↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
48/68

45【ガラスの貴重性】

 アイテムボックスを有することは、旅商人としては絶対的な条件であった。


 街角で商人を営むには、必ずしも必要ではないのだが、旅をしながら各地を回る旅商人には必須のスキルである。


 盗賊対策だけでなく、重さを軽減できるのは役に立つはずだからだ。


 アイテムボックスにも、いろいろな性能がある。レベル差による個人差もある。


 そして、生まれ持って備わるスキルだけあって、持ってる持ってないは個人で選べない。勝手に運命が決めるのだ。


 だからアイテムボックスを持っているものは、それだけで仕事に付けるほどの便利スキルである。


 しかし、個人個人が有するアイテムボックスには、本人しかアクセスできない。アイテムボックス内にアイテムを仕舞うのも、引き出すのも本人にしかできないのである。それが絶対のルールだ。


 故に、ちょくちょくとアイテムの紛失が起きる。アイテムをボックス内に仕舞い込んだまま忘れられたり、アイテムボックスの所有者が亡くなったりすると、アイテムは異次元に置き去りになってしまうのだ。中身ごとすべてがロストされる。


 もしも、今までにアイテムボックス内に忘れられたアイテムを取り出せるのならば、想像もつかないほどのアイテムが発掘されることだろう。


 もしかしたら、伝説の武具ですら出てくるかも知れない。


 何せ、何千年、何万年もの間、他人のアイテムボックスにアクセスできる者は、存在してこなかったからだ。


 そして、他人のアイテムボックスが、死後どこに行ってしまうのかも判明していない。そのようなことを考えた者もいない。皆が皆、死んだらアイテムボックスは、中身ごと消失するものだと考えていたからだ。


「ああ〜、気持ち悪い……」


 マーリアが裸になって水浴びをしていた。村の外の川辺で裸になっている。一緒に飲んでいた者たちもいた。男女共に全員が裸で水浴びに寛いでいる。


 普段から露出度の高い服を好むダークエルフたちは、人前でも素肌を見せることに恥じらいを感じていないようだ。マーリアは男の前でも平気で服を脱いでいる。鍛冶屋のハートも全裸で水に浸かっていた。チンチロリンの大公開である。


 どうやら獣人も同じようである。フーミンもマサムも全裸で水浴びを楽しんでいる。所詮は獣なのだろう。恥たる感覚が薄いようだ。


 俺とバートは川辺に座りながら、ゲロまみれの体を洗う者たちを、呆れた眼差しで眺めていた。


 いい歳をして、泥酔したあげくに汚物まみれになるなんて、恥ずかしい連中だ。


 バートが軽蔑の眼差しで、自分のところの親方を眺めていた。それに、今までマーリアを姉貴分扱いで見ていたらしいが、今回の件で少し見方が変わったらしい。


 そのマーリアが、背泳ぎで川の深いところを優雅に泳いでいる。川辺に浮かぶオッパイが美しい。


 そもそもマーリアは、180歳を超えたエロい大人の女性である。それがゲロまみれとは、東京都の飲み屋街でもなかなか見られない惨事だろう。


 フーミンやマサムも、獣人としては成人を超えているらしい。鍛冶屋のハートに関しては、300歳は超えたオッサンだと聞いている。


 それが、これだ。まったく恥ずかしい話だった。


 ハート曰く、これほど強い酒を飲んだのは久し振りだったらしい。それで悪酔いしてしまったらしいのだ。


 どうやら、この異世界では酒文化も遅れているようだ。俺が持ってきた日本酒ですら美酒扱いなのだから、間違いないだろう。


 ハートが比較対象として見せてくれた酒はエールだった。しかし、酒自体は濁りきった色だった。現代ほどに整っていない。アルコールが楽しめれば良いと思えるレベルの品物だった。


 ドワーフは酒造りが進んでいると聞いていた。それがあの程度の出来なのだ。もしかしたら、現代で売っている酒を持ち込めば、高く売れるのかもしれない。


 日本酒だけでなく、ワイン、焼酎、ブランデー、ウイスキー、ビール、マッコリ、トンスク。いろいろある。それらをいくつかこちらの世界に持ち込んで売るのも悪くないだろう。儲かるかも知れない。


