方だなと思っていたのだが、まさしくパパ活そのままだった。
「ぴっぴはわたしがパパ活しててもいいの!? 体で稼いでこいとか、イケメンのホストにしか許さないセリフでしょっ。その顔で言っていいと思ってるわけ?」
「お前の理論だと、イケメンなら何をしても許されているんだが」
イケメン無罪かよ。最強すぎる。
うーむ。しかし……考えれば考えるほど、やっぱり俺たちの未来は泥沼だった。
「お前はかわいいから、まぁなんとかなるだろうけど。俺は見ての通り地味顔のオタクだからなぁ……どうしたものか」
「え、かわいい? かわいいって言った? ねぇ、もう一回言って? やっぱりわたしってかわいいの? かわいいよね? かわいいって言って!」
「め、めんどくさっ」
……凛々子の性格は、結構クセがある。
愛嬌はあるのだが、わがままで気が強いし頑固だ。こうして考えると、かわいいからと言ってなんでも許されるのは、少し厳しいかもしれない。
訂正。やっぱり、俺だけじゃなくて凛々子の未来も真っ暗だった――。
【あとがき】
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