40【番外への期待】
白いYシャツに半ズボン姿の少年が、お土産の笹団子を食べながら訊いてきた。
「でぇ、どうだったかい? 君の感想を聞かせてくれ」
五十五インチのテレビには、異世界で大木巨人を真っ二つに斬り裂いた服部泰三の姿が映っていた。スパイミストマンが送ってきた、異世界からの映像である。
つまらなそうに湯呑みのお茶を啜る鹿羽五郎。そして、身長190センチの巨漢を揺らしながら答えた。
「つまらん結末だな――」
鹿羽五郎の強面は冷めていた。冷たい瞳で、両手で包むように持った湯飲みを眺めている。
七三分けの少年はテレビの電源を切ると、再び隣の男を見あげながら問う。
「何処がだい?」
マッチョマンと呼ぶに相応しい体格の鹿羽五郎は、座敷に座ったまま背を反らし、天井を眺めながら述べた。
「あれの何処が忍者なんだ?」
「っと、言うと?」
鹿羽五郎が、横に腰掛けている少年へ視線だけを向ける。
「技も術も使わない。武器すら使わない。あんな倒し方でいいのか?」
「武器なら使っていたじゃあないか?」
金徳寺金剛が言っているのは、漆黒丸のことである。
だが、それを鹿羽五郎は否定した。
「あの黒刀は異世界のマジックアイテムだ。忍具じゃあないだろ。それを運良く手に入れて、偶然にも問題を打開した。それじゃあ、つまらんだろ。まるっきり自分の味が出ていないぞ」
「しかし、鏡野鏡子の試練内容は、世界樹の種の破壊。私が彼女に提案した課題も、それであるぞ」
「はぁ〜……」
鹿羽五郎は俯き、深い溜息を吐いた。
「まあ、会長や試練の主である鏡子さんが良いと言うなら、問題は無いんだろうがな。俺があーだこーだ言う筋合いは無いぜ」
胡座をかいた膝を一つ叩きながら、金徳寺金剛が言う。
「まあ、どちらにしろ、第二の試練は合格だね」
すると、鹿羽五郎が問う。
「次は誰が試練を仕掛ける予定なんだい?」
少年が白い歯を見せると、無邪気に笑いながら述べる。
「次は、鬼頭双角か、鳥山石燕だ。彼らにも世界樹の種を託してある」
ヤクザ風の男と、和服を着た矮躯な老人である。どちらも一癖ありそうな人物だった。
口元をへの字にした鹿羽五郎は、ゴツい顎を撫でながら言う。
「どちらも不運なカードだな。最初から飛ばし過ぎじゃあないのか?」
「それで挫ける輩ならば、番外の資格なしだろう」
「違いねえな――」
そう言った鹿羽五郎が立ち上がる。
立ち上がることで、その大きな体躯がさらに大きく見えた。筋肉で体も太いゆえに巨漢に見える。
「じゃあ、俺は帰るぜ。笹団子は早く食べろよ。硬くなるからさ」
「ああ。食べきれなかったら、中居さんたちに配るよ」
「そうしてくれ……」
そう言いながら襖を開けた鹿羽五郎は、廊下へ出て行く。鴨居に頭をぶつけないように屈んでいた。そのまま帰路に着く。
茶の間に一人残された金徳寺金剛は、お土産の笹団子を齧りながら独り言を呟いた。
「次の二人が、もっと楽しませてくれれば、いいんだけれどな〜」
矮躯な少年は、これから始まる娯楽への期待に、胸を膨らませるのであった。
パクリと笹団子を一口で食べ終える。




