第二十七話 部屋に閉じ込められた二人の未来はどうなる?
将来はゲーム配信者になって、楽に稼ごうかと思っていた。
しかしどうやら、俺の配信者に対する認識は全部偏見だったようだ。
「そっか。配信者って、意外とたいへんなのか……でも、冷静に考えたらそうだな。不特定多数の人間に自分のゲームプレイを見せるって、結構なスキルも必要そうだし、下手だったらめちゃくちゃ叩かれて病むだろうし」
凛々子の話を聞いていると、肉体的な過酷さや時間的な拘束よりも、精神的な疲労の方が大きそうだ。ごめんなさい、配信者とそのファンの皆様。俺が全部間違っていた。
「やっぱり配信者になるのはやーめた」
「そっか。男としてでもなく意思もよわよわだね~」
「うるさい。俺は柔軟な男……でも、うーん。困ったな」
「んにゃ? なにが?」
俺が難しい表情で唸ったからだろうか。
今までスマホの画面を見ながら話していた凛々子が、顔を上げてこちらを見ていた。
……まぁ、一応こいつも運命共同体だし、伝えておくか。
「――将来、どうすればいいんだろうな?」
「しょーらい?」
うん。どうせ、何も考えてないんだろうなとは思っていたが。
俺の言葉に対しても、凛々子は不思議そうに首をかしげるのみだ。俺が困っている理由すら思い当たらないみたいである。
仕方ない。凛々子は少しおバカさんなので、ちゃんと説明するか。
「凛々子。お前は気付いていないかもしれないが――俺たちは、高校に行っていない」
「……それの何がダメなん?」
「いや、それだけならマシだ。でも、俺とお前はニートの分際で、こんな豪華な部屋で好き勝手に生きている。好きなものを食べて、好きなものを買って、好きなことだけをしている」
「うゅ」
「こんな生活が許されているのは、一部の金持ちか老後穏やかに暮らしている年金暮らしの人たちだけだ。しかし俺たちは金持ちじゃないのに、この生活に慣れてしまっている。社会という荒波を知らずに、生ぬるい環境でぬくぬくと過ごして、そのまま大人になろうとしている」
「で、なに?」
回りくどいと思ったのか、凛々子は少しめんどくさそうな表情を浮かべている。
でも、これはちゃんと理解してもらわないといけないことなので……申し訳ないが、しっかりと説明を続けた。
「贅沢に慣れて、社会の厳しさも知らない、世の中の全てを舐めている甘えたゴミ人間。それが俺とお前だ」
「……言いすぎじゃない?」
「いや、事実だ。俺とお前はカス人間……おっさんの金で贅沢している以上、普通のニート以下だ。親のすねをかじっているよりも質の悪い、他人のすねをかじっている寄生虫だ」
俺たち以下の人間は、恐らくこの世に存在しないだろう。
何せ、今この時という瞬間において、俺たちより楽をしている人間はこの世に存在しないのだ。
この状態が永遠に続くなら、それで幸せなのだが。
しかし、そんなわけにはいかないのが現実である。
「こんな状態で、この部屋を出た後はどうなると思う? まともに働いて、まともな暮らしに戻れると思うか?」
「――あ」
凛々子もようやく、気付いたらしい。
俺たちが、最も懸念するべき『将来のこと』について。
「生活水準を下げることは難しいらしいぞ……俺たち、戻れるのかなぁ。好きな食べ物を好きなだけ食べて、好きなものを好きなだけ買って、好きなことを好きなだけしているこの生活から、普通になれると思うか?」
「……む、むりかも」
凛々子も、今の状態で外に出た時を想像したらしい。
青ざめた顔で、首を横に振っていた。良かった、彼女も理解してくれたようだ。
たしかに、今の生活は楽だ。この状況を羨ましく思う人だって、もしかしたらいるかもしれない。
でも、俺たちは将来に費やすための時間を浪費して、この怠惰な生活を送っているのだ。
人生をトータルで考えたら、むしろマイナス。
今までは、配信者にでもなって稼げば大丈夫と甘えた考えを持っていたのだが……どうやらそれも無理そうだし、困ったものである――。
【あとがき】
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