10【一晩の契り】エロス回
その後、俺は族長ラーオと名ばかりの契約を結んだ。それは、シャドーとして一族の主を演じることだった。
ラーオ曰く、俺に新たな主として一族の信仰を受け入れてもらいたいらしい。何も願いを聞き届ける必要はないとのことだ。
ただ彼らは、信仰の対象が欲しいのだ。長年にわたって世界から爪弾きにされてきた一族ゆえに、それが誤解だったのだと自覚したいらしいのだ。それが錯覚でも過ちでも構わないのだという。
俺には理解できなかったが、それでこいつらが救われるのなら、それでも良いのではないかと思えた。
しかし、俺が貰った金貨十枚は貰いすぎではないかと思えた。何せ金貨一枚で3.5グラムある。それを十枚も貰えば三十五グラムだ。ウロボロスの書物が定めた、一か月の献上額三十グラムを超えてくる。
それは日本円に両替したのならば、六十数万円から七十万円相当だ。それをママクドのハンバーガーとコーラだけで済ませようなんて安すぎる。
なので俺はラーオに提案した。ラーオはウーパーイーツで届いたばかりのハンバーガーセットを食べながら、俺の話を聞いている。
『これだけでは金貨十枚は貰いすぎだから、明日にでも村人全員に同じ物を振る舞っても構わないか?』
「ほ、本当ですか、シャドー様!?」
『ああ、本当だ。大盤振る舞いだぜ!』
「おおっ!!」
こうして俺は、明日の朝にママクドのハンバーガーセットを村人全員に奢ることになった。村人は七十四人居るらしいので、その分をウーパーイーツで注文する。
たぶん一番大変なのはママクドのスタッフだろう。異世界が朝ならば、現実世界は夜のはず。夜中に七十四人分のハンバーガーセットを注文されるのだから大仕事である。
それから―――。
「今宵はこちらでお過ごしくださいませ」
『ああ、有り難う』
俺は異世界の夜をラーオの屋敷で過ごした。女中の案内で客間へ通される。
その晩は静かだった。虫の鳴き声だけが外から聞こえてくる。
『うむ、眠れんな……』
俺は客間のベッドに横になりながら、初めて見る天井を眺めていた。どうやら睡眠無効は伊達ではないようだ。本当に眠くならない。
ペルシャ絨毯のような豪華な敷物が広がる部屋は十畳程度。窓はあるが木製の縦格子戸で、ガラスはない。
この村に来て以来、ガラスを見たことがなかったから、たぶん、この異世界ではガラス文化が遅れているのだろう。
室内にはタンスとテーブルがあったが、どちらも田舎にしては微妙に高価なものだった。おそらく普段は客人しか使わない部屋なのだろう。
『あ〜、つまらん。一度現実世界に帰ろうかな〜』
そう俺が呟いた刹那だった。客間の扉がノックされる。客間に客人が来たようだ。
『どちら様ですか〜?』
「わたくしでございます――」
誰だろう。声色は若い女性だった。
「シャドー様、マーリアでございます――」
『マーリアさん?』
確かダークエルフとの初遭遇の際にいた白髪ポニーテールの娘だ。
切れ長の目にスレンダーな体つき。なのに出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいる、極上に美しい女性だったと覚えていた。俺の好みではある。特に豊満なおっぱいが――。
「し、失礼します……」
スライド式の扉が、すっと音もなく開いた。すると白いノースリーブの着物を纏ったマーリアが正座をしていた。姿勢は俯き加減で、三つ指をついて畏まっている。
そして、俯くことで覗き見える谷間が強調されて目が離せなかった。真夜中だからこそに、ムラムラしてくる。
俺は冷静を気取りながら問うた。
『どうしました、マーリアさん?』
「失礼します……」
一礼したマーリアは腰を下ろしたまま敷居をまたぎ、俺に後ろ姿を見せたまま襖を閉める。その後ろ姿は細くて美しい。こちらに向けられた腰の曲線が印象的だった。
すっと体を入れ替えて正面を向いたマーリアが、ゆっくりと頭を上げた。しかし、俺とは視線を合わせない。恥ずかしそうに目を逸らしている。褐色の肌も、ほんのりと桃色に染まっていた。
そして、ゆっくりと立ち上がったマーリアが、ベッドで横になる俺へ歩み寄ってくる。
『ええ?』
「……――」
縦格子戸の窓から差し込む月明かりが、歩み寄るマーリアの姿を照らし出す。
その姿は二十歳そこそこで可憐だった。白いノースリーブの着物で、下は履いていない。白衣の胸元を膨らませる山は立派である。豊満過ぎるサイズだ。
何よりも、着物の裾がかろうじてデリケートゾーンを隠していた。長い脚は艷やかで美しい。その脚をモジモジと内股で絡ませている。
『ええっと……』
「………――」
俺がベッドの上で上半身を起こすと、マーリアがベッドに腰掛ける。
白いポニーテールの彼女が、声を震わせながら述べた。
「シャドー様、どうかわたくしめと、一晩契っていただけませんでしょうか……」
『えっ?』
言い終えると、マーリアは顔を背ける。
『契るぅぅううう!!??』
契るって、あれですよね。男と女が夜な夜なイチャコラして、ニャンニャンしながら激しくも荒々しくプロレスごっこを成すことだよね!
