60【ドワーフンヴィレッジ】
俺はコンビニから帰ると、すぐさま異世界へと戻る。
異世界の森では、ダークエルフたちがキャンプの片付けを終えて、いつでも旅立てる準備を整えていた。
『ただいま〜ん』
「「「「「お帰りなさいませ、シャドー様!」」」」」
皆が元気良く異次元扉から出てくる俺を出迎えた。全員の視線が、俺の片手に持たれたコンビニ袋に集まっている。
その表情は、期待に満ち溢れていた。
約束された惣菜パンを待ち望んでいたのだろう。
『ほれ、朝飯だ。食べながら進もうや』
「「「「「はいっ!」」」」」
全員がメロンパンと焼きそばパンを一つずつ取ると、むしゃむしゃと笑顔で食べながら森を進む。
森の中での食べ歩きである。
惣菜パンの袋はゴミとして俺が回収した。コンビニのビニール袋に纏めて異次元扉内に投げ込んだ。
そして、森の中を四時間ぐらい歩いただろうか。俺たちは、ようやく森の出口に到達した。
深い森を抜けると、そこには草原が広がっていた。いくつもの大きな岩がゴツゴツとそびえ立っている、岩山のような草原だった。
しかし、草原の果てを見てみれば、巨大な恐竜同士が戦っている姿が見えた。
その姿は、まるでTレックスとティラノサウルスのようである。
まさに恐竜大戦争であった。
『なんとも、ダイナミックだな〜……』
二匹はドタドタと地鳴りを上げながら戦っていた。やっぱりTレックスのほうが優勢である。
『恐竜とか、居るんだ……』
マーリアが答える。
「あれは巨大魔獣ですね。近付かなければ、危険も少ないでしょう」
『近付かなければ、か……』
どうやら恐竜も魔獣扱いらしい。あれもまた異世界ではモンスターなのだろう。
そして、森を出たところで、お辞儀をしながらレーンが述べる。
「それではシャドー様、私とリーンはここまでです。見送りを終了しますので、安全な旅路を祈っております」
『ああ、ご苦労だったな二人とも。それと、リーン、手を出せ』
「はい?」
首を傾げながら、リーンが手を出した。その手のひらに、俺は飴玉を数個置く。
『飴ちゃんだ。帰りに二人で舐めて帰れ』
「はいっ!」
リーンはニッコリと微笑む。
俺とリーンがそんな遣り取りをしている間に、シーンとレーンも話をしていた。
「レーン、村に帰ったらゴブリン討伐の準備を整えておいてくれないか」
「分かった、シーン。お前らが帰るまでに、ゴブリンの寝床なども調査しておくぞ」
「頼む――」
そこに俺も割って入る。
『なあ、二人とも。そのゴブリン退治に俺も参加したいのだが』
しかし、その申し出に、慌てたシーンが両手を振って拒否を見せる。
「いえいえ、そのような雑務をシャドー様に手伝わせる訳にはいきません。ゴブリン如き、我々村人たちで片付けますので気になさらずに!」
『いや、これも経験だ。すべてを俺は経験したいのだ。経験した上で、お前たちを導きたい』
って感じで、それっぽく俺は格好をつけた。導くつもりは、ほとんど無い。
実際は経験値が欲しいのだ。モンスター討伐は、経験値になりやすいようだからである。
そして、どんどんと新スキルを習得したいのだ。
レーンが頭を下げながら述べた。
「分かりました。それでは我々は、襲撃の段取りだけを組んでお待ちしております」
『済まんな、レーン。準備は任せたぞ』
「仰せのままに――」
こうして俺たちはレーンたちと別れて、ドワーフンヴィレッジに向かった。岩場の草原を進む。
レーンとリーンは、俺たちが見えなくなるまで森の前で見送っていた。やがて草原を進んでいると、その姿も見えなくなった。
その晩は、草原の岩場でキャンプを取ることにした。また、大岩を背に焚き火を燃やす。
晴れた夜空には、七つの月が輝いて見えるために、周囲は夜なのに明るい。
フーミンが焚き火に当たりながら述べた。
