41【マッスルドッキング】
まだ時間帯は深夜。
いったん客間で服を着てきた俺は、ヒオラス家の広間にいた。眼前にはラーオたちが並んでいる。
藁で編まれた座布団に全員が腰掛けていた。そこには、大木巨人に飲み込まれていたレーンや禿頭のおっさんもいる。
輪になるように、俺、マーリア、ラーオ、シーン、リーン、レーン、禿頭のおっさんの順で並んでいた。それを数人の村人たちが囲んでいる。
レーンと禿頭のおっさんは、申し訳なさそうに俯いていた。大木巨人に飲み込まれていたとはいえ、村人たちに危害を加えていたことを悔やんでいるのだろう。
てか、危害を加えられたのは、ほとんど俺なんだけれどね。
ラーオが口火を切って質問する。
「レーン、何故にあの大木巨人に囚われていたのだ?」
俯いたままのレーンが答える。
「分からない。突然、純白の女が現れて、俺とハートをあの化け物に閉じ込めたのだ。あとは何も覚えていない……」
『純白の女……』
おそらく鏡野鏡子だ。
しかし俺は、彼女のことを話さなかった。話がややこしくなると思ったからだ。村人たちには、ゴールド商会のことは黙って置く。
代わりに俺は、話をはぐらかそうと試みる。
『まあ、何であれ、全員が無事だったんだからいいじゃあないか。レーンも、ハゲたおっさんも気にするな。あはははは〜』
「シャドー様が、そのようにおっしゃるなら……」
今度は、少し疲れた顔のシーンが俺に訊いてくる。
「ところでシャドー様。その刀の話なのですが……」
『ああ、これか』
俺は眼前に黒刀を差し出す。
それは鞘に収まった漆黒の日本刀。改名された刀は【漆黒丸】。俺とだけテレパシーで話せる妖刀だ。
『こいつは、漆黒丸だ。ロングソードからブレイドに変化する際に改名された。こいつも俺を主だと思っているようだぜ』
「思っていると、言いますと?」
『こいつと俺はテレパシーで会話が可能なんだよ。なんでも、前の主がシャドーホールンで、彼とも話せたらしい』
「「「誠ですか!?」」」
『誠でありますよ』
禿頭のおっさんが推測を語る。
「そうなると、その刀はインテリジェンスソードとなりますな。私も初めて見ますぞ!」
俺は禿頭のおっさんを見つめながら問う。
『ところで、あんたは誰だよ?』
耳が長いからダークエルフだとは思うのだが、見た目がごっつくてダークエルフっぽくないのだ。それに、顔も知らない。
禿頭のおっさんが頭を下げながら自己紹介をする。
「私はダーク村で鍛冶屋を営んでおります、ハートと言う者であります。今宵は怪物に取り込まれているところを助けていただき、大変感謝しております!」
『あ〜、鍛冶屋なんだ〜』
やっぱりダークエルフでも鍛冶屋っているんだな、と思っていると、ハートがさらに話しかけてくる。
「しかし、シャドー様は、本当にその妖刀と会話が可能なのですか?」
『ああ、刀の使い方も、こいつから教わったぞ。ちょっと扱いが難しかったが、なんとか刀を使いこなせていただろう』
「「た、確かに……」」
俺の戦いを見ていたマーリアとリーンが頷いていた。
俺が振った刀の回数は四度。ラーオとシーンは一振りで気絶していた。なのに四度も振れれば、使いこなせたと言っても過言ではないだろう。
刀を掲げた俺が、ラーオに問う。
『なあ、ラーオ。そんな訳だから、俺がこの刀をもらうぞ』
ラーオは最初っから諦めた顔で述べる。
「剣が主と認めている以上は、私には何も言えないでしょう。どうぞ、漆黒の長剣をシャドー様がお持ちになってください」
『悪いな』
言いながら俺は、漆黒丸をシャドーポケットに仕舞い込んだ。
これで俺の個人的な戦力は、だいぶアップしただろう。まさに棚から牡丹餅状態である。
そこで、大人たちの話を黙って聞いていたリーンが大きな欠伸をした。そして、「済みません」と謝る。
どうやら子供には夜が遅すぎたようだ。眠たいのだろう。
「夜も更けているし、そろそろ寝ますか」
『そうだな』
俺もラーオの意見に賛成する。話し合いは解散となった。
そして、俺が客間に戻ろうとしていると、背後からマーリアが近づいてきた。
そのまま彼女は俯き加減で、俺の袖をそっと引く。
『えっ、なに?』
「――……っ」
マーリアは俯いたまま、なかなか顔を上げない。どうやら、少し照れているらしい。
俺は廊下に出ると、皆から姿が見えなくなるところまで進んだ。
そこまでくると俺は、マーリアの肩にそっと腕を回し、そのまま彼女を引き寄せる。
耳元で彼女に尋ねた。
『今夜も……いいのかい?』
俺の鼓動が、急激に速くなる。
するとマーリアは、何も言わずに小さく頷いた。彼女も頬を赤らめている。
互いの合意が取れた。
『ひゃっはー!!』
思わず奇声を上げてしまった俺は、マーリアをお姫様抱っこで抱え上げる。
「きゃっ!?」
『よーし、客間へ直行だ!』
そのまま俺は、マーリアを抱えて客間へと走った。
客間に飛び込むと俺は、彼女をベッドに投げ放つ。そして、水泳のダイブのようにジャンプしながら服を脱ぎ捨てる。
その夜、二人だけの時間が静かに始まった。
『わっしょい、わっしょい!』
「おおおおおおぉぉん!!」
ここから先は、二人だけの秘密である。
ただ、一つだけ言えることがある。
――マッスルドッキング、成功。
俺の人生は、今日も絶好調だった。
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by、ヒィッツカラルド。