俺が知っている契りは、それしか知らない。それ以外にあるのなら教えてもらいたい。
『ちょ、ちょっと待ってくれ!』
慌てる俺に対し、マーリアは頬を赤らめながら小首を傾げる。その眼差しは、とろけるように潤んでいた。
「わたくしは、シャドー様の子種が欲しゅうございます……」
『こ、子種って、子種だよね。に、妊娠ッ!?』
「はい……」
マーリアは静かに頷く。その顔付きが可愛らしい。まるで純粋無垢な乙女そのものだった。
『え、なに、どういうことですか!?』
「父上に申し付けられたのです。今宵はシャドー様を満足させなさいと……」
父上とはラーオである。彼女はシーンの妹であり、リーンの姉でもある。
『でも、だからって、子供は早くない!?』
「今宵の私は数年ぶりの発情期でございます。この機を逃せば、またいつ発情するか分かりませぬ。なので、シャドー様の子種を授かるには、今宵が好機なのです」
『ダークエルフって、発情するんだ!?』
「当然でございます。凛々しい殿方に惹かれるのは乙女として当然でございますから」
『でも、俺は魔人だぞ。生まれた子供の顔に穴が開いていたらどうするの!?』
「それならば、魔王候補として大切にお育てします!」
『マジか!?』
「わたくしは本気でございます。シャドー様の子種をくださいませ。わたくしめを孕ませてくださいませぬか」
『は、孕ますって、うぉぉおおおおお!!』
男とは哀れな生き物である。あまり知らない女性でも、美人ならそれだけで理性という箍が外れてしまうことがある。これは雄の定めだ。
魔人と化した今の俺でも、煩悩は人間のままだった。むしろ性欲だけが魔人化している。
マーリアの艶やかな白髪から漂う甘い香りに股間が反応してしまう。はしたなくもビッグなテントを築いていた。
「し、失礼いたします……」
『おおっ!』
マーリアが優しく手を伸ばしてくる。そして、俺の分身を両手で包んだ。優しい感触が本能を揺する。
「どうぞ、わたくしの願いをお叶えくださいませ……」
彼女の温もりが俺の下半身をぎこちなくも弄ぶ。その仕草から本気度が伝わってきた。俺の感情が激しく揺れ動く。
『ぬぬぬぬぬぬっ!!』
久しぶりの感覚だった。俺の歳は四十。もう、煩悩を十分に制御できる歳である。しかしこれは堪え難い。キツイ拷問だった。
『くぅ〜〜。が、ま、ん、出来な〜い!』
「が、我慢なさらずに……」
マーリアの優しさは甘すぎた。ダークエルフの美貌は、それだけの価値がある。絶品のご馳走にも匹敵する。
そして、脆くも煩悩のダムが決壊した――。
『頂きま〜〜〜す!!』
「どうぞ、存分に――」
気付いた時には、彼女をベッドに押し倒していた。恥も外聞も捨ててマーリアに足四の字固めを決めていた。
服を剥ぎ取り、全身に反則気味な口付けを施す。それを彼女は無防備なまま受け入れてくれた。彼女は時折ロープに手を伸ばしてエスケープを求める。
俺は一晩中、彼女を貪り続けていた。柔らかな肉体を喰らい尽くす。喰っても喰っても飽き足らない。いつまでも彼女を求め続けた。
『うりゃぁぁぁあああ!!』
「おおおおおおおおぉぉん!!」
魔人と化した俺の肉体は疲れることを知らない。果てても果てても復活を遂げる。それでも何十回、何百回と彼女にプロレス技を決め続けた。超再生スキル恐るべし。
最後はマーリアも逃げ腰だったが、俺は逃さない。彼女が泣いても叫んでも止まらない。朝が来ても関節技を決め続けた。
『わっしょい、わっしょい!!』
「ぅぅ……ぅ……」
そして、マーリアはベッドの中で気絶する。ポニーテールを乱し、白目を剥き、口からは涎を垂らしていた。息も絶え絶えだ。
それでも俺は彼女をコブラツイストで決め続けた。一秒たりとも休ませない。彼女の願いが確実に叶うよう、ひたすらにプロレスの必殺技を決め続けた。
しかし、あとからやり過ぎたと反省する。
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by、ヒィッツカラルド。