「明日の昼頃にはドワーフンヴィレッジに到着だニャ」
『そうか、やっと到着だな。二日も歩き続けていたら、少し疲れたぞ』
こんなに歩き続けたのは久しぶりだ。現実世界では車での移動が日常だから、歩くなんてことはほとんどしない。
マジで車は便利だと思う。時間的にも短縮できる。
今後、異世界に車を持ち込もうかなと考えた。そうしたのならば、移動も楽だろう。
俺は寝静まったキャンプの中で、こっそりとナビーに訊いてみた。
『なあ、ナビー』
シャドーポケット内のナビーが、エロい口調のテレパスで答える。
【なんでありましょうか、ご主人様?】
『車って、異世界に持ち込めないか?』
【今は無理です】
『今はってことは、今後は可能なのか?』
【異次元扉のレベルを上げれば、扉のサイズが広がります。そうしたのならば、可能になります】
『そうなのか』
少し俺は喜んだ。
【しかし、道のりは遠いですよ】
『っと、言うと?』
【異次元扉のレベルを上げると、扉の大きさが5ミリ広がります。車を通すには、相当なレベルまで上げなければならないでしょう】
『うわ、それは過酷だな……』
車は当分お預けだと思った。
異次元扉のサイズは、縦2000ミリ、横700ミリぐらいだと思う。それを、車が通るぐらいのサイズまで広げるには、少なくても横幅1700ミリは必要だ。1000ミリ広げるのに200ポイントもかかってしまう。
それは、困難過ぎるだろう……。現実的ではない。
しかし、バイク程度ならば扉を潜れると思う。
まずはバイクからだな。バイクがあれば、十分に時間短縮に貢献するだろう。
バイクならば、森の中や少し道が荒くっても走れるだろう。だとすれば、オフロード用のバイクが良いかも知れない。
『バイクか〜。少し検討してみるか――』
そして、何事もなく朝が来る。
眩い旭を浴びながら俺たちは、キャンプを畳むと、再び旅へと出発した。また、ゴツゴツとした足場の草原を進む。
四時間ぐらい草原を歩いただろうか。ついに、目的地であるドワーフンヴィレッジが見えてきた。
フーミンが前方の岩山を指さしながら言った。
「あれが、ドワーフンヴィレッジですニャ〜」
『あれが……』
俺の眼前、数キロ先に三角形の岩山が窺えた。木々が一本も生えてない巨大な岩山である。
その岩山の麓には、への字に開いた大きな洞窟の入り口が広がっている。どうやら、あの洞窟が村への入り口らしい。
『でぇかぁ〜……』
しかし、そのへの字に開いた洞窟の入り口は、とにかく広い。
横幅だけでも二百メートルほどはありそうだった。高さも五十メートルはあるだろう。
そして、その巨大な洞窟の中に村が存在しているのだ。
ドワーフンヴィレッジとは、どうやら洞窟の中に建築された村のようである。
俺たちはさらに歩みを進め、村の側まで近寄った。
そこで、俺は更に驚かされることになる。
驚いたのは、洞窟村の奥行きである。
その深さは、百メートルぐらいはあるだろう。
更に、洞窟内には数多くの建物が並んでいる。ほとんどが石ブロックの建物だった。
その数は多い。おそらく数百人は住める数だろう。
村と言っていたから、五十人ぐらいの人口かと思っていた。しかし、建物の数からすると、二百人から三百人ほどは住んでいそうに鑑みれた。
これでは、村というより町である。
その町並みに、数人のドワーフたちが窺えた。酒樽のような体型の人々だった。
「さあ、参りましょうニャ。ドワーフンヴィレッジに」
『ああ――』
俺たちはフーミンを先頭に、巨大な洞窟の中に広がる村――ドワーフンヴィレッジへと足を踏み入れた。
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by、ヒィッツカラルド。