 次の上納が始まるまで、あと27日しかない。来月の制限を足しても57日後には金塊を30グラム分集めなければならない。でないと、三倍速老化が始まってしまう。


 月日なんて過ぎてしまえば、あっという間だ。いつまでもダラダラともしていられないだろう。


 俺は余裕が無いのは嫌いなタイプだ。余裕をもってゆっくりと生きたいのである。急かされたくない。


 それに、ダーク村からドワーフたちが暮らす村まで、徒歩だと片道で三日は掛かるらしい。人間の町までは二週間は掛かるとのことだ。


 この異世界では、移動に掛かる時間が大変長い。現代社会とは違って、車などでビューンってわけにはいかないのだ。


 たぶん、移動日数が商売の敵になってくるだろう。


 しかし、騎馬や騎獣などの移動用動物も居るらしい。だが、調教された騎乗動物は高額で取引されている。


 特に森などを歩行しやすい騎獣というものは、値段が張る。戦闘訓練を終えた騎乗動物は、さらに高くなるらしいのだ。


 一番値段が張るのは、空を飛べる飛行型騎獣である。ワイバーンとかロックバードがいるらしいのだ。


 そもそも飛行型はレアらしい。売っているものでもないらしい。極稀に、国などが所有している程度だとか。


 ダーク村にも地上用騎獣は数匹飼っているとのこと。それは森の中でも歩行がしやすい二本足の爬虫類型騎獣だとか。今度見せてもらおう。できることならば、乗り方を習いたいものだ。


 川辺に座る俺の足元で温泉にでも浸かるように水に入っているハートに訊いた。剥げた後頭部に話し掛ける。


『なあ、ハート。日本酒はドワーフたちに売れるかな?』


 ハートは水の中で振り返ると、俺を見上げながら同意する。


「間違いなく売れると思います。ドワーフは根っからの酒好きです。あの飲兵衛たちが、日本酒たる美酒を逃すはずがありませんとも」


『いくらぐらいで売れるかな?』


「あの大瓶一本で……一金貨は硬いかと」


『それほどの値段で売れるのか?』


「もっと高額で売れるかも知れませんぞ」


 一金貨は日本円にして七万円から八万円の価格だ。二千円から三千円しかしない一升瓶の酒が、それほどの値段までするとは思えない。


 禿頭にタオルを乗せたハートが言う。


「そもそも、器が豪華ですからな」


『器が?』


「ガラス瓶のことです」


『もしかして、一升瓶が珍しいのか?』


「ガラス瓶は高級な酒を貯蔵している証です。そもそも、ガラス製品が貴重な物なのですよ」


 そういえば、ダーク村にはガラス窓が一枚も無かった。たぶん、ガラスが普及していないのだろう。


 それどころか、食器に陶器すら使われていない。皿もコップも、木製を使っている。


『もしかして、ガラスって、貴重品なの?』


「何度か人間の町に出向いたことがありますが、人間ですら金持ち貴族ぐらいしかガラス製品を使ってませんでした」


『なるほどね〜』


 ガラスが当たり前に使われている家に暮らしていたから、その貴重性に気づいていなかった。異世界だと、ガラスって貴重品なんだ。


 後で調べてわかったのだが、ガラスが広く普及した時代は、現実世界でも十九世紀の産業革命以降らしい。日本では大正から昭和の初めにかけてらしいのだ。


 だから、西暦五年から西暦十年程度の異世界文化では貴重なのだろう。ガラス文化が遅れているのだ。


『要するに、ガラス瓶に入っている酒ってだけで高級品なのね』


「何しろ透明な酒なんて、初めてみましたからな」


『それもあるのか』


 塩や胡椒を売るのも良いが、酒を売るのも悪くないかも知れない。


 これは俺自らドワーフの村に出向いて、酒などを売り捌いて見るのも悪くないかも知れないぞ。


 出来るだけ早く、上納金の安定した確保を目指さなければならないしな。






───────────

⬛作者からのお願い⬛

───────────


面白かった、続きが気になる、今後どうなるの!?


……と思ったら【本棚】に加えてくださいませ!!


また、作品への応援お願いいたします。


メッセージ付きのレビューなどを頂けますと大変励みになります。☆や♡をください!


面白かった、つまらなかった、正直に感じた気持ちだけでも構いません。


何卒よろしくお願いいたします。


by、ヒィッツカラルド。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。