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日本橋の噂

 もう十年以上も前の話だ。

 日本橋の常連の結束は強く、何かあると噂もすぐに広まった。

 どこぞのオーナーがどこそこのオーナーに監禁されて大変な目に遭ったとか、その手の噂もあったが、あとで確認すると別の話がごっちゃになって伝わっていた、なんてこともあった。

 そんな噂の中でも、ちょっと吹いてしまった話をひとつ。


 メイド喫茶AにつとめるB子が問題を起こしてAをやめた。

 そのあとしばらくして、B子がメイド喫茶Cの厨房に入っているという噂が耳に入った。

 よし、久しぶりに顔を見に行ってやろう、というわけで、常連が何人かメイド喫茶Cに行った。

 厨房勤務のシフトはあかされていないし、そもそもシフトをあかすという風習もなかった時代だ。客は、ランダムに行く。そして皆が「会えなかった」と残念がる。もちろん、私も何回か行った。

 そういうことが続いて、たまたまB子に会う機会があり、事の真相を確かめてみた。

 すると、Cの厨房に入ったことはないと言う。

 ただ、たまに食事に立ち寄ったことはあった、と。

 で、出した結論はこうだ。

 誰かがたまたまB子がCにいることを目撃した。そして、何かの会話で「Cにいたよ」という話になった。

 それを聞いた誰かが、B子がCで働いていると勘違いした。ただ、問題を起こしたということは界隈でも噂になっていたのでまさかメイドとして働くことはできまい、働くとしても厨房だ、という結論になった。

 それが回り回って、B子がCの厨房で働いているという話になった。


 実にたわいのない話であった。

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